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アレ、おいしかったです。キリンビールの地元づくり。

2016年のメモを起こす。
起こします。おい、これこれ、起きなさい。
……起きましたか。
おはようございます。


はじめに

2015年に発売されたキリン一番搾りの地元づくり、というのが話題を呼んだ。そうしてうれしがりのわたしは、国内9工場の飲み比べを行ったのである。


リンクを貼ったら年齢確認といわれる。
世知辛い時代になったものだ。しかも、認証をクリアすると2018年のラインナップになっておる。諸行無常であった。


さて、2016年当時、わたしのようなヒマ人はどこにでもいるだろうと思ったのだが、わたしの探し方が悪いのかgoogle先生に聞いても断片的に「○○づくり買いました」とか「うちのお店に○○づくりが入ったので、お店に来てね」という情報はあったのだけれども、これらの9種類についての個人のまとまった感想が当時は探せなかった。わたしとしては面白くも何ともないのである。みんな、ヒマちゃうのか。忙しいのか。

そしたらもう自分でやるか、ということであってね。

それは結局、……アレか。
わたしがヒマだということになるやないか。
しかし事実は事実として受け止めなければならぬ。


世間様の感想があればそれなりに「へー。そんな味なんか。なるほどな〜」と味を想像するのですけどね。自分が面白いと思える飲み比べ評が探せないわけです。

まあどこかでだれかがぐいぐい飲んで盛り上がってたのかもしれんけどね。結局ね、わたしもやってみたんですけどね、9種類。

北海道
仙台
取手
横浜
名古屋
滋賀
神戸
岡山
福岡

言うてみたらええ歳してうれしがりですわ。
何や言うてヒマやったしね。
あははん。


で。
それぞれおいしかったです。

そういう感想だとあんまり面白くないので、地元づくりの感想をメモしていたのであった。飲み屋か何かに居るときに隣のテーブルで独り言をぶつぶつ言ってる感じを思い浮かべていただくとちょっとはリアルですかね。


それはええけど、他に書くことないのかね、きみは。
…あ、無いのですか。
そらまあ正直でよろしい。


お好きな方で、おヒマな!?方はお付き合いいただければ嬉しく思います。



・北海道づくり

淡い色合い。
ホップの香りが前面に出ていて
全体的にかなりドライな印象。
のど越しと香りを楽しむような一品になっている。
苦みが少なく、軽くて香りが前に出てくるこの感じは
ケルシュのスタイルに似てもいる。
ここまでドライな方向に振ったのなら
小麦を使ったコクとキメの細かさの上乗せを狙っても
面白かったのではないかと感じた。
アロマづけのホップの強さが記憶に残る。
普段ビールを飲まない人なら
「こんなものもあるのか」と
新しい発見があるかも。
ホタテなら刺身よりはバター焼きを合わせるかなあ。
背伸びしてお化粧をした女の子、みたいな感じ。

・仙台づくり

軽めの口当たりで素直においしい。
控えめな苦みと、うま味を感じる。
副原料として使用しているササニシキは
酒造好適米ならぬ、ビール好適米なのか。
後味がきれいに切れる。日本のピルスナー。
日本においてビールといえば
このような味を思い浮かべる人が多いと思う。
ササニシキ由来の適度なキレと
ホップの残り香が
「もう一杯!」と言わせるのだ。
それぞれの原料が主張しすぎることなく
うまく調和している。のどを潤すビール。
お好みの笹かまに
ちょいとわさびでもつけていきましょう。
このビールは
ちゃきちゃきした愛想のいいお姉さん、
といった風情。
こういう人って、
一見したところ平々凡々に見えて
いつのまにかファンが増えてるでしょ。

