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続・下町音楽夜話 0315「エルヴィスのポジティヴネス」

生活のリズムというものは如何ともし難いものがあって、少々忙し過ぎるのではと言われながらも、これが自分の生活リズムなのだ。3~4時間睡眠でも、人間何とかなるものだ。自分はコロナ禍でもそれなりに混んでいる飲食店を経営しながら、音楽関連の様々な活動もしている。その他にも操業支援セミナーの講師などもやるので、創業相談もやっている。ただし、創業支援系のお仕事は普段は無い。これがどのタイミングで入ってくるかで影響の出方が違うが、今回に関しては最悪とも思えるタイミングだった。

最近はコロナ禍での蔓延防止の特別措置がどうのと言われても、もうやるだけのことはやっているという気分なので、また新規感染者数が増えてきたことに怒りしかおぼえない。店では入店時に手指の消毒と非接触型体温計での検温をお願いしており、席に案内するだけでも普段以上に手間がかかっている。席数を減らしていることで、ランチタイムなどは満席になることも多く、スタッフは普段のお仕事と消毒作業に加えて、お断りすることでも時間を割かれることになる。結局自分が調理し、運んで、片付けて、皿を洗うなどということにもなる。必然的にストレスが蓄積している日々となってしまう。

月一回のラジオは、深夜の生放送ということが少々体力的にキツイものの、これはむしろ楽しみという側面が大きい。最近はちいとも開催できていないが、自分のトークイベントと何らかわりはなく、テーマに沿った選曲そのものは音楽好きの最たる楽しみである。これの月一回というペースが最近はカラダにフィットしてきて、さらに余裕が出てきたが、「聴いていますよ」などというお客様からのお声がけには、いまだにどう応えていいやら迷うこともあり、照れくささも手伝ってドギマギしてしまう。それでもやはりこの「パーソナリティをやらないか」とお声がけいただいたことは本当に有り難い。

問題は創業相談だ。普段なら創業支援セミナーで使うパワーポイントや資料集を用意しておけばいいのだが、このタイミングでの創業となると、また違った配慮も必要となってくる。今自分がどんなことで苦労をしているかという情報をシェアしてあげられるだけでも有用だとは思うが、伝えたいことは多々ある。さあ限られた時間で上手く伝えられるだろうか。

やはり店を作るというのは誰でもそうしょっちゅうやることではない。当人の人生において最大のイベントとなる可能性もあり、当然大きなおカネも動かすことになる。いい加減な話で済まされることは何一つない。小さなお店であれ、慎重に慎重を重ねて臨む一大事業なのだ。相談にいらっしゃる方も真剣だろうが、こちらも傍から見て想像される以上に、真剣に対応するものなのだ。今が創業のタイミングとして適しているか否かは考え方次第だが、コロナ禍で飲食店経営者がヒマかというと、むしろ雑務がかなり増えており嬉しくはないタイミングなのだ。でも頑張るしかないではないか。

そして、いよいよ近づいてきた江東区の文化センターで開催されるレコード講座の講師の一件もある。準備としては、こちらも選曲そのものは大した労力ではない。問題は機材持ち込みという点で、コロナ禍ということもあり、人数の割に大きな部屋を使うことになってしまった。そのために、当初はホーム・オーディオ的なもので大丈夫かと思っていたが、やはりPAが必要ではということになり、お借りする算段などもあって少々バタバタしてしまった。

また、蔓延防止のために文化センターの全講座を20時終了にされてしまい、時間変更の必要も出てきており、この部分は講座の担当者氏が大変な思いをしていることだろう。自分はランチタイムの営業を終えて、自宅に戻り、クルマで機材を運び込んでから講座に臨むので、かなりタイトなスケジュールになってくるが、まあ何とかするしかない。受講される方々の年齢が意外なほど高いことは、時間の繰り上げに関して感謝されるかもしれないが、若い方はお仕事帰りかも知れないので申し訳ないといったところだ。結局打合せに来なければいけない担当者氏がシンドイわけだが、こちらも振り回されないようにしないと、いろいろ作業の手を止めてしまうことになる。

とりあえず講座で鳴らすレコードをかき集め、チェックする作業も始めてみた。初回はロックの歴史を90分で語らなければいけない。最終回のお題が「MTV」なので1980年代以降はそちらに任せるとして、エルヴィス・プレスリーからバグルスまでを90分で語るわけだ。かなり無茶という気もするが、楽しんでいただけるよう最大限努力してみよう。

エルヴィスの歌声をじっくり聴く機会はそうそう無いが、今回あらためて10枚ほどの7インチ盤をスピーカーと対峙して真剣に聴いてみた。そして意外なほど魅力的な音と声に認識を新たにした。他の音楽にはない、自らの手で新しい時代を創り出した男の自信に満ちた歌声は、困ったことに取捨選択が悩ましい。「ハウンドドッグ」か「ハートブレイク・ホテル」か、演奏重視なら「ドント・ビー・クルエル」もかけてみたい。さらに嬉しいことにエルヴィスの声は、創業支援の後押しをしてくれるひたむきさと猛烈なポジティヴネスを内包しているではないか。前を向き、人生の新な一歩を踏み出す人間に、頑張れと、幸あれと。これは人生の応援歌そのものだ。

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