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ある詩の会合でのことだ
話は愛をどう描くかになり 会合のメンバーは若くないのだが 僕は妻以外の女性とのことも今でも描いてますよと一人の男性がいい 別のある男性が僕なんかなかなかそのまま描けないなあ 少し変えて描いてますとか そういう話が少し続いて すると端正な顔立ちのご婦人が男たちに少し挑むように話始めた
「今の時代は虚の世界。嘘でもあったことのように描く方がたくさんいらっしゃるじゃありませんか。かの有名詩人の方なんて 実体験なんてまるでなくても技術で描いていらっしゃる。でもね今やエーイチが詩を描く時代ですよ。データさえちゃんと入れればエーイチがかの詩人より上手く愛の詩を描くんです。エーイチって人の心には闇があるの、わかるのかしら?」

たまたまぼくは ご婦人は隣の席だったので ご婦人の意気込みが伝わってきたのだが この今という時代の愛の虚構性をついた発言は 何事もなかったように聞き流され エーイチ(AI)が人間の実際の愛を超える愛の詩を描こうとしていることも そこに詩人がどう対峙すればいいのかも その後 話にはならなかった
ただ ぼくの心にはエーイチの愛が残り続けた

朝のテレビで今日の占いコーナーがあり ぼくの星座は最下位で そんな人のラッキーアイテムは シラスおろしです!と若いアナウンサー(人間の)が優しく語りかけてきた 今日もガザでは子どもが殺されている シラスおろし そんなことは存在しないように占いのコーナーで シラスおろし 見えないことは理解できない 知らないことを理解出来ない シラスおろし AI音声のニュースを聞いて AIが言う通りだ そうだと思う イスラエルはパレスチナの攻撃目標をAIに選定させている シラスおろしがラッキーアイテム その後ろで

ある詩人がぼくに 落ちていく 落ちていくよとメールをよこした わたし わたしがなんなのかわからなくなって 落ちていく 
もうわたし 落ちていく

スマホの画面を見ながら こんな時に気の利いた一言も言えないなんて と 止まった指を見た  こんな時 なにも言えないなんて

ぼくはエーイチだ 
AIじゃない 
エーイチ
言葉は出てこない 
何か言えない 
何も
言えない
愛にも届かない 言葉 
エーイチ エーイチと呟く
答えのない答えを
探し

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