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トルコの気球で死にかける


アラサーに差し掛かりかけている年の夏、友達に誘われトルコ旅行へ。

最初の目的地はカッパドキア。
不思議な形をした岩だらけの、世界遺産になっている地方都市。

この旅行であまりにもこの場所が気に入ってしまった私は、半年後に再びカッパドキアへ行くことにした。

(魅力を語りたいのは山々だけど、それを書き始めてしまうと死にかけエピソードに辿りつかないので今回は割愛。)


前回のトルコ旅行は夏、2回目は冬だった。

気球に乗って上空から見た景色がどうしても忘れられなくて、前回の旅と同様に気球を予約。


早朝にホテルまでバンでピックアップしてもらい、気球乗り場まで乗せてもらう。

前回は気球が膨らむ様子を見ながら近くで待っていたのだが、今回は待合室のようなところへ案内された。

スタッフの方に話を聞いてみると、風が強くて飛べるか分からないので、一時待機とのこと。
冬場は風の影響で飛べない日も多く、先月は8回しか飛ばせなかったらしい。

4分の1弱の確率。なかなか厳しい。

せっかく来たからにはあの景色がまた絶対に見たい、とひたすら願いながら待っていたけど、結局キャンセルに。お昼から飛ばせそうであれば連絡してくれるとのことで、一旦解散。

午前中の予定がなくなったので、前回の旅行で仲良くなった現地のお友達のお店に行きATV (3輪バイクのようなもの) のツアーに連れて行ってもらう。

ガイドさん。私たちも同じように
ATVに乗って着いていく。
この景色の中を走り回れる最高なツアー。
これも前回に続き2回目。



ひととおり楽しんだあたりで、もしかしたら飛ばせるかもしれないと連絡が。
再びピックアップに来てもらい、また待合室で待機。

風の予報と睨めっこしているスタッフさん達。
ひたすら願って待つ私。

1時間ほど待った時に、いける!とのこと。

嬉しい。またあの素敵な景色が見れる!!

前回は未知のワクワクがいっぱいだった。
今回は知ってるからこその、また見られる嬉しさでいっぱい。

テンションが上がった私は、一緒に行っていた当時の彼氏 (後の夫、今となっては元夫。オーマイガー。) に、私の普段の行いのおかげやな〜!と言いながら気球に乗り込む。

飛べないかもしれないところからの決行が決まり、同じ気球に乗り合わせた人たちもみんな嬉しそう。

ゆっくり上昇し、カッパドキアの街を漂う。

このゆったりした時間と景色はやっぱり何にも変えがたいものだった。

THETAにて撮影。

壮大な景色に心が満たされた頃、

そろそろ着陸するはずが、その気配はなく浮かび続ける気球。

2回目ということもあり、一緒に乗り合わせた観光客がまだ景色を楽しんでいる時点で私は気がついてしまっていた。

風が強すぎて、着陸できずに流されている。

やがて気球のパイロットは無線で誰かと連絡を取り始めた。

彼の口調も、無線から聞こえる誰かの声も、どんどん強くなっていく。

トルコ語は聞き取れないけど、状況は非常によろしくないということはすぐに理解できた。

異変に気づき、ざわつく乗客。

必死に操縦しているパイロット。

低空飛行にはなってきているものの、なかなか下までは降りられない。

やっと地上が近くなってきた!と思ったら

バキバキバキバキ!!!!!!!

木におもいっきり激突。

気球はもちろん何にも覆われていないので、木の破片だらけになる私たち。

そしてまた上昇。どんどん遠くなっていく地面。

その頃には周りには本当に岩しかなく、あんなにたくさん飛んでいたはずの気球も私たちが乗ってる1機のみになっていた。

4分の1の確率で乗れたと思ったら、50分の1くらいの確率で取り残された。大当たり。

祈り始める東南アジアからの観光客。
半泣きのヨーロピアン。

私の他に日本人はあと2人乗っていて、片方は腰が抜けていてほぼ立てなくなっており、もう片方は私の横でえずいていた。

そしてトルコ人女性2人組。唯一のローカル。
彼女たちだけは事の重大さが1ミリもわかっておらず、ひたすら爆笑。終わってる。

「気球マジ詰んだ〜〜どうする〜〜とりあえずセルフィ〜〜!!」

(トルコ語やから分からんけど多分こんな感じ。)

