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7インチ盤専門店雑記570「バーンストーム」

全くもって個人的な疑問に近いはなしなのですが、ジョー・ウォルシュがジェイムス・ギャングから脱退して作った最初のアルバム「バーンストーム」は、米国で1972年10月にリリースされております。ところが自分がアルバムを一生懸命集めた時期の資料では、1973年リリースになっているんです。インターネットもなかった頃、雑誌やムックといった紙資料が頼りだったわけですが、紙の資料の正確性といったら、相当のものなんです。特に昔のディスコグラフィは本当に頼れるものでした。

何となく想像もついていたわけですが、1972年10月リリースと言っても、まだ国内盤がリリースされるまでにタイム・ラグがあった時代、ひょっとして年をまたいだのかということですが、意外なところで確認がとれました。ヘッダー写真のLPは見本盤でして、なんとレーベルに発売日が「1/6」と記されているではありませんか。…やっぱりねぇ、といったところなのですが、そうなると「なおさら」ということもありましてね…。

バーンストームに関しては制作時にゴタゴタしたというジョー・ウォルシュの証言があります。また名盤をいっぱい生み出したジェームス・ウィリアム・ガルシオのスタジオ、カリブー・ランチで制作された最初の一枚としても有名です。でも実のところ、カリブー・ランチの近くにあるジョー・ウォルシュの自宅スタジオで作っていて、仕上げだけをまだ完成していなかったカリブー・ランチを使わせてもらったということのようです。

何せこのアルバムからシングル・カットは無しです。直ぐに2枚目「The Smoker You Drink, The Player You Get.」を73年の夏前(6月18日)にリリースし、そこから「ロッキー・マウンテン・ウェイ」の大ヒットが出ます。こちらは正真正銘カリブー・ランチで録音されています。「ロッキー・マウンテン・ウェイ」で歌われているのは、ロッキー山脈の中にあるカリブー・ランチやジョー・ウォルシュの住まいで、何とかバーンストームとして再始動できたときのことなんですかね?歌の出だし「Spent the last year, Rocky mountain way, Couldn't get much higher」ですからね。

そもそも、ジョー・ウォルシュはバーンストームというバンドを作ったつもりが、レコード会社のご意向でジョー・ウォルシュのファースト・ソロにされてしまったわけなんですよね。レコード会社との確執が尾を引いたか、後々「バーンストーム」は幻盤となってしまいます。CDも米国ではリリースされず、何故か高価な日本盤が流通していたとか。2011年リリースの日本製紙ジャケットCDも高音質で好評だったようですが、何より「バーンストーム」のアナログ盤のレーベルの写真がインナーに写っており、それが話題になってしまったほどのレア盤なんですね。

実際、自分も随分苦労して手に入れましたし、国内盤しか手に入りませんでした。実は4月ほど前によっしーさんがこの盤について書かれているんですけど、同じ時期にこの盤について書こうとしておりまして、一旦投稿を取り止め、諸々周辺事情を調べ直したりしておりました。よっしーさん所有の米国初回盤の写真が載っておりますが、実は世界的にウルトラ・レアな盤なんです。アメリカに持って行ったら凄い値段になるんじゃないですかね?…日本だとそこまで人気があると思えませんから、どうなんでしょうねぇ。

加えてもう一つだけ書いておきますと、この極初期の国内盤、メチャクチャ解像度が粗いようなジャケットなんです。78年頃に発売されたゲートフォールドではないシングル・ジャケの再発盤はもっと精細で、「BARNSTORM」の文字色も違うんです。…逆ならフツーにあり得ることでしょうが、何なんですかね?いろいろ雑に扱われているような、悲しい匂いがする盤なんですけどね。

コマーシャルなものでない、つまり売れないと評価されてしまったのでしょうか。ハードロック/プログレ/SSWの時代に、ハードロックのアーティストがSSWライクに内省的な音を聴かせる好盤だと思うんですけどね。

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