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どうして こんなにも眠いのだろう 
少し寝たいと思っているのに
どうして立って歩かねばならないのだろう

昨日の夢をはっきりと思い出す
《小学生の僕は 
薄い長方形のプラスチック製の容器に蟻を入れ
蟻が巣を作るのを観察している
蟻の巣が作られて
毛細血管のように巣が伸びていく
違う種類の蟻をそこに入れる
これまで黙々と働いていた蟻の日常は消えて 
そこは戦場になる
蟻と蟻はお互い殺し合い
全滅する》

立ちながら僕は何かの列に並んでいる
相変わらず眠いのだが 順序よく並ぶことがいまルールだから仕方がない
何のために並んでいるのか 半ばわからなくなりながら 
前の人が並ぶように並んでいる

昨日のもう一つの夢の景色を思い出す
《そこは屠殺場で何かの皮を剥ぎ 肉を捌き 
選別している 何かは蟻のようでもあり人型のようでもある
誰もがせっせと仕事をしている 無口だ
僕はぼんやりとその景色を見ている
これはいつもの景色だと思い
見ている》

白髪の男が急に話しかけてきた
この世界はいま 終わろうとしているのか
おまえたちはそれをわかっているのに
ただ並んでいるのか 
僕は眠かった 列から外れることはなく並び続ける 白髪の男の言うことがどんな意味があろうとも 今日も明日もつり革にぶら下がって 列に並び また 夢の中で絶滅と選別を見る

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