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FM84.0MHz Radio City presents "Saramawashi.com -The Vinyl Paradise" 100:オーディオ・チェック向きの曲特集

さらまわしどっとこむ -The Vinyl Paradise-
第100回(2023年8月25日(金)20時~
(再放送:8月27日(日)19時~)

清澄白河にあるカフェGINGER.TOKYOのオーナー高山聡(あきら)がお届けする音楽番組です。
全曲アナログ・レコードでお届けします。可能な限り7インチ盤で、しかもフルレングスでかけます。
サーフェスノイズにまみれた1時間、ぜひご一緒に。

今週はオーディオ・チェック向けの曲特集です。高山が普段オーディオ機器のチェックに使っているレファレンス盤、ドナルド・フェイゲンの「I.G.Y.」などはもうかけてしまっておりますから、今回は使えません。代わりに何かいい曲はないかと考えたときに、「コレ、使えるな」と思い付いた曲をご紹介してみます。何をチェックするかというと、今回、オーディオテクニカさんから40年ぶりに復刻されたアナログ・レコード・プレイヤーのサウンド・バーガーとオーディオテクニカさんご自慢のカートリッジ3種のデモ機をお借りすることができまして、コイツを試してみようということなんです。


普段は局のテクニクスのターンテーブル、1200シリーズに自分で持ち込んでいるオルトフォンのカートリッジで鳴らしておりますが、違いが聞き取れますでしょうか。私個人的には本来はSHUREの音が好きですが、ラジオの収録では使い勝手を優先してオルトフォンにしております。SHUREよりもかなりクリアで素直な音です。SHUREの方は腰がすわった図太い音です。ロック向きとも言えますかね。さて今日はお借りした中で、オーディオテクニカのVMN60SLCというカートリッジを試してみたいと思います。ここ数日、お店のシステムであれこれ試してみたところ、コイツは情報量が豊富で、なかなかいい鳴りを聴かせます。実に大人な鳴りでして、オルトフォンがやんちゃ坊主に感じられます。

1曲目
「Children Of The Revolution – Tony Visconti ’87 Remix」T.Rex (1987)

まずこの曲でサウンド・バーガーの試聴をしました。2リットルのペットボトルよりも一回り小さいくらいのボディで、レコード盤をセットするとかなりの部分がはみ出た状態になります。ラジオですから視覚的にお見せできないのが残念ですが、レコード・マニアにしてみると、かなり驚きのヴィジュアルですし、これでいい音が出るのかと疑問に思うかと思いますが、想像以上に鳴ります。だいいち、ブルートゥースで出力できます。つまり、ブルートゥース対応のイヤフォンをお持ちなら、これ1台購入すればレコードが聴けてしまいます。充電式のバッテリーを積んでおり、ケーブルが一本も繋がってない状態で鳴らせるわけです。番組収録ではミニ・ジャックから出力しました。コンパクトなボディで、やはり低音がしっかり出るのかというところが気になりますのでこの曲を選んでみました。その結果、意外に鳴ることが確認できました。低音も問題無しです。胴鳴りもありません。しっかりしております。

トニー・ヴィスコンティはT.REXやデヴィッド・ボウイといったアーティストのプロデューサーだった人ですが、2023年10月20日に「プロデュースト・バイ・トニー・ヴィスコンティ」というボックス・セットがリリースされます。そのご案内も兼ねて、この曲を選んでみました。出だしのドラムスだけでもオリジナルのシングルとは印象が違います。実に低音がいい感じです。

2曲目
「Fingerprint File」The Rolling Stones (1974)

ここからは、カートリッジの試聴に行きました。オーディオテクニカのVMN60SLCですが、かなりの情報量です。今回はLPも7インチも12インチも試してみます。まずは全体の鳴り、楽器の分離やバランスを試すのに向いているかと思った曲がこれでした。1974年のアルバム「イッツ・オンリー・ロックン・ロール」のエンディングですが、シングル曲ではないのでLPです。この曲、ベースをミック・テイラーが弾いております。サイド・ギターはミック・ジャガーです。スライ&ザ・ファミリー・ストーンのスタイルに近い、ジャズ・ファンクっぽいミック・テイラーのやたらと上手いベースが面白いと言われます。どれだけ聴き取れるかですね。キーボードも面白くて、ビル・ワイマンがシンセ、ビリー・プレストンがクラヴィネット、ニッキー・ホプキンスがピアノを弾いております。音の構成はストーンズっぽくないですが、それでもそこはかとなくストーンズのテイストが感じられる面白い演奏です。

試聴の結果は、ミック・テイラーのベースがしっかり追え、いい鳴りでした。ミック・ジャガーのフェイザーがバリバリのサイド・ギターが目立ちますが、それでも楽器の分離がよく、元々隙間のある音を聴かせるストーンズですから、こんな編成でもそのストーンズらしい、音の隙間を楽しめる鳴りです。予想外に分離がいいです。

3曲目
「Dance On A Volcano」Genesis (1976)

