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FM84.0MHz Radio City presents "Saramawashi.com -The Vinyl Paradise" 102:チャレンジャー特集

さらまわしどっとこむ -The Vinyl Paradise-
第102回(2023年9月8日(金)20時~
(再放送:9月10日(日)19時~)

清澄白河にあるカフェGINGER.TOKYOのオーナー高山聡(あきら)がお届けする音楽番組です。
全曲アナログ・レコードでお届けします。可能な限り7インチ盤で、しかもフルレングスでかけます。
サーフェスノイズにまみれた1時間、ぜひご一緒に。

この番組も今月いっぱいで終了ということですから、最終コーナーを曲がってしまったというか、ゴールが見えてきました。残る4回はかけそびれている曲や、今どうしてもかけておきたい曲を中心にご紹介します。今回が目新しいことに挑戦したチャレンジャーや他のアーティストとちょっと違うことをやった人たちを集めてご紹介します。次回はやはり大好きな70sでかけそびれた曲をご紹介する予定です。その次は21世紀に聴くべきアナログのかけそびれたものの特集、最後は我がアンセム的な曲をご紹介しておこうと思います。

1曲目
「Crackback」John Paul jones f/ Jimmy Page (1985)

前回7インチ盤でご紹介しましたレッド・ツェッペリンですが、イチバン好きなバンドではあります。この人たちはブルースをリメイクしてハードロックの代表的なバンドになったわけですが、その曲作りの中心的な存在は、ギターのジミー・ペイジなのは周知の事実でしょうが、前回7インチ盤で集中的に聴いたとき、意外にもベース・キーボードのジョン・ポール・ジョーンズが持つファンクネスもレッド・ツェッペリンの曲の重要な要素なのではないかということが気になりまして、前回収録後、あれこれ聴いてみました。やっぱり実力のある、しかも面白い連中が目新しい音楽を作り出すためにいろいろチャレンジしたんだなというのが現在の実感です。

ジョン・ポール・ジョーンズは、意外にもソロ・アルバムは少ないです。しかもアナログで聴けるものは限られてしまいます。唯一アナログ盤が普通に流通しているもの…と言っても滅茶苦茶レア盤ですが、1985年の映画「スクリーミング・フォー・ヘルプ」のサントラ盤です。この盤、2曲はジミー・ペイジをフィーチャーしております。他にはイエスのジョン・アンダーソンが参加した曲もあります。ドラムスはグラハム・ウォード、ポール・マッカートニーの「プレス・トゥ・プレイ」あたりで叩いている人です。他にはペンタングル系のジョン・レンボーンなど意外な人脈です。ここではジミー・ペイジをフィーチャーした曲をご紹介しました。

2曲目
「Good Times Bad Times (Live)」Led Zeppelin (2007)

ついでにもう少しツェッペリン聴いてしまいます。とにかくジョン・ボーナムが急に亡くなってしまって解散するわけですが、解散後ジミー・ペイジもロバート・プラントも自分のバンドを組んだり、一緒にやったりもするのですが、そこにジョン・ポール・ジョーンズの名前はありませんでした。ジョン・ポール・ジョーンズはツェッペリン解散後は思い切り活動のペースを落としてしまいますが、90年代に入って、ディアマンダ・ギャラスという女性と一緒にアルバムをつくったりして、その頃からまたライヴとかやりたくなったということで、まずはソロ・アルバムを作ろうと。そのためにはまずスタジオを建ててしまおうと。この辺が普通と違う気もしますけど、1999年に「ズーマ」というソロ・アルバムをリリースしますが、もうドラムン・ベースを通過して、ツェッペリンのテイストも残しつつ、思い切り進化しております。「ズーマ」を聴いたときには、もう再結成はないなと思われて寂しかったです。でも2000年代になってからも、デイヴ・グロ―ルとかと一緒にやったゼム・クルックト・ヴァルチャーズとか、面白いことをやっていたのはこの人の方なんですけどね。

