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読書家コンプレックス

 小学校のなかばから高校生くらいまで、本をよく読む子、と言われて育った。図書室も本屋さんも好きだったし、まぁそうかなと思っていた。でもよくよく思い返すと、最初の頃はファッション読書家だったのである。もちろん、子どもなのでそんな意識はないが。

 大人は、子どもが本を読んでいることを喜びがちだ。私の家族の場合、中身をいちいちチェックしないで、わりとなんでも喜んでくれた。そもそも眉をひそめられそうなものは読んでいないけれども。

 実を言えば私は、見栄で難しそうな本を読んでいるうちに読書が好きになってしまったクチだ。最初はそれこそ、読みやすいのに見た目が難しそうな本を選んでは大人の前でわざわざ読んでいた気がする。
 居心地のいい図書室やら優しくセンスある司書教諭に恵まれて、私は無事本好きに育った。内容は偏っていたし、気に入ると何度も読み返す癖もあったし、私よりたくさん本を読んでいた子は少なからずいたはずだ。ただ、わたしは読書が好きなのだという自覚は、あった。

 趣味だった小説に本気を出しはじめてから、読書量が全く足りていないことに気づいてしまった。なにせ名作だの古典だのと言われるものを軒並み読んでいない。
 ファンタジーを書こうと思えば、指輪物語も読んでいないし、ナルニア国物語とゲド戦記は一巻で挫折した。
 ミステリーは作家すらまともに挙げられなかった。ホラーなんて怖くて読めないし。文豪だって学校で必要な程度しか読んでいない。川端康成を図書館で借りて、三ページくらいしか進まないまま返却期限が来た。

 真正の読書家と本気で話がしたいと思ったら、幼少期がもう一度要る。相手は圧倒的な知識で私に話を合わせてくれるのだが、心苦しさでまともに会話できなくなる。かなしい。

 いいかげん大人になったのだし、あの日挫折したあれやこれやに再挑戦したい今日この頃。だいたい、好き勝手楽しんでいないでコンプレックスこじらせているのは、まだどっかで見栄を張りながら本を読んでいるんじゃないか。

 皆さまはどうぞ、純粋に読書を楽しめますように。
 どうも無邪気になれない私より。

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