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7インチ盤専門店雑記366「ハイラム・ブロック」

ジャコ・パストリアスにも重用されたファンキーなギタリスト、ハイラム・ブロックですが、最も好きなアルバムは1992年の「Way Kool」です。ただしアナログはどうもないのかなという状況です。とにかく「Way Kool」に収録されている「Da Alley」という曲が大好きなので、他もそれなりに聴いてはいます。…が、どうも満足のいく音源はなかなかありません。カッティングの技は世界でもトップ・レベルかと思います。リード・ギターももちろん凄腕ですが、何か知らん、めちゃくちゃエコーをかけたりヘンな加工をするので、どうも集中できません。「真面目にやれ~」と言いたくなる人です。

フュージョン・バンドの中でも24丁目バンドの演奏はハイテクだとは思いますが、…曲なんですかね?あまり聴いてきた方ではありません。今聴くと結構古さも感じたりします。でも凄い演奏であることは認めます。ベースのウィル・リーもドラムスのスティーヴ・ジョーダンも文句なしに上手い人たちです。ハイラム・ブロックもやはり上手いなぁ。70sソウル的なテイストを持ち出したり、思い切りファンキーにはじけてみたり、アルバムを通して聴くとバラエティに富んだ曲調が楽しかったりします。しかし、そのことも含めて、80sのステレオタイプと申しましょうか、これも古臭さの一種なんでしょうか。意外なほど陳腐化してしまったかもしれません。

ジャコ・パストリアスの「パンク・ジャズ」の一連のライヴ演奏なんぞ聴くと、よく合わせられるなと驚かされます。凄いテクニックです。まああそこまでテクニック志向に走れば、古臭さもへったくれもありません。あとは好きか嫌いかでしょう。

ヘッダー写真の1982年の「N.Y.ストーリーズ First Class Vagabond」はセルフ・プロデュースですが、TRIO/KENWOODからのリリースで、カヴァー写真やらも日本人の方ですから、日本サイドからの企画だったのでしょうか。この盤、とにかくニュー・ヨーク・スタイルを強くイメージさせる曲がいいんです。低音がとりわけ魅力的な鳴りを示します。端正な時代の音が構築されており、80s的なものを聴きたいときにはいいアルバムです。よくも悪くも、1982年の音という気がします。

フュージョン全盛期の勢いをまだ維持していますから、アルバム・プロダクション全体、もの凄く勢いがあります。録音がよくて、ギターの音を取り出すように耳で追うことができますが、各楽器のバランスがまた絶妙で、ダイレクト・カッティングかいなと言いたくなる鳴りです。もの凄くクリアです。ドナルド・フェイゲンの「ザ・ナイトフライ」に対抗し得る高音質盤です。

サウンドはサンボーン的だったり、スパイロジャイラ的だったり、ナベサダ的でもあって、散漫さも感じつつ、そこに布袋的パワフル・カッティング・ギターが気持ち良く切り込んできて蹂躙するかのように鳴っております。…一応ギタリストのアルバムですから、これでいいんでしょうね。

ドナルド・フェイゲンの「ザ・ナイトフライ」が世界的にデフォルトのレファレンス盤であることに異議はございませんが、ギターのサウンド・ビルディングの点からは、この辺りをレファレンス盤にするのはありかもなどと考えております。「I.G.Y.」よりも多彩なギターが、一曲の中で聴かれますから。それだけクオリティの高い録音ではあります。…ただし、深いエコーが邪魔ですね。…時代ですかね?…アーティスト個人の好みですかね?


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