1976年のアルバム「ア・トリック・オブ・ザ・テイル」の冒頭ですが、これはもう低音がどれだけ出るか、空間的な広がりを描出できるかを試しております。スピーカーの違いもありますが、ジンジャーで鳴らすと、もう地響きのようになります。ここのスタジオ・モニターでも、ヘッドフォンでも、それなりに低音が出ているのは分かります。低音成分をしっかり拾っています。昨日、一昨日も、ジンジャーで鳴らしてみましたが凄い低音が出ます。かなり引き締まった低音です。ボンボンしてない鳴りです。そこはこのオーディオテクニカのVMN60の魅力かもしれません。空間的な広がりは文句無しですが、これは録音もいいでしょうけど、当たり前のように鳴らします。

4曲目
「Takin It To The Street」The Doobie Brothers (1976)

ここからしばらく7インチ盤で聴きました。76年の「テイキン・イット・トゥ・ザ・ストリーツ」からタイトル・チューンを聴きましたが、まあご存知の方も多いかと思いますが、超優良録音、もの凄くいい音で鳴る盤です。ベースの音が素晴らしい録音です。これを破綻なく鳴らせるかというところです。これは文句無しですね。ちょいと優し過ぎる問題を出してしまったテストのようになってしまいました。それでも本当に面白いですね。私は同じお金をかけるならレコードを1枚でも多く買いたいクチでして、オーディオにはあまりカネを使わないタイプの人間ですが、やっぱりこういう聴き比べは面白いです。オーディオ趣味の方にしてみたら、もっと言い方があるだろうと思われるかもしれませんが、デモ機をお借りして悪口ばかり並べるわけはないですし、必要以上に褒め殺しにしても聴いている方には判ってしまいます。正直な感想を述べさせていただきます。

5曲目
「Do What You Want, Be What You Are」Daryl Hall & John Oates (1976)

ホール&オーツ、1976年の「ビッガー・ザン・ボ―ス・オブ・アス」からのシングルです。これはもう、ダリル・ホールのヴォーカルとジョン・オーツのカッティング・ギターの音色を聴いていただくための選曲ですが、ウルトラ・レアな7インチ・シングルでお届けしました。驚くほどエコーが深いです。ジンジャーで鳴らしたときとかなり印象が違います。情報量が多いです。

6曲目
「On The Beach」Chris Rea (1986)

時代は一気にとび、1986年の音源です。目の前でボソボソ歌っている様をどう聴かせるかの興味です。距離の近さを音で表現しろという話です。またハスキー・ヴォイスをいい感じで鳴らすのも案外難しいところです。結果はハスキー・ヴォイスがちゃんとハスキーに聴こえましたね。ドラムスもいい感じで鳴ります。配信音源などで聴くと、あまりハスキーに聴こえなかったりします。しわがれ部分が聞こえないのでしょうか。あれは配信音源の方がビックリなんですけどね。

7曲目
「The Flame」Cheap Trick (1988)

8曲目
「Another Day In Paradise」Phil Collins (1989)

しょっちゅう申し上げておりますが、アナログ音源のピーク期、80年代終盤ですが、88年89年頃の盤は素晴らしい鳴りのものがあります。その一方で入手困難の極みでもあります。ここでは2曲続けて聴きました。深いエコーが時代を感じさせる音でもありますが、どちらもレアな7インチ・シングルでお届けしました。この辺が上手く鳴らないようでは使えませんが、さすがにいい鳴りでした。アナログ録音の頂点を極めているような音でした。

9曲目
「Over My Shoulder」Mike + The Mechanics (1995)

10曲目
「Sunday Morning」Maroon 5 (2004)

90年代以降も聴きました。もうデジタル環境で鳴らすことを前提に録音されていますから、エッジが立っています。アナログで聴きたい音色の曲でもその辺の兼ね合いが難しくて、低音がブーミーだったり、ヴォーカルが妙にノイズを噛んでいるような鳴りだったり、意外に満足できない音源もあります。ここでも2曲続けて聴きましたが、マイク・アンド・ザ・メカニクスはLPで、マルーン5は12インチ・シングルでお届けしました。溝が太い12インチの鳴りもチェックしてみました。結果はさすがに破綻のない鳴りでした。マルーン5は、アナログ・レコードで聴きたい極めつけの音源かと思います。頑張って探す価値があると申しましょうか、アナログが復活して昔の音源しか聴けないわけではなくて、21世紀にもこういったアナログで楽しみたいと思える音源が存在することが嬉しいです。

11曲目
「Tell Him」Moon Child f/ Lalah Hathaway (2022)

本日ラストは、21世紀の低音成分豊富な音源がどう鳴るのかを試しました。2022年の音源ですが、さすがにしっかり鳴らしきりました。

オーディオテクニカは、リーズナブルなメーカーかと思っておりましたが、今日まとめて聴いて、だいぶん高級な鳴りを聴かせるものを作っているなという方向に印象が変わりました。また、若い人とも話したのですが、昔に比べて、随分オシャレなイメージのブランドになってしまったんですね。ちょいと驚きました。
何はともあれ、オーディオテクニカさん、有り難うございました。

次回は7インチ盤で聴くレッド・ツェッペリン特集です。お楽しみに。
番組へのご意見やお便りをください。
voice@fm840.jp

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