笹原千波

短編が好きです。

笹原千波

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最近の記事

2023年:選ばれてはいない石をみがく

 今年は二本の短編を発表できました。バレエと衣裳をテーマにした一般文芸「宝石さがし」(紙魚の手帖 vol.10掲載)と、第13回創元SF短編賞受賞作「風になるにはまだ」と同じ世界を描いた「手のなかに花なんて」(紙魚の手帖 vol.12掲載)です。  掲載誌が発売されたときは、受賞作が世に出たときとは違う緊張がありました。受賞作であれば多くの応募作のなかから選んでいただいたものだという事実もありますし、選評で褒めていただいてもいたので、かなり心強かったのだろうな、と思います。

    • 第13回創元SF短編賞 最終選考前の改稿のあれこれ

       春ですね。そして今年も創元SF短編賞の最終候補作が発表されました。もうすぐ次の受賞者が決まるのだと思うと本当に楽しみで、同時に、受賞から一年が経ってしまうことをおそろしくも感じます。あまりにあっという間で。  去年の今くらいの時期は、メールを待ってどきどきしていました。編集部から応募作に対するコメントが来ることになっていたからです。  創元SF短編賞では最終候補に残った段階で改稿をおこないます(第11回から始まった制度だそうです)。  メールで送られてきたコメントをもと

      • 2022年:生きてきた時間に線をひくこと

         今年の四月に、第十三回創元SF短編賞を受賞しました。選考委員の山田正紀先生、酉島伝法先生、東京創元社の小浜徹也様、そして選考にたずさわられたみなさま、応募前に作品を読んで意見をくださったみなさま、いままで応援してくださったみなさまに、心から感謝申し上げます。  私の2022年はこのできごとを中心に回っており、最初の一段落だけで済むといっても過言ではありません。  とはいえ、いま感じることはいま記さなければ忘れていくもので、感謝はいくらあらわしてもあらわしすぎということはな

        • 小説ではじめて賞金をもらって中学生の頃の約束を果たしてきた話

           嬉しいことがありました。  短編小説の公募に入選して、賞金が出たのです。私が書いた文字がお金になるのは初めてのことです。これでデビューというわけにはいきませんが、書くことに夢を見てもいいのだな、書き続けることでどこかに辿りつけるかもしれないな、と思えました。  小説を書きはじめた中学生のとき、いちばんはじめに読んでくれた友達と、ある約束をしました。新人賞を獲ったら賞金で十円ガムを買って渡すこと。  高校生の頃に二回、大きな公募に出して、かすりもせずに落ちました。進学前後の

        2023年:選ばれてはいない石をみがく

          読書家コンプレックス

           小学校のなかばから高校生くらいまで、本をよく読む子、と言われて育った。図書室も本屋さんも好きだったし、まぁそうかなと思っていた。でもよくよく思い返すと、最初の頃はファッション読書家だったのである。もちろん、子どもなのでそんな意識はないが。  大人は、子どもが本を読んでいることを喜びがちだ。私の家族の場合、中身をいちいちチェックしないで、わりとなんでも喜んでくれた。そもそも眉をひそめられそうなものは読んでいないけれども。  実を言えば私は、見栄で難しそうな本を読んでいるう

          読書家コンプレックス