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7インチ盤専門店雑記670「Another Story」

コートニー・パインのアルバム、「Another Story」です。1998年にジャイルス・ピーターソンのTalkin' LoudからリリースされたRemix集でして、アナログレコードは3枚組です。1998年のアナログレコードですから、好き者相手に少数プレスしたものでしょう。実は持っていたことを忘れておりました。自宅のジャズ棚からひょっこり出てきたものです。

1998年にTalkin' Loudから出たアナログ盤というだけで、もう興味深いわけですが、この頃よく聴いていたんですよねぇ、コレ。…というか、この手。4heroとか、Roni Sizeとか…個人的なお宝盤で、店には置かないヤツです。相場とかも分かりません。多分そんなにはしないと思いますが、自分は「Don't X'Plain」3発でしばらくはニヤニヤしていられます。

この盤、アートワークも大好きです。レコード・ジャケットは、音楽を楽しむことに関しての大きな要素の一つです。やはり私はアナログレコードが好きで、いまだにサブスク等を必要としない理由もそこにあります。

そういえば、ジンジャーのオープン当初、よく鳴らしていたような気がします。これ、誰かと共有するタイプの音楽情報、例えばストーンズのどの曲に誰々が参加しているとか、何年のヒットで何位までいったかといったいったものとは無縁です。あくまでも個人的な密かな楽しみ的な盤ですからね。また、この盤を鳴らし始めてしばらくしたら室温が2〜3度下がったように感じます。その感覚が好きで愛聴しておりました。

一方で面白いと思うのは、Remixerとして4heroが参加していることです。00年代10年代を通して人気だったドラムンベースのユニットですが、彼らの1998年といえば、名盤の誉れ高い「Two Pages」がリリースされた年です。その後意外なほど、息の長い活動を続けておりますから、いつが旬とは言い難いのですが、98年はやはり彼らの一つのピークであることは間違いありません。Talkin' Loudのレーベルメイトであることを考えれば、ここに参加しているのは当然かもしれませんが、それ故に1998年のTalkin' Loudの方向性が伺える気もします。時代を象徴する音なんです。

コートニー・パインの「Don't ’Xplain」のオリジナル・リリースは95年のアルバム「Modern Day Jazz Stories」です。90年代のジャズ・シーンを象徴する一枚ですが、あのジャイルス・ピーターソンが98年になってもまだRemixを出そうとする、しかもアナログ3枚組という好き者しか手を出さないようなメディアで…、そう考えると、実は時代を紐解く重要盤とも言えるのではないでしょうか。その後のアナログ動向は敢えて語るまでもありませんかね。

余裕がある時に2〜3枚買っておいて、誰かに差し上げた記憶もあるのですが、いつ頃誰にというのは忘れてしまいました。大震災の年に倒れた時に吹っ飛んだ記憶の一部のようですから、きっと00年代の出来事ですね。…その辺、アカンのです。その時代に一緒に仕事した人間が訪ねて来ても、誰だか思い出せないので、実はヒヤヒヤものだったりします。

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