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清澄白河カフェのキッチンから見る風景 : Jazzはお好き?

繰り返し発信していることなのですが、GINGER.TOKYOはジャズ喫茶ではありません。ジャズのLPも300枚ほど持ち込んでいますが、ハードバップの有名盤と自分が大好きな盤のみ置いてあります。7インチ盤の専門店をやっていることからも推測できると思いますが、古いロックやポップスの方が中心です。カフェのBGMとしては実によく耳にするジャズですが、他店との差別化という意味でも、個性を強調する意味でも、古いロックやポップスの方が扱い易いわけです。ジャズは歴史の長いジャズ喫茶など凄いお店がいっぱいありますから、畏れ多くていけませんやね。

それでも、10万曲ほど搭載しているHDDプレイヤーのデータの3分の1はジャズだったりします。ランチタイムはレコードをひっくり返していられるほどの余裕がなく、HDDから鳴らしっ放しにしていますので、昼過ぎによくジャズはかかっています。ボリュームを上げる夜はほとんどロックだということです。

自分は古い物が大好きなアナログ人間ですから、ジャズを聴かないわけではありませんが、それでもリアルタイムでハマった音楽とは思い入れが違います。自分が生まれた1960年頃というのは、ジャズが熱かった時代でしょう。まだ戦後の貧しさを引きずっていたころですから、ジャズ専門誌の紙質もロクなものではありません。それでも熱い思いだけは伝わってきます。…というか、熱すぎです。

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自分の生まれた時代を知りたくて、古雑誌を集めていたこともあるのですが、私が生まれて2ヶ月後、スヰング・ジャーナルからスイング・ジャーナルになった頃の誌面は猛烈の一言です。女性ヴォーカリストが表紙を飾っていたスヰング・ジャーナル最終期でも、ファンキー極まりない内容です。オーディオ機器の広告も面白くて、時間を忘れて見入ってしまいます。

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格別のジャズ熱が伝わってくるのが、記事ではなくジャズ喫茶の広告ページだったりします。定規くらいあてろよと思うほどガリ版同人誌並みの切り貼り仕様ですが、ママや野毛のちぐさなど、有名店がさらっと出てきます。お隣のページは「有名ジャズ喫茶ご自慢LP」となっており、オススメのレコードが紹介されています。これ編集していた人は楽しかっただろうなと思いますけど、ジャズ愛が深すぎて恐れ入ります。もう畏怖です。

ビッグバンド・ジャズは好まないので、ベイシーだエリントンだという話題にはついて行けないのですが、マイルス・デイヴィスはおおよそ聴き尽くし、今でも最愛のアーティストの部類です。ジョン・コルトレーン、ソニー・ロリンズ、クリフォード・ブラウン、ビル・エヴァンス、ウェス・モンゴメリーと一通りハマリまくり、ついでにクラシックの名盤も200~300枚は聴きまくった後に、ロックとポップスの世界に舞い戻りました。

すべての音楽に共通して言えるのですが、基本的に音数が少ない方が好きなんです。しかもコンパクトにまとめてある楽曲が好きで、冗長なのはどうもいけません。一方でライヴ盤だと長めの演奏でも問題ありませんが、こちらはまた別の機会に。コンパクトな3分芸術の極みはポリスでしょうか、レッド・ツェッペリンでしょうか、キャロル・キングでしょうか、キャット・スティーヴンスも推しです。

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アナログ・レコードを聴かせるカフェなどというものをやっていると、いろいろなお客様と接することになります。中には音楽で身を持ち崩し、アル中になってしまった方もいらっしゃいました。やはり昼からアルコールを煽りつつ、「~を聴かせてくれ」と次々リクエストが飛んできまして、一通り聴き終えると涙目で感謝しながらお帰りになりました。音楽への愛情の深さもいろいろですが、音楽の影響力の強さに背筋が凍るおもいでした。

自分が知る限り、この傾向はジャズ好きの方が強いと思います。どうしてそこまで思い入れが強くなるのか自分には理解ができませんが、自分があと10年早く生まれて、リアルタイムにマイルスでも聴いていたら、どうなっていたでしょうね。大学1年のとき、レゲエだスカだと言っていた時代でしたが、とある先輩から教えられたソニー・ロリンズの「サキソフォン・コロッサス」が、自分にとっての最初のジャズでした。その先輩、「サキコロだけで何枚持っているかな…」というような方でしたから、二十歳そこそこでもう人生の道を誤り始めているような印象でした。

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私はビートルズですらリアルタイムではないので名前を挙げないのですが、本来ならビートルズこそ3分芸術の極みでしょう。そういえば、ビートルズ(ポール・マッカートニー)に人生を変えられたという人間も何人かいらっしゃいましたね。こちらも、リアルタイムで聴かなくてよかったのかもしれません。まあ、公務員を辞めてアナログ・レコードを聴かせるカフェをやっている時点で、自分も十分道を誤ったと言えますけどね。


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