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7インチ盤専門店雑記486「Allman And Woman」

グレッグ・オールマンとシェールが結婚していた時期に作られた唯一の共同作業アルバムがAllman And Womanの「Two The Hard Way」です。なんで「Allman And Cher」ではないのかと考えた瞬間、「ああ、オール・マン・アンド・ウーマンなのか」とわかりましたが、実は40年来、そこに考えが至っておりませんでした。知り合って結婚するまでが短期間だった話や、結婚期間も短かったことなどに意識を持っていかれておりました。

古いレコードに日常的に接していると、今現在のジェンダー差別意識や、現代感覚で求められるレベルでの言葉遣い、言葉選びに関して、通常以上に配慮しなければいけないと思います。イベント等で語っているときに、たまにヒヤッとすることがあるんです。レコードのオビの文言や7インチ盤シングルの謳い文句に、現代ではとても使えない表現があったりするからなんですが、エクスキューズをつけないと誤解されるのではとあせったことが、これまでにも何回かありました。それは1980年代でも、驚くほどに存在するんです。ヴァン・ヘイレンのミュージック・クリップですら、「これは今だと公共の電波に乗せて放送するのは無理でしょうね」などと言いながら紹介することになります。

話が逸れました。オールマン関連ですが、どうにも扱いが難しいです。お客様からはよく「オールマンはありますか?」と訊かれます。フルフルに持ち込んでいた時期もあるのですが、最近は初期の名盤数枚とデュアン・オールマンのアンソロジー2セットが店にあって、残りは自宅です。グレッグ・オールマンも「レイド・バック」以外全部自宅です。お客様のリクエストはそれで事足りてしまうんです。

ただし、2〜3年に1回程度、「グレッグ・オールマンのライヴはありますか?」などと驚かされるようなことを言われます。若い女性だったりするので尚更です。個人的には結構好きな方なので、しかもニール・ラーセンがバックアップについていたりしますから、クレジットを眺めながら、ニヤニヤしながら聴きます。「Playin' Up A Storm」に収録されているニール・ラーセン作品「Matthew's Arrival」なんてやっておりますが、結構好きな曲です。リリースは77年ですから、そこから数年間はニール・ラーセンの方がヒット作を連発するわけで、フュージョン・シーンとサザン・ロックの立ち位置を考えると面白くないわけないですからね。

90年代後半以降、ジャムバンド・ブーム初期、何でもありの渾沌としたミュージック・シーンの中でも、「相変わらず南部の連中は柔軟だな」と思えたのはグレッグ・オールマンのおかげかもしれません。その後、ノース・ミシシッピー・オールスターズやガヴァメント・ミュールあたりが聴くものの中心になって行く自分の下地がここらにあるかもとすら思えたりします。

またまた話が逸れましたが、オールマン・アンド・ウーマンの「Two The Hard Way」は評価が思い切り割れる一枚です。売れてはないし、Wikipediaの論調も含め、駄作と決めつけた評論も多い盤ですが、個人的には嫌いではありません。「Playin' Up A Storm」と同じ1977年にリリースされておりますから、メンツは近いわけです。もちろんニール・ラーセンもいます。ベースはウィリー・ウィークスです。…実はそれだけでも買いです。

ただしこの盤、サザンロックを期待すると肩透かしをくらいます。サザンソウルに近いテイストです。加えてグレッグ・オールマンもシェールも自作曲はありませんし、かなりやっつけ仕事に近いものなのかもしれませんが、そこはプロというか一流の人たちですからね。でもミラクルズの「ユーヴ・リアリー・ゴッタ・ホールド・オン・ミー」なんかもカヴァーしていたりして、結構楽しんで聴けるんです。B面のバラードの応酬はなかなかの出来なのではないかと思います。全編通して、グレッグが少しシャウトし過ぎな印象もありますし、シェールは少し控えめな印象ですが、他の盤ではシェールが控えめに歌うなどというものはありませんから、これもありかと思いますけどね…。

昨日は店舗でもウェブでも、結構な枚数のレコードが旅立ちました。ご協力に感謝、感謝です。しかもイベント用に鳴りのいい盤をお借りしたり、実に有り難い日でした。花粉のせいもあって体調はイマイチの季節ですが、コロナ禍後の実店舗経営でこれだけ楽しめる日々が戻ってくるとは思っていなかったので、昨夜は妙に嬉しかったんです。いつまで続くかはわかりませんけどね。レコードを減らして行く日々は寂しいかと思っておりましたが、意外に充実感もあって予想外に楽しい日々です。


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