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デザイナーがボトルネック化しない体制を考える

一つ前の記事で、デザイナーの孤立とはボトルネック化ではないかと仮定して、以下のような仮想状況下でのデザイナーの状態を書いてみました。

【想定する状況】
1つのWebサービスを運営している事業会社で、インハウスデザイナーは1人
(提供サービスはスマホアプリからも利用できる)
【1つのWebサービスにおける、デザインの対象となる領域】
- Webサイト(コーポレートサイト、サービスのLP)
- Web App UI
- iOS App UI
- Android App UI
- その他製品パンフレットや営業プレゼン資料等

ボトルネック化を避けるに好ましい体制はどんなか、という点についても考えてみたいと思います。

盤石な体制と最低限の体制

デザイン対象の領域ごとに、必要な知識やマインドセットは異なります。
ので、上に挙げた5領域それぞれに最低1人、なるべくなら2人のデザイナーを配備したいところです。(調査系タイプと実装系タイプが両方居るのが好ましい。)
さらにそれらを統括するデザインマネージャーがいて... というように、6〜12人くらいの体制を組めれば心強いですね。

【図:5領域に対して6〜12人配備】

ここまで人を揃えることができれは、デザイナーのタスク過多は和らぎ、他職種との連携も円滑になり、デザイナーが組織内で孤立・ボトルネック化する事態は回避できるでしょう。

とは言え、10人を超えるような人数のデザイナーを1つのサービス開発に集めるのは大変です。5人でも結構キツい。
いくらか領域を横断しつつ、3〜4人程度でチームを成して、状況に応じて外部業者と連携とりつつ業務を回して行くのが、デザインワークを真っ当に進められる人数のギリギリのラインと考えています。

【図:3〜4人という最低限ライン】

なんにせよ、難しいのは「デザイナーを複数人集めること」です。
以前にデザイナーがわさわさ集まってくる求人条件という記事を書きましたが、どんな好条件であっても情報をデザイナーに届かせることすら難しい有様です。
組織の財政状況や経営層の意向などを鑑みて、デザインチームの構築には数年スパンでの計画と施策が必要でしょう。

チームづくりは長期的に進めていくとして、ある程度の形が整うまでの過渡期をどう凌ぐのか、という点を考えなくてはいけません。

対策① 外注に頼む → 難あり

手が足りない場合の、最も一般的な対策は「タスクを切り分けて外部に依頼する」なのですが、昨今ではこの方法はなかなか難しいです。

以前は、外部業者にUIデザインを頼む場合は「仕様を提示して、制作完了後に納品物を受けとる」という形がとられていました。
が、現在のサービス開発は継続的な仮説検証です。実装を進めつつ仕様が流動するため、従来行われていた外部業者との連携方法では成立しません。

そのため、外注業者にはデザインコンサルからビジュアル制作、UI実装サポートまで綿密かつ長期的に関わってもらうことになります... が、その予算を適切なタイミングで確保できるのか?長期的に付き合えるような相性いい外注先がそうそう見つかるか?と色々と難ありです。

対策 分業する → やはり難あり

組織内の、非デザイナーの協力を仰ぐ、という手段もあります。
職種の垣根を超えた共創関係を築けたらいいのですが...  これもなかなか思うようにいきません。

組織内で業務を分け合う場合、「各メンバーの出来ること」を基準に切り分けが行われがちです。そうなると、「制作はデザイナーにしか出来ないから、デザイナーは制作に注力する」という方向に流れやすいです。

現在では簡易に使えるUIデザインツールも増えて、制作作業のハードルは下がってきているのですが、それでも「制作は特殊スキル」という社会通念が根強いです。(高レベルなデザインをするなら、さすがに学習コストは大きいですし。)

「デザイナーが企画や仕様をリードすることの有効性」よりも、「制作作業はデザイナーにしかできないという社会通念」が強烈である以上、デザイナーが制作専任者の立場へと流れがちです。
結果、言われた通りに作るだけの制作屋さん、いわゆる社内下請け状態になってしまいます。
この状態に陥るとユーザ目線を保つのも難しくなり、何のために働いてるのかわからなくなってきたりします。

デザイナーの立ち位置を変える?

外部への依頼組織内での分業も難あり、とここまで書きましたが、ではどうすればいいのかと言うと、それでも外注と分業をうまくやってくしか無いよな、というのが正直なところです。

ただ、デザイナーが立ち位置をうまく見つけられれば、デザイナー自身がボトルネック化することは避けられるのはないかと考えています。
例えば、以下のような。

デザイナーは実業務を担当せず、社内デザイントレーナーとして動く。
デザインワークは各業務にアサインされたメンバー(非デザイナー)が外部業者と連携しつつ担当する。デザイナーはそれら担当者に対してトレーニングとサポートを行う。

このような形で、デザイナーはデザインワークそのものを行うよりも、組織全体のデザイン力を高める方向で動く、というのもアリなんじゃないかと。

ただこの形、非デザイナーである各担当者の相当な努力と気力を期待することになるので、これもまた容易ではないですね。

デザインチームをプロトタイピングする

結局のところ、いろいろ試してみるしかないよな、と思っています。
自分の割り振られたタスクに他者を巻き込んだり、社内勉強会やってみたりしつつ、「デザインチームのプロトタイピングをしているのだ」という心持ちで進めるとか。

どうせデザイナーという職種の性質上、真正面から業務に取り組んだらボトルネック化するのが当たり前なのだから、そこは開き直りつつ、ですね。

【最後に】実際のところ、ホントにボトルネックなのか

デザイナーはホントにボトルネックになりがちなのでしょうかね。
仮に、デザイナーが十分なスピードで業務をこなして、自分の手元でタスクを溜めることなく流していけたとしたら... その先の実装工程で手が足りず、結局業務は滞りますよね。

何かを形作るときの起点および推進力としてデザイナーが存在するせいで、ちょっとした想定外タスクが発生するだけでボトルネック感出るのかな、と思ってみたりもするわけです。

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