レッド・ツェッペリンとしては、2007年に一夜限りの再結成が実現します。ジョン・ボーナムの息子ジェイソン・ボーナムのドラムスをフィーチャーした、「祭典の日」です。ここでは、ジミー・ペイジは昔の楽器を持ち出して、昔のスタイルでやっているんですけど、まあファンが求めていたのもそこだとは思うんです。でもジョン・ポール・ジョーンズは一人だけアクティブ回路の音でアップデ―トしてしまっております。ここでは、このライヴのオープニング部分をご紹介しましたが、ジョン・ポール・ジョーンズのベースの音が違うという部分を聴いてみてください。

3曲目
「Bring It On Home」Led Zeppelin (1969)

もう一曲、レッド・ツェッペリン関連をかけました。何はともあれ、大好きな曲です。ブルースをリメイクしてという部分では「ユー・シュック・ミー」のカヴァーでジェフ・ベックと被ってしまったりして、まだまだ常識の範囲内でしたが、セカンド・アルバムからは、ワン・アンド・オンリー感が噴出しております。中でもこの曲は、他のバンドじゃあり得ないなと思ったものです。

4曲目
「Black Betty」Ram Jam (1977)

チャレンジャーと言えば、最近ですと、ジャズとヒップホップを融合した現代ブルーノートの連中とかが筆頭ですが、もう少し古い70年代あたりのチャレンジャーをご紹介することにしました。どうしてもパンク/ニューウェーヴという大きな変革をもたらしたものもありますから、他が小さな変革に見えてしまいます。それでも70年代のプログレでも、ハードロックでも、シンガー・ソングライターがやったフォーキーなものでも、それまでの時代にはなかった音だったと思います。70年代はとりわけ新しい音楽がどんどん出てきた時代だったと思います。でもその多くが古いもののリメイクだったり、伝統的なものの現代的解釈だったりしたわけで、温故知新的に古いものを知っているからこそ面白いものも多く出てきました。パンク・ニューウェーヴやテクノといった変革とはまた違った、伝統的な音楽に対する造詣の深さがもの言う世界でもあったわけです。

パンク真っ盛りだった1977年、同じブルース・ベースでもかなり違ったテイストで売れたハードロック・バンド、ラム・ジャムがヒットしました。デビュー曲が狂暴なブルースマン、レッドベリーのカヴァー「ブラック・ベティ」でしたが、トーキング・ブルースと言ってもロバート・プラントのスタイルともまた違って独特のノリでした。ダンス・ミュージック的要素も内包しており、いまだにサンプラー・ネタとして使われます。ギターのリフだけ聴くと、ハードロックですけどね。

この人たち、ほぼ一発屋になってしまいましたが、セカンド・アルバムもいい出来ですからおススメですが、どういうわけが普通にブリティッシュ・ロックが好きな日本人からは敬遠されるようなところがあります。ある意味、音楽的な間口の広さを測る曲でもあるのかなと思います。

5曲目
「Give Me Back My Wig」Hound Dog Taylor (1976)
6曲目
「Dust My Broom」Hound Dog Taylor (1976)

私の場合、ブルース・ベースのロックが大好きなのですが、ブルースそのものも好きでして、「この番組ではブルースをかけそびれたな」と後悔しております。ブルースもロバート・ジョンソンとか、マディ・ウォーターズとか、それからジョニー・ウィンターなんかのロック好きもよく知っているポピュラーなブルースメンは他の番組でもかかることはあるかもしれません。でもエルモア・ジェームス直系のハウンド・ドッグ・テイラーなどはラジオでかかるとも思えないわけです。

ブルースの名門レーベル、アリゲーター・レコードの社長、ブルース・イグロアという人は、ハウンド・ドッグ・テイラーを世に紹介したくてアリゲーターを立ち上げました。尊敬してしまいます。ハウンド・ドッグ・テイラーは遅咲きでして、1975年、60歳の時に癌で亡くなっておりますが、アリゲーターからファースト・アルバム「ハウンド・ドッグ・テイラー・アンド・ザ・ハウスロッカーズ」がリリースされたのが1971年、56歳の時です。1960年代のブルース・リヴァイヴァルに乗れたわけでなし、幸福な人生とは縁の無い人でした。1973年にセカンド・アルバム「ナチュラル・ブギー」がリリースされたものの、1975年にライヴ盤リリース準備中に亡くなったということで、あとは未発表音源集しかありません。どの盤もギターやヴォーカルの音程とか結構あやしいものですが、そんなことどうでもよくなります。

