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詩)彼女はわたし 渋谷バス停で1人の女性が存在することを否定された


だれかがそこにいる
だれかはどこかでうまれた 
通り過ぎる 灯りが消える
街灯だけになる だれかは外にしかいない
見えても見られてはいないだれか。
なまえのない ひとのかたち 他人だけの景色
きっとここにくるまで だれか に 自分がなると
だれか が 自分だと
だれも 思うことは
ない
だれも。

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27歳で結婚したが夫に暴力を振るわれ1年で離婚。再婚せず1人で暮らしていた。去年、新型コロナウイルスの感染が拡大し、試食販売の仕事は激減。最後まで周囲に助けを求めることはなかった。
警視庁が身元の確認を進めた結果、女性は広島県出身の大林三佐子さん(当時64)と判明した。家賃が払えず去年の春頃から路上生活をしていた
広島県の短期大学を卒業後、20代半ばまで地元で暮らしていた。当時はアナウンサーを目指していて、教室に通うかたわら、結婚式場で3年ほど司会を務めていた。
自立心が強く、「自分で会社を作りたい」とも話していた。

彼女は私だったかもしれない。
彼女と私の違いは、ほんの少しだ。
あのバス停は、明るくて人の目が常にあって
安心を感じられる大切な場所だったんだろう。

乗降客のいない夜の間だけ座っていたのに
それすら許されない社会は
無情過ぎる。

ベンチは、奥行き20センチ、幅90センチほど。遠目では気がつかないほどの小ささだった。中央にはひじ掛けがあり、寝そべることもできない。

実際に座ってみると、固い上に奥行きがなく、落ち着かない。小さな屋根は付いているものの、とてもひと晩を過ごせるような場所には思えなかった。

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皮肉っぽく聞こえるかも知れませんが、「追い詰められる前になぜ家族に連絡をしなかったのか」って思える人は、それだけ恵まれてるんだと思います。

ひとがひとでなくなるその時
悲しいくらい ひとはひとのかたちをしている
あなたは私とちがうにおいがする
私はあなたとちがうにおいがする
あなたの中にいるわたしを認めたくないわたし
わたしはいつかはあなたになるかもしれないのに

「犯人は自分かもしれない」

「あの事件は息子が起こしました。息子は『あんな大事になるとは思わなかった。お母さんごめんなさい』と言っています」


大林さんの所持金は8円。契約の切れたケイタイ電話と 電話番号が二つ記載された名刺大のメモが残されていた


2022年に詩集を発行いたしました。サポートいただいた方には贈呈します