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7インチ盤専門店雑記508「Paul Kossoff」

フリーのギタリストとして知られるポール・コゾフについて、ちょいと書いておきます。薬物禍で潰れてフリーを脱退し、バック・ストリート・クロウラーを立ち上げたものの、道半ば25歳という若さで亡くなっております。L.A.からニュー・ヨークへ移動する飛行機の中で眠るように死んでいたとか…。死因は心臓発作ですが、明らかにドラッグで命を落とした一人でしょう。

自分は元来レス・ポール使いが好きなので、彼のギター・プレイも好きでした。加えてブリティッシュ・ロックの中堅バンド…どのあたりを意味するかは人それぞれということでよろしいかと思いますが、中堅どころが好きなもので、何気にいっぱい聴いてきたあたりです。90年代後半からは、ノース・ミシシッピー・オール・スターズを知ってしまったがために、アメリカンなものばかり聴くようになってしまいましたけどね。

若い頃、FENでアメリカン・ポップスをこまめにチェックする傍ら、日本の洋楽雑誌は英国ロック中心、まだ英米の特徴も見分けることが難しい時期は、さほど意識せずに好きなものを漁っていたわけで、結果として70年代によく聴いたのは、米国では西海岸、英国では中堅どころとなってしまいました。英国にはパブ・ロックもあり、中堅もフェイセズやらモットやらウィッシュボーン・アッシュやらファミリーやら…いろいろおりました。中でも、ミック・ラルフスやポール・コゾフの音が好きでした。…レス・ポール好きになったことに深く関わっているように思います。

さてポール・コゾフといえばフリーなんでしょうが、フリーはあちこちで書き尽くされているでしょう。ただしデビューから全盛期の4枚に関してですよね。フリーも終盤のアルバムはTPOを選びます。当然いい曲もあります。

例えば後々いっぱいカヴァーされる「Wishing Well」は、72年の「Heartbreaker」の冒頭を飾る曲です。この曲の作者クレジットは、Rodgers, Kirke, Yamauchi, Kossoff, Bundrickの連名なんですが、そもそもこの盤、既にメンバーのところにポール・コゾフの名前はなく、5曲で参加しているゲスト扱いなんです。ポール・ロジャースがヴォーカルとギター、アンディ・フレイザーの代わりに山内テツさんがベースでクレジットされているんです。そしてジョン・”ラビット”・バンドリックもキーボードで正式メンバーとしてクレジットされております。英国の中堅どころのアルバムでやたらと目にするラビットくんです。ザ・フーの来日公演でも見かけましたね。…重要人物です。 こんな具合に少し深く掘り下げないと音の出所が見えないようなアルバムだったりします。

正直なところ、この時期以降、ポール・コゾフに関しては、ソロなど当たりはずれがあることも否めません。聴いていて辛くなる音源もあります。でもレス・ポール好きには堪らない音が溢れていますし、スルーするのはもったいない音源もあります。

結局思うように活動できないポール・コゾフが離脱し、ポール・ロジャースとドラムスのサイモン・カークは、キング・クリムゾンのBOZとモット・ザ・フープルのミック・ラルフスを誘って新バンドを立ち上げる方向に走ります。バッド・カンパニーですね。レッド・ツェッペリンのSwan Songsとの契約にこぎ着けたわけですから、時間を無駄にできないという気持ちもありましたかね。

ただ、その途中、ポール・コゾフ、サイモン・カーク、テツ・ヤマウチ、ラビットの連名で一枚アルバムを作っていますから、痺れを切らしたのはポール・ロジャースなんでしょうね。タイミング的には、「Free At Last」の直前にリリースされたものです。この盤もB.J.・コールがスティール・ギターを弾いていたり、語り始めたらキリがない一枚です。

1973年11月、ポール・コゾフのソロが出ます。タイトルは後のバンド名にもなる「Back Street Crawler」、メンツはほぼほぼフリーです。ポール・ロジャースも参加しております。ジェス・ローデンなんかもクレジットされていて、面白いわけです。LPのA面は「Tuesday Morning」一曲です。17分40秒あります。まだ長尺曲が全盛の時代ですかね。…時代の音です。

1975年10月に、バンド名をBack Street Crawlerとしてアルバムがリリースされます。テリー・ウィルソンが2人いるややこしいバンドですね。ヴォーカルのテリー・ウィルソン・スレッサーとベースのテリー・ウィルソンは別人です。後にテリー・スレッサーと表記するようになってしまいますね。まあこういうこともありますかね…。これがねぇ、悪くないんですよ。

1976年4月、たたみかけるようにセカンドもリリースされます。悪くはない、ただ、時代はパンクがムーヴメントのようになった頃、タイミングが悪かったというのでしょうか。もっともっと評価されてもいい盤なんですけどね。そして、アルバム・リリース直前、3月19日にポール・コゾフは他界してしまいます。まだ25歳でしょ、…何だかねぇ。

さてこれ↑は83年にリリースされたコンピレーションですが、ここには未発表曲が3つも収録されておりまして必携盤です。何だかまだまだできそうな伸び代も感じてしまいます。

そしてBack Street Crawlerのメンバーはバンド名をCrawlerにして活動を続けます。…一応買っておきました。なんかやることが、Mott The HoopleがMottになったみたいですけどね。…英国ではアリなんですかね。

嗚呼、哀しくなってしまいました。




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