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ひばり

雨が昨日から降り続いて
湿度も高い朝
マンションの手すりに
羽を濡らした一羽のひばりが
じっとしている
シャワーでも浴びてきた後のよう
「やれやれよく降るよなあ」
「ほんとだよ。朝からいやだね」
そう お互いに 短く
アイコンタクトで語り合った


こがも

小出川の土手を
こがもが隊列をなして
こてこてと横切る
なにやらお話しに夢中
「ちょっと歩くの疲れましたな」
「そうですなあ」
「僕なんか 少し食べ過ぎで太り気味ですわ」
「少し歩かんと」
「飛んでばかりだとやせませんわ」
こてこて
こてこて
こてこて

かわせみ

親父がまだ元気だったころ
小出川まで歩いて行った
運動のつもりだとは言え
癌で衰えた足には
きつかったに違いない
あの河のせせらぎに少し癒されるといいと思い
少し無理させてしまった

その時 川べりに
かわせみが現れた
何度もここには来ているが
一度も見たことがないかわせみが
対岸にいる
あまりしゃべらない親父の前で
独り興奮して「かわせみだよ!ほら」
「めったに見られないんだよ」と
その美しい姿を追った

その親父ももういない
あれから何度も
親父とかわせみを見た場所に行ってみたが
あれ以来一度も見たことがない
ということで 
鳥語で「あの時はサンキュー!」って
お礼したいものだと思うのですが
いまだにかないません









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