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7インチ盤専門店雑記496「ファーム・ドッグス」

エルトン・ジョンとの共同作業で有名なバーニー・トーピンという作詞家がおります。元は英国人でしたが、1990年にアメリカ国籍を取得しております。彼が1990年代にファーム・ドッグスというバンドをやっておりました。このバンドは1996年に「Last Stand In Open Country」、98年に「Immigrant Sons」という2枚のアルバムをリリースしております。商業的には失敗だったようですが、個人的には結構好きな音でした。アメリカーナと分類されるようですが、元英国人が奏でるアメリカーナ、アメリカ人にはどう響くのでしょうか?

作詞はバーニー・トーピンが手がけ、作曲はバンド・メンバーがやっております。メンバーにJim Creganがおりますから、もっと注目されてもいいはずなんですけどね。ドラムスはTony Brock、つまりロッド・スチュワートの周辺人脈とでも申しましょうかね。Tony BrockはThe Babysでデビューしていて、アイドル・バンドのわりには重たい、いいドラムスを聴かせておりましたから、当時から注目しておりました。80年代のロッド・スチュワートのバック・バンドに加入することになりますが、要はカーマイン・アピスの後釜と申しましょうか、ライヴではカーマイン・アピスが叩いた曲もやるわけで、適正な人選だという印象でした。久々にファーム・ドッグスのアルバムで彼の名前を見たときは、妙に嬉しかったのを憶えています。

ともあれ、バーニー・トーピンのバンドです。彼の過去の実績から考えると、やはりエルトン・ジョンの「タンブルウィード・コネクション」あたりの土埃が舞い上がっているような印象の音楽を目指したようです。ファーストのタイトル・チューン「Last Stand In Open Country」はウィリー・ネルソンがカヴァーしているくらいですから、評判は悪くなかったと思うんですけどね。…思いたいですね。でも売れませんでした。1996年という時期にアメリカーナという音がどうとらえられたか、なかなか難しいところですが、個人的にはノース・ミシシッピー・オール・スターズを知るに至った年であり、ブルースやジャズを一通り聴きまくって、ロックに回帰したような頃でした。ま、自分が結婚した年でもあり、カミサンと一緒にライヴに足繫く通った時期です。何でもありの時代でしたよね…。

何だか外から見たアメリカ、いい部分だけしか見ていないアメリカなのかもしれませんが、日本人の自分には妙にいい響きだったんです。当然売れるだろうと思っていたくらいです。全然話題にもならず、それでもセカンド・アルバムが出たときは嬉しかったですけど、こちらは売れないだろうなという印象でした。でも2枚とも大好きなアルバムです。

やっぱり今聴いてもいいですね。好きな音です。バーニー・トーピンは最近は絵描きさんになってしまいましたが、彼の描く絵の中に星条旗がよく出てくるんですと…。アメリカがお好きなんですね。

ちなみに、時々ヴィヴィアン・キャンベルのリヴァードッグスとイメージがダブってしまい、おかしなことになります。ヴィヴィアン・キャンベルはディオ~ホワイトスネイク~リヴァードッグス~ルー・グラムのシャドウ・キング~デフ・レパード~シン・リジーと渡り歩いた人です。こちらはかなりポップなハード・ロックですから、やっていることは全然違うのですが、犬つながりというだけでなく、何かアメリカンなんですよ。バリバリの米国南部のコテコテのアメリカーナとは違って、万人向けに聴き易くしたアメリカーナのような印象があるんです。実はこちらもかなり好きな盤でしてね。もう少し売れて欲しかったんですけどね。

アメリカーナって結構濃淡あるんですよね。ルーツ探究もあり、理想のアメリカを求めてブルージーにやるのもあり、自由の国アメリカを掘る作業、外国人がやってもサマになりますが、先人は星の数ほどおりますからね…、売れればラッキー、なかなか厳しい世界でしょうよ。

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