見出し画像

清澄白河カフェのキッチンから見る風景 :  高齢社会のモチベーション

先週OAだった自身のラジオ番組、中央エフエム「さらまわし・どっと・こむ」のジョー・ウォルシュ特集で、ラストの曲、シェリル・クロウ・フィーチャリング・ジョー・ウォルシュの「スティル・ザ・グッド・オールド・デイズ」を高齢社会のモチベーションのような曲と評したわけですが、ジョー・ウォルシュの人物像に関しては、全くもって語り足りない回となってしまいました。それでも普段あまりラジオでかからないであろう彼のいい曲をご紹介できたのはよかったかなと思います。如何せん10歳ごろから洋楽を聴き始めた自分にとって、中学生の頃に大ヒットした「ロッキー・マウンテン・ウェイ」が大好きになりましたから、かなり初期からのファンです。そして、いまだに応援しています。

見方によってはただの陽気なアル中オヤジだったわけですが、その裏では結構シンドイ人生を歩んでいる人でして、1971年に生まれた最初の娘さんを1974年には亡くしており、名盤「So What」には彼女のことを歌った「Song For Emma」が収録されていることも知られております。また、90年代から義理の妹さんが行方不明になったままだったりしていまして、なかなかに気の毒です。結婚は5回、現在の奥さんはリンゴ・スターの義理の娘さんです。アル中を克服したのは、ニュージーランドの原住民がどうのという神秘体験が一つのきっかけになったということですが、それ以外にもADHDだったとか、強迫性障害だったとか、アスペルガー症候群だったなどという発言もあり、傍から見ていて思う、ただの楽しいオジサンという印象とは違った人物像が見えてきたりします。

そういったことも知ったうえで、この人には底知れない魅力を感じてしまいます。そもそも、多くのミュージシャンから愛されるそのキャラは、天然というべきか、愛すべき人物なんだろうなというところがやはり大きいです。趣味はアマチュア無線というのも有名な話で、随分凝っていたようです。エクストラ級の免許を持っているとか、来日したときに日本アマチュア無線連盟本部を表敬訪問したといった逸話もあります。…強迫性障害やアスペルガー症候群の人間が、他人とのコミュニケーションを強く希求するようなアマチュア無線を好みますかね?ADHDはステージでの彼を見ていると「そうかも」と思わなくもないのですが、この辺は100%鵜呑みにすべき情報でもないかもしれませんね。

まあ、人生いろいろ、といったところですが、結果的にこの人、いつ見ても楽しそうなんです。そこってもの凄く大事なことなんじゃないですかね?昔売れたミュージシャンが年取ってからも幸せかというと、必ずしもそうとは言い切れなくて、むしろそうではない人も多いように思うんです。そもそも、2012年、配信で音楽を聴くのが当たり前になり、CDの売上も下降線になった時代に、「アナログ・マン」というアルバムを出してくるあたりは、実に好ましい開き直りだと思うのですが、その裏でこのアルバムのアナログ・レコードを買うとダウンロード用のコードがついておりまして、これが極々初期のハイレゾ音源がダウンロードできるものだったんです。まあ抜かりないです。ダウンロードに1時間近くかかった懐かしい思い出です。

そして、ダウンロードが完了した音源を鳴らしたところ、椅子から立ち上がってしまったほどビックリする高音質だったわけです。まあ、音がデカかったという方が正しいかもしれませんけど。もう本当にビックリしました。そして今回、ラジオ番組で取り上げた「アナログ・マン」は、1991年の「オーディナリー・アヴェレージ・ガイ」収録の「ユー・マイト・ニード・サムバディ」に続いてかかりましたから、やはり調整も限界というか、ラジオで聴いていても、ドカーンと出てきた印象でした。90年代のCDでリリースされるのが当たり前だった時代のアルバムのアナログ・プレスは溝が細く、音圧低めです。その直後に出てきた「アナログ・マン」、凄かったですね。

結局のところ、「人生なんて楽しんだ者が勝ち」的な、ポジティヴな開き直りがいいんでしょうかね?この人を見ていると、ネガティヴ・マインドがいかんのではと思わせるわけです。この人、大統領選に出馬しようとしたり、地球環境を憂いている内容のアルバムを作ったり、ジャケットでは実に意味深な反戦メッセージを表出していたりする一方で、「”I.L.B.T.s”」などという、つまり「デカパイ大好き~」みたいな曲で勝手に盛り上がっていたりします(…ホントにしょーもない歌詞です)。63歳になった自分も、この何とも陰鬱な高齢社会において、人生のセカンド・ステージくらい楽しくやろうとしているわけですよ。頼まれてもいないのに高齢社会のモチベーションを提示してくれるような、実に有り難い人生の先輩として、大いに尊敬するわけです。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?