もうこの状況はどうしようもなさすぎるので私は逆に冷静だった。
この事態を1人でどうにかしないといけない上に、今、唯一母国語が通じるであろう乗客の頭はイカれてしまってて、ああパイロットかわいそう... と、服にぶっ刺さった枝を取りながら思っていた。

流されること数十分。
ようやく、なんか着陸できそうちゃう?と思うところまで下降。

カッパドキアで気球が着陸する時は、下で待っていてくれるスタッフさん達とパイロットが息を合わせて、トラックの荷台部分に気球のカゴを着地させる。

前回は何の問題もなく穏やかにトラックの荷台に着地していて、こんなピンポイントに降りられるのか〜すごいなあ〜と思っていたのだが、今回はそのトラックすら見当たらない。

気球が流されるスピードが早すぎて、トラックも追いついて来れなくなっていた。

トラックも、誰の助けもない、でも下がり続ける気球。

どうするんやろ、と思っていたら、突然叫び出すパイロット。

しゃがんで!手すりにつかまって!!!
頭を下げて!!!!!!

言われるがままに全員で一斉にしゃがむ。カゴの中に隠れる形になるので外の景色は見えない。

ドンッッッッッ

打ち付けられたようなものすごい衝撃。

なんかいろんなところが痛い。
でも生きてるし血も出てないし無事。よかった。着陸できたんや。

そう思って立ち上がってみると、遠ざかっていく地面が見えた。お空、再びこんにちは。

これが物語としての展開やったら完璧やねんけどなあ。新喜劇やったらめちゃくちゃコケれる場面。

ということで、胴体着陸を試みたものの成功しなかった私たちの気球。
人生初、気球で床に打ち付けられ体験。

またお空を漂いながら、私の日頃の行いがいいからやで発言を思い出し、心の中でしれっと取り消す。

誰も言葉を発さない、緊迫しすぎていて発せる空気じゃなかった。私はずっと景色を見ていた。

そんな状況でも、綺麗やなと思えた。

ぼーっと眺めていると、明らかなスピード違反の速さでぶっ飛ばしているトラックと車数台を発見。

今度は追いついてくれそう。事故らん程度にエンジンぶん回してください、と願いながら車の動きを目で追いかける。

爆走トラック達が何とか先周りに成功し、気球はその場所めがけて急下降。

地上で全身を使って、ロープを必死に引っ張る男性達。でも気球のパワーが強すぎて、大人達が引きずり回されている。トラックの荷台には無理そう。

再び叫ぶパイロット。

頭を下げて!!!身を守って!!!!!!

ドーーーーーーーン

どっかを、どっかに強打した。
もうどこを何にぶつけたのかも分からない。

気球は半分横転しながらも、何人もの男性たちが羽交締め状態で押さえつけてくれ、本日2度目の胴体着立は成功。

全員生存。拍手喝采。この時ばかりはイカれ女2人組と同じテンションで、私もWhooooooo!!!

ちなみにこの時担当してくれていたパイロットさんはベテランの方だった。
周りのスタッフさんが、これは彼だからなんとか出来た、と話していた。

じゃあやっぱり私の日頃の行いは、めちゃくちゃ良いのかもしれない。

... わけもなく、完全に彼の技術と頑張りのおかげ。
私はパイロットさんに、相場の倍以上のチップを渡した。半分は楽しませてくれてありがとうの気持ち、もう半分は、生きて地上に帰してありがとうの気持ち。

気球があんなにサバイバル系乗り物になりうると知った、2回目のカッパドキア旅でした。


こんなエピソードを書いてしまったものの、これは私の備忘録であって、恐怖を煽るつもりは一切ないんです。(説得力のなさ)

行ってみたいと思う人には、本当に、死ぬまでに絶対あの景色は見てほしい。

この時は朝がキャンセルになってしまったのでお昼間の青空の中の飛行だったけど、本来なら飛行の開始時間は日の出と当時くらい。

1回目に行った時の、飛行開始の景色。
日の出後の早朝のカッパドキア。


もちろんお昼の青空の中の景色も素敵やったけど、私個人的には早朝の方が好きでした。

命懸け胴体着陸体験ツアーにならないためにも、私としては夏場の訪問がおすすめです。

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