パリの洗礼。
映画、音楽、ファッション、気がついたら好きなものがフランス絡みばかりで、これはどうしても行かなきゃいけないとこだわ、と思ってパリに行ってみたら、どハマりで、毎年欠かさず行ってたなあ。
初めてフランスの地を踏んだ1990年、私は欲しいものだらけでフランを握りしめて買い物に勤しんだ。
まず向かったのはJM Weston シャンゼリゼ支店。その当時、JM Westonは日本ではシップスが扱っていたのだけど、とにかく高くて小娘の私には手が出せなかった。革靴には高い関税がかかっているから、というのをシップスのお姉さんに教えてもらい『パリに行ったら、ここより安く買えるわよ』の言葉を胸に、飛び込みました、ボンジュー!
とてもシックなおじさまが私を迎えてくれ、ゴルフというタッセルの靴が欲しいと言うと『まず先に、君の足の寸法を測ってみよう』
えええ?自分のサイズは知ってますけどー!と思っていたら、縦サイズだけではなくて、横幅のサイズを知りたいんだ 的なお言葉。あらーそうなのーと思って言われるままに、コンバースを脱いだら、おじさまの表情が一変。そのまま、肩を抱かれて、奥の部屋に。
靴を買う前に靴下を買え。
えっ?えっ?
その時私は流行り始めていた足首までのスポーツソックス(やや厚め)を履いていた。今考えれば、正確な足のサイズがわからないと言う事なんだろうけど、彼の態度は多分
ウチくらい高価な靴を扱っているところに、スポーツソックスなんかで来やがって!
って言うのが本音だったんだろうと思う。そのおじさまが勧めるまま、なぜか赤いソックスをその場で買い、それを履いて、採寸を済ませ、無事私はゴルフを買えたのだった。
この屈辱的な(大袈裟に言うとね)体験を下に、これから高級店にはそれなりの格好をして臨まないといけないことを学んだ。よしっ成長あり。
後日向かったのはPAULE KA, まだ日本に入るかなり前で、VOGUEで見てこれは絶対行かなきゃと思っていたエレガントな店。ドレスが60年代調でモロタイプ。持っていった洋服の中で一番まともなものを着て伺った。
勇気を出して何着も試着、スクエアにかなり胸元が開いた白いドレスを購入。奥から店のマダムがずっと見ていてくれて、気をかけてくれてる!と私は受け取っていた。
お会計の時にマダムに聞かれた『プランタンデパートは知ってる?』『??は、はい』
にっこり笑って私のクレジットカードを返してくれた。店を出て、確認するとカードとレシートに挟まって、マダムから手書きのメッセージがあった。
プランタンデパートの3階に行って、パット入りのブラジャーを買いなさい、と。
ひー!これって親切なの?良かれと思って手紙くれたと取っていいの?小娘、胸もないくせに うちの服試着すんじゃねー!って思われたの?
立て続けにフランス人の本音接客を経験して ちょっとめげた(若かったしね)けれど、それ相当なものを身につけるには それ相当の人になりなさい、と言うことをしっかり教えてくれたんだな。若いうちでよかった、と今更ながら思う。
毎年、1回か2回行き続けていたパリ。 去年はコロナのせいで初めてこの記録がストップしてしまった。身体の中の血中パリ濃度が下がっているのを実感する。どうかコロナよ、収まって。みんながパリに行けるように。
サンフランシスコから愛と敬意を込めて。
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