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7インチ盤専門店雑記316「笛の音」

ファイフという小さな横笛をご存知でしょうか?ピッコロと勘違いされるのですが、ピッコロがCもしくはDが基音なのに対して、ファイフはAかB♭なんだそうです。自分で演奏するわけではないので、この辺は楽器メーカーのサイトの受け売りです。

エドゥアール・マネ「笛を吹く少年」(1866年)
(画像はWikipediaから拝借しました)

ついでに言うと、パリのオルセー美術館に所蔵されているマネの「笛を吹く少年」という油絵は有名ですね…ですよね。この少年が吹いているのもファイフですね。タイトルが「Le Joueur de fifre」と言います。英語では「The Fifer」、笛といってもファイフの方だというのが分かります。

ちなみに最も分かり易いかもの説明が、「鼓笛隊で使うのがファイフ」です。太鼓と笛の鼓笛隊、現代のマーチング・バンドでもファイフの方が一般的なんですね。戦場で遠くまで音を響かせることを目的としていますから、高音を大音量で演奏するというのが流儀のようです。

ノース・ミシシッピー・オールスターズ(NMA)の「アップ・アンド・ローリング」という2019年にリリースされたアルバムがあります。この盤のあちこちでもファイフの音色が聴けます。まあ先般「南部逍遥」などと言いつつ、ラジオ番組でかけた盤なのですが、かなり脳内ループが激しいものです。何ともエスニックなメロディの曲もあり、どうも脳内再生されているときは、ファイフの音色がピッピロピッピロ鳴っております。ところが、アルバムのタイトル・チューンはじめ、すべての曲に入っているわけではないんですけどね。でも脳みそが勝手に笛の音をつけてしまうような盤です。個人的にはメチャクチャ面白がっております。

NMAのアルバムで吹いているのはSharde Thomasという若い黒人女性なんですが、由緒正しいファイフ吹きのようです。でもルーサー・ディッキンソン率いるNMAは、ライヴで手当たり次第に楽器を持ち替える正統派ジャムバンドですから、彼女もファイフを吹いていたり、歌っていたり、ドラムスを叩いていたりします。楽しめているのか否かは、表情からは読み取れませんが、フツーにやっています。さすがルーサー・ディッキンソンが連れてくるだけのことはあります。

NMAやルーサー・ディッキンソンあたりの音源をディグしていると、現代のアメリカ南部の面白い連中の音源を漁ることができます。レヴォン・ヘルムの娘さんのエイミー・ヘルムなんかもそうやって辿り着いた人ですが、かなりいいです。もう少しディグしてみないと何とも言えませんが、ルーサー・ディッキンソンと一緒にやっている動画も出てくるので、ハズレという可能性は低いでしょう。お父さんの人脈も味方なら相当面白い音世界が背景に広がっていそうです。まあ、レヴォン・ヘルムとリビー・タイタスの間にできた娘さんということで、リビー・タイタスの現ダンナのドナルド・フェイゲンまで人脈としては辿り着けるようで、スティーリー・ダンのライヴにバック・コーラスとして参加していることもあるようです。

そんなことをして遊んでいるときに、Ed & Lonnie Youngの「Snake Dance」という曲の動画に辿り着きました。関連動画にはかなりディープなブルースものが出てきます。しかし、このEd & Lonnie Youngは、普通に考えてもブルースとは別物です。でもディープ・サウスにはこういった音楽も存在して、しかもブルースなどと同様に扱われているということですよね。…しかし、いつの時代の、どういったシチュエーションで録られたものなんだか、さっぱり判りません。でもついつい引き込まれて、2回3回と観てしまいます。感触は未知のブルースマンに辿り着いたときと同じようなものです。…やっぱりこれもブルースなんですかね?マーティン・スコセッシのブルース・ムーヴィー・プロジェクトには登場するようなのですが、時間に余裕ができたら観直してみますかね…。

今度はエド&ロニー・ヤングを起点に辿って行くと、…もしかして、これってフォガットがやっている「シボレー」の原曲ですね。いやあまだまだ知らない音楽が南部には埋もれていそうです。今の時代、有り難いことに、YouTube等のおかげで、古い音源も簡単に辿り着けますからね。それにしても、これだけを聴いてあのハードロックに仕立て直したとしたら、フォガットの連中も只者ではないですね…。


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