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続・下町音楽夜話 0279「カリフォルニアの青い空」

東京音楽放送局~Tokyo Music Station~(FM84.0中央エフエム)の次回のテーマが決まった。「せめて気分だけGo To! West Coast」ということで、まさに今の状況のままだ。せっかくのお盆休みをどこにも行けないで過ごすことになるわけで、カラッと爽やかなウェスト・コーストのサウンドでも聴いて、少しでも気分を上げて行きたいとは思う。例年の如くお店は一週間お休みである。スタッフがやるイベントが前半にあり、何やら楽しそうなメニューが並んでいるので、一・二度食べに行くかとは考えているが、それ以外には本当に何の予定もない。決算の作業や申請行為に時間を取られることは仕方がないが、少しは遊ばないと休みに余計疲れることになりそうだ。自宅の部屋の片づけやら、気分がよくなることに時間を使いたいと思っている。

さて、自分にとってウェスト・コーストと言ったら何だろうか?イーグルスやリンダ・ロンシュタット、ドゥービー・ブラザーズにスティーリー・ダンといったあたりか?シカゴも活動のベースはロスだが、バンド名がよろしくない。カリフォルニアと捉えればシスコ系もありだろうから、ジェファーソン・スターシップやジャーニー、スティーヴ・ミラーにサンタナといった連中も対象と言えるだろう。もう少し時代を遡れば当然のビーチ・ボーイズなどとなるのだろうが、リアルタイムで聴いたものと思い入れ度が違うものを選んだときにうまく説明ができるか心配だ。1970年代の音楽はいくら時間があっても語り尽くせないと思うが、1980年代でも少しあやしくなる。80年代ならTOTOにヴァン・ヘイレンにLAメタルがウェスト・コースト・サウンドの代表ということになるのだろうが、その辺も楽しくは語れるが、拘りのアーティストになってくるとやはり心もとない。

冷静に考えてみると、ウェスト・コースト・サウンドを語ることはさほど簡単なことではない気もする。シンプルに考えれば、イーグルスの周辺でまとめるべきなのだ。つまり好きな音と言われればワディ・ワクテルやアンドリュー・ゴールドあたりということになる。もちろんリトル・フィートもいるが、爽やかさという物差しで考えると真っ先に選から漏れそうな気もする。ライ・クーダーは少々埃っぽくも国土の広さを感じさせるボーダーレス感と、インターステートを流しているときのBGMとしては筆頭格となるわけで、何とか絡めたい気もしないではない。

一方でジャクソン・ブラウンも、ものによってはウェスト・コーストそのもののようなシンガー・ソングライターだけに、意識しないわけにはいかない。そう考えるとデヴィッド・リンドレーやマーク・ゴールデンバーグの顔もちらついてしまうので、話は簡単というわけにはいかない。ジャクソン・ブラウンだけを捉えても、曲によっては暗くなってしまうものも多いし、自省的な歌詞も多いわけで、簡単に選曲が決まるとは思えない。夕方から夜にかけてのチルアウトな空気感とベストマッチなものもあるだけに、うまくラインナップに加えたい気はする。ただその辺を意識すると、カーラ・ボノフやカーラの曲をいくつも取り上げたリンダ・ロンシュタットもチルアウトな空気感を纏っているので、選曲の流れを左右する重要アイテムになりそうだ。

結局のところ、自分が生きてきた時代を俯瞰する作業になるのだろうか?1970年代のアメリカを語るときにヴェトナム戦争を意識しないで事は完結しない。建国200年祭の前後に古き良き時代のアメリカの魅力をアピールしていた映像や音源も浴びてきているし、「ホテル・カリフォルニア」を持ち出さなくても、カリフォルニア幻想という考えは、当時最先端と思っていたロンドン・パンク/ニューウェーブの騒がしさとともに、アメリカという存在に対する疑問としてべったりと脳みそに貼り付いていた。80年代に突入して直ぐに発売された村上春樹の「風の歌を聴け」や「1973年のピンボール」も、全く同じ雰囲気を持った文章で驚かされた。

おそらく自分が選ぶ曲はどれもポップな3分芸術の極み的な曲になるだろう。ここしばらくは、ずっとそういった嗜好で選曲している。もちろんプログレッシヴ・ロックにハマり、重厚長大な曲をよしとする時期もあった。ブルースがない曲に魅力を感じない時期もあった。それでも結局戻ってくるところはポップな3分芸術なんだなと最近思うことが多い。結局忙しくしている日々がそうさせているのだろうと考えもするが、ラジオから流れてくる短めの曲に魅力を感じながら走るように暮らしているのだから、仕方がないという気もしている。

せいぜい加えるなら、学生時代が終わるギリギリまで、3シーズンはビーチサンダルで過ごしていた自分にとって、「フリー・ライド」や「ビッグ・ウェンズデー」のようなサーフィン映画も忘れられないカリフォルニアのアイコンだ。一方で多くの文豪やアーティストが愛したビッグ・サーについて触れると時間が足りなくなりそうなので、忘れることとしようか。さて、しばらくはカリフォルニアの青い空を夢見て暮らすこととしよう。おそらく湿度が5%ほど低く感じられることだろう。

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