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7インチ盤専門店雑記449「孤独なランナー」

ジャクソン・ブラウンの「孤独なランナー Running On Empty」、いいアルバムです。一応ライヴ・アルバムということになっているようですが、特定の会場で録音したとかではなくて、あちこち、それこそバスの中とかでも録音しているので、あまりライヴ盤という印象は強くありません。

最初の奥さんがオーヴァードーズ絡みとはいえ自ら命を絶ってしまった後に作られたアルバムということもあって、邦題は「孤独なランナー」となっているのでしょうが、ニュアンス的には違う気もします。仲間に支えられてツアーに明け暮れている記録ですから、前向きに頑張っているぞという部分が織り込めなければいけない気がします。とにかく、この盤の日本語ウィキペディアのページが恐ろしくチープで悲しくなるんですけど、日本では非常に人気があるというのに、これは何なんですかね…。

この盤の裏ジャケのクレジットを眺めていると、面白いことがいろいろ見つけられます。まず、A-2「The Road」はダニー・オキーフのカヴァーでして、これはオリジナルも大好きなので、ついつい聴き比べたくなってしまいます。またB-2「Love Needs A Heart」の作者クレジットがジャクソン・ブラウン、ヴァレリー・カーター、ローウェル・ジョージの3人共作になっていることも、それだけで面白いと感じてしまうのは私だけではないでしょう。ラストの「Stay」はドゥワップ時代のヒット曲のカヴァーですが、ここではヴォーカルがジャクソン・ブラウンに加えてデヴィッド・リンドレーとローズマリー・バトラーの3人なんですよね。「汚れた英雄」や「幻魔大戦」のあの方ですね。

演奏者は西海岸の有名どころが顔を揃えておりますね。ジャクソン・ブラウンとデヴィッド・リンドレーだけでも買うのに、ダニー・コーチマーやリーランド・スクラ―、ラス・カンケル、クレイグ・ドージといったあたりです。リンダ・ロンシュタットのアルバムあたりと見比べても鉄板布陣ですよね。まあ、アンドリュー・ゴールドはもう売れちゃってるし、ワディ・ワクテルも忙しいだろうし、とか余計なことまで考えてしまいます。

ただワディはいなくでも兄貴のジミー・ワクテルがジャケット・デザインをやっておりまして、この人も人脈系と申しましょうか、誰でもいいから仕事を受けるわけではなくて、一部のミュージシャンに繰り返し起用される人ですね。ジョー・ウォルシュやらブルース・スプリングスティーン、ウォーレン・ジヴォン、CSN、…トミー・ボーリンの2枚も彼ですね。そしてやはりアイテム大映しの構図に個性があります。

「孤独なランナー」のジャケットは彼の個性を感じさせるものではありませんが、この盤をジャケット・フレームに入れて飾っている人がアメリカでは多いと言う話を読んだことがあります。私がお店でパット・メセニーのアルバム・ジャケットをディスプレーするのと同じ感覚なんだろうなと思ったりもします。旅への憧れみたいなイメージですね。…手前のドラムスが要らない気もしますけどね。


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