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7インチ盤専門店雑記672「グレート・カヴァー5:Sweet Jane」

ヴェルヴェット・アンダーグラウンドの「Sweet Jane」です。昔は全然好きではないバンドでしたから、ちゃんと聴いたのは随分経ってからでした。自分の中では、モット・ザ・フープルがやっている曲という程度の認識でした。お店などやっていると、ヴェルヴェット・アンダーグラウンドやルー・リードに思い入れのあるお客様がいらっしゃることが当然ありますから、「Berlin」とライヴ盤くらいは置いておくようにしておりました。でも、その「Berlin」も最近売れてしまいました。

「Sweet Jane」のオリジナルはヴェルヴェット・アンダーグラウンドのライヴ盤が初出でしたが、70年のアルバム「ローデッド」に収録されたヴァージョンはブリッジ部分がカットされていたということです。1995年のベスト盤が完全版の初出です。ルー・リードのライヴなどでも聴けますが、とにかく随分多くのカヴァーを生んだ曲です。

この曲を強く意識したのは、1989年のカウボーイ・ジャンキーズ「The Trinity Sessions」に収録されていたカヴァーを聴いてからです。この激渋カヴァーもいきなり好きになったわけではなく、アルバム冒頭に収録されたマーゴ・ティミンズの独唱「Mining For Gold」が大好きで繰り返し聴くうちに、同盤収録の「Sweet Jane」も気に入ってしまったという流れです。

実際にそれからヴェルヴェット・アンダーグラウンドのライヴを入手して、オリジナルを聴いたわけで、もっと早く聴いておけばよかったと思いましたね。70年代の自分の周辺では聴いている人間もおりませんでしたし、妙にヴェルヴェット・アンダーグラウンドが好きだと言うことが憚られるような空気感がありましたからね。…「ヘタやん」という感じでしたね。

グランジなども経由して、ヴェルヴェット・アンダーグラウンドのようなセンスで売るタイプの音楽が、90年代は随分再評価されていたと思います。世界的な事情かどうかは分かりませんが、自分の周辺では、1995年に東京都現代美術館がオープンしたことが影響しているように感じました。

現代美術館のおかげで、アンディ・ウォーホルやその周辺人脈に思い切りスポットが当たりましたからね。私は元々ポップアート好きでしたが、職場から歩いて10分程の場所に現代美術館がオープンしたわけで、招待券もいただいたこともあって、オープン当初に40回ほど通ったおぼえがあります。その頃ヴェルヴェット・アンダーグラウンドもウォーホルといっしょに随分話題になっておりました。ただその当時でも、アナログレコードは安く売られてましたけどね。今は手が出ない高額盤になってしまいました。ライヴだけは買っておいてよかったかなといったところです。

一つ忘れられないのが、ブラウンズヴィル・ステーションというコミック・バンドが1973年の「Yeah!」というアルバムでこの曲をカヴァーしているんです。この盤、モトリー・クルーがカヴァーしてヒットした「Smokin' In The Boys Room」のオリジナルが収録されております。当時の邦題は「隠れ煙草」でした。そのアルバムの冒頭でやっておりまして、まあどうしてデトロイトのコミック・バンドが…というところで引っかかるわけです。…そういう曲じゃないでしょう。この連中、意外なほど演奏はタイトです。まあコミック・バンドはヘタだと笑いがとれません。演奏が上手いから意外な驚きとともに、笑いと喝采が得られると考えております。


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