詩)恋をしたい猫
猫は外を眺めていた
少し風のある夜
窓を開け
自分の身体に流れている血を思った
自分の血はどうしたら乾かせるのだろう
心にはいつまでも消せないものがあり続ける
こんなにも脆く こんなにも壊れてしまいそうな
わたしが死んだらあの人は 思い出してくれるだろうか
ねえ 応えて
ねえ わたし
静かな生き方がしたい訳じゃないの
からっぽの身体に真っ黒なアスファルトを
流し込まれたら 眼を真っ赤にして
真っ赤に焼けた鋼鉄が打ち込まれたら
内蔵ごと絡みついて 蒸発するまで
雄叫びを挙げる
外の景色は
いたって普通の街
メリーポピンズのように
魔法使いがやって来ることもない
どこにでもある景色
わたし
恋をしたい ほんとうの
わたし 恋をしたいの
いたって普通の夜
オレンジの光がポツポツとあり
中途半端に明るい空ほ
人工大理石の柄のような
スカーフの柄のような空で
猫は思った
きっと 誰かが一人で
誰かは男と女
どうやって抱えたらいいかわからないものを
現実に託すことも出来ず
ゆらゆら ゆらゆら
揺れているのかしら
今日の時間の長さに 明日の時間の短さに
ねえ わたし恋したいの
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