ここでは2曲ご紹介しました。ハウンド・ドッグ・テイラーの代表曲とも言われる「ギヴ・ミー・バック・マイ・ウィグ」、フツーはカネ返せなんでしょうけど、彼の場合は「オレのカツラ返せ」なわけです。不遇な人生を笑い飛ばしているような勢いの粗削りさが魅力です。この曲には、高齢社会のモチベーションを考えさせられます。それから、もう一曲、エルモア・ジェイムスのカヴァー「ダスト・マイ・ブルーム」をご紹介しました。

7曲目
「Quicksilver」Art Blakey Quintet (1954)

ジャズのチャレンジャーは、マイルスのように常に変革を求めていたような凄い人もおります。私はジャズの聴き始めが遅いので、どうしても本から得た知識で開拓していきましたが、それでも、トラッド・ジャズからモダン・ジャズへの変革がいきなり起こったわけでも無かろうにと思ったときに、やはりチャレンジャーが集まっていたグループがありました。早い段階でここに気がついて、上手く順番に聴いていくことでモダン・ジャズの歴史を追体験することができましたから、感謝します。

アート・ブレイキー・クインテットの「ア・ナイト・アット・バードランド」は、夭逝の天才トランぺッター、クリフォード・ブラウンのキレのいい音が聴けるだけでも価値がありますが、ピアノのホレス・シルヴァーがアグレッシヴに煽りまくります。アート・ブレイキーも頑張っておりますが、「こんなに面白い音楽があったのか」といった印象でした。

8曲目
「St. James Infirmary」Count basie & Dizzy Gillespie (1977)

もう一曲、モダン・ジャズを。最近ディジー・ガレスピーを集中的に聴いておりまして、この人モダン・ジャズの創成期にチャーリー・パーカーと一緒にやっていて、ビ・バップの創始者だったわけですが、90年代まで活動しておりました。もの凄く真面目な人だったとかで、他のジャズメンと違ってカラダに悪いことをやらなかったようです。黒人公民権運動の闘士でもあって、大統領選挙に出馬しようとしたこともあるとか。もの凄いレベルでチャレンジャーです。

この人の晩年と言ったら失礼かもしれませんが、1977年の作品でカウント・ベイシーと一緒にやっている音源があります。ビッグ・バンドのリーダーがスモール・コンボでどんな演奏を聴かせるのかという興味から手にしたら、円熟と申しますか、ともいい演奏をしておりまして、元々パブロというレーベルの意外な組み合わせのシリーズの一枚なんです。

9曲目
「Passion, Grace & Fire」Al Di Meola (1982)

ジャズとロックを融合させたフュージョンの世界は、目新しい響きを求めていたチャレンジャーがいっぱいおります。中でも血の濃さを感じさせる音が魅力的なアル・ディ・メオラの地中海的な楽曲には好きなものが多かったです。アル・ディ・メオラも特集したかったギタリストですが、時間切れとなってしまいました。ここでは彼の大好きな「エレクトリック・ランデブー」という1982年のアルバムから、パコ・デ・ルシアをゲストに迎えた「パッション・グレイス・アンド・ファイヤー」をご紹介しました。

10曲目
「Na Starovia」Kazumi Watanabe (1987)

11曲目
「Small Wonder」Kazumi Watanabe (1988)

日本人のチャレンジャーと言えばこの人、渡辺香津美さんですが、もうジャズでもロックでもフュージョンでも括れない、毎度目新しい音楽を提示し続けてくれました。中でも、イエスやキング・クリムゾンでも活動したドラマーのビル・ブルフォードを迎えて作った「ザ・スパイス・オブ・ライフ」シリーズの2枚が大好きです。フュージョンかプログレか、ジャンルの垣根なんか関係ない音世界がよろしいかと思われます。

次回はかけそびれた70s特集です。お楽しみに。
番組へのご意見やお便りをください。
voice@fm840.jp

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