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清澄白河カフェのキッチンから見る風景 :物事の本質

物事の本質を見つめる作業は一生続けることなんだろうと思います。自分自身の価値観など、それほど筋が通ったものでもなくて、その時その時で揺らいでいる程度のものと思います。年齢を重ねたから本質が見えるようになったとはとても思えないので曖昧な物言いになりますが、でも努力はしているつもりです。

元々ミニマリストとか断捨離というものがあまり好きではない人間なので、溢れるほどのレコードや本に囲まれて暮らしていることに関しては筋が通っているとすら思いますけどね。昭和人の開き直りでしょうか?どうも令和のミニマル感が生きづらくていけません。無駄があるからこそ楽しい豊かな生活というのも絶対にありだと思うんです。無駄や余裕があってこそ動きやすいということは、シャツのサイズ一つみても当然だと思うんですけどね…。昔の某国人みたいに、食べものを残すことが豊かさの証というのはおかしいと思います。食べ物を粗末にしてはいけません。「無駄や余裕があってこそ選択肢が生まれる」という程度の話しです。

ジンジャーから徒歩1分ほどの位置に、自然素材で有名なファッション・ブランドのヨーガンレール/ババグーリの本社ビルがあります。深川図書館のすぐそばにある瀟洒なビルです。ヘッダー写真のように、素晴らしいクオリティの社員食堂が有名だったりします。…高級ブランドですから、買ったことはありませんけどね。

ブランドとしては1974年に日本上陸ということで、オイルショックの頃です。元々港区の竹芝あたりにあった本社が、ゆりかもめの建設に伴い、立ち退きになったということです。今の江東区清澄にある、元は東京都の倉庫だった建物に移転したのが1993年です。自分がこのブランド名を知ったのは1991年か92年頃だったと思います。実は社長さんのヨーガン・レールさんと2度ほどお会いしているんです。

今となれば分かることですが、本社移転先の調査中だったのでしょう。江東区役所に訪ねていらっしゃいまして、自分が当時通訳をしていたもので、受付から呼び出されたわけです。実に紳士的な方で、お名刺を交換した時に、「どろどろの熔岩じゃなくてドイツのよくある名前なんです」とおっしゃいまして、「ユルゲンの方が馴染みのある発音ですね」と返したところ、嬉しそうに「それそれ」とおっしゃいまして、雑談に近い会話を小一時間交わしたので、しっかり記憶に残っているんです。

確かに会話の最初に本社ビルの候補地がどうのということでしたから、江東区の歴史をかいつまんでお話ししました。「水辺が好きなんだ」ということでしたが、「江東区の水辺は埋立地だから人口的なものだ」「水害対策は進歩しており問題ない」といったことを説明したわけですが、「鳥や魚はいる」といったようなこともおっしゃっていて、あまりかみ合わなかった記憶もあります。

しばらくしてから、私の職場に直接顔を出されて「江東区の物件に決まった」「手続きが大変だ」とわざわざ教えてくださいまして、こちらは「ウェカム・トゥ・江東区」と返し、談笑したものでした。そう、ジンジャーから徒歩1分ほどの位置にある、川沿いに建つ本社ビルを手に入れたということだったんですね…。ひょっとして、私は知らないうちにあのヨーガンレールの本社ビル選定に、一枚噛んでいるのでしょうか…。

ウェブで調べると、その後、1999年に石垣島に引っ越されたとか。そして2014年に石垣島で交通事故に遭われて亡くなられました。…本当に水辺がお好きだったんですね。

「自分の好きなもの」、「残された時間をどういうことに使いたいか」、「物事の本質が見えているか」といったことを考えるとき、ヨーガン・レールという御仁のことを思い出します。何故日本?何故水辺?何故自然素材?本能が導くまま?…いろいろ考えると、実に筋が通っている印象です。物事の本質を見つめる作業は自分自身に跳ね返ってきます。今の自分は「人生に必要な無駄を探す」ことで、落とし所、落ち着く先を見つける作業中というわけです。

いい年こいて…と思われたそこのアナタ、人生に試行錯誤はつきもの、試行錯誤のない人生なんてつまらないです。のっぺりした無難なデジタル録音のような生き方はできそうにないわけで、やはり物事の本質を見極める作業は、一生続けるべきことと思われます。


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