・取手づくり

ぐっと膨らみをもった味わい。
十分なうま味を感じることができ、
後味にふくよかな余韻が残る。
飲み進めていくと麦の甘味が前に出てくる。
低めの温度に冷やしておいて
温度の上がり具合と炭酸の抜け具合で
表情の変化を楽しむような。
香り、飲み口、苦み、甘み、余韻。
いいバランスで
うま味がぎゅっと詰まっている。
これはね、むぎです、むぎ。
ヱビス好きの私にとって
もっともビールらしいバランス。
合わせるなら、豚肉、レンコンと唐辛子の炒めもの。
例えて言えば
安心して仕事を任せられる中堅君。
もちろん上司は濃いめのヱビスです。
・・・え? さっきも言うてたけど
サッポロやん、それ。

・横浜づくり

9工場のなかで最初に飲んだものがこれ。
一番搾りという枠をはみ出しているような
インパクトに驚いた。
ペールエールのような濃いめの色合いに、
しっかりしたコクがある。
苦味はあるが、色から予想したよりも抑えめ。
とっさに
ぶどうで言えばゲヴュルツトラミネール、
と思い浮かべた。
おとなしいシャルドネや、リースリングのなかに
ゲヴュルツがあれば目を引くように
黄金色のピルスナーだと思っていた缶から
ペールエールのような
琥珀色のビールが出てきたら驚く。
高めのアルコールが前に出ることなく
麦のコクに調和している。
合わせるならトンポーロー(豚の角煮)。
アルコール度数が6%と高いこともあり、
このイメージは
酸いも甘いも知っている妖艶なお姉様
なのです。
うーん、エキゾチック。

・名古屋づくり

色も味も濃い。
これもまた
普段の一番搾りからすると驚くような存在感。
横浜づくりと色は近いけれども
こちらの方が味は男性的。
飲んだ瞬間から怒り肩でガツンとくる感じ。
うま味のなかに苦味も感じられ飲みごたえ十分。
ぎゅっと詰まったエネルギッシュな味。
これに合わせたいのは
名古屋コーチンや味噌カツ。
ビール単体で飲むよりは
濃厚な味を持つものとの
相乗効果を楽しみたい。
おいしいもので会話にも花が咲きそう。
このビールの印象は
日に焼けた恰幅のいい頑固親父、というところ。
エネルギッシュ! イェーイ!

・滋賀づくり

バランスのとれたつくり。
麦の甘み、ホップの苦み、ほどよい余韻。
マイルドな印象。
一杯飲んでグラスを眺め
「もう一杯ください」と言ってしまう味だ。
仙台づくりとの明らかな違いはキレ。
滋賀づくりは副原料に米を使っていないので
キレというよりは
麦のいい香りの余韻が残る。
落ち着いた飲み口でうまみを感じさせて
もう一口、もう一口と飲んでしまう。
そういえば
「ただの酒であること」を
自らの命題としたのは
金沢の黒帯という日本酒であったが
それをふまえればこの滋賀づくりは
「ただのビール」である。
香りが突出しているわけでもない。
ぎゅっと詰まったボディというわけでもない。
シャープなキレというわけでもない。
でもこのバランスだからこそ
とてもおいしいのである。
赤こんにゃくを酢味噌でつまみながら飲みたい。
イメージはまさに
そつのない三方良しの近江商人である。

・神戸づくり

レモン色に近い見た目と華やかな香りが
「うわっ おしゃれ~」な雰囲気。
港町といっても横浜とかなり違う。
副原料に山田錦を使っており、
淡い色に爽やかな飲み口、
品のいいキレとともに
麦とは違う軽やかな余韻を加えている。
酒米は品種それぞれに特有の香味があって
山田錦は吟醸香が強めに出る。
ビールになると
酒米は副原料になり脇役になるが
麦がこの脇役をうまく演出している。
のどからはスッとキレていきながら
鼻に抜ける香りに華を添える。
薄味の素材に合わせたい。
タコのから揚げ、あるいは鱧のハンペンなど。
イメージは、ハイカラ色白のお嬢さん。
モネの「日傘の女」のような。

・岡山づくり

副原料として雄町を使用した一番搾り。
飲んだ瞬間にふわっと甘い香りが広がる。
これが雄町か。ビールに雄町が合うのだ。
神戸づくりの山田錦においても、
酒米とビールの相性の良さに
新しい発見があったのだが
雄町はボディのしっかりした個性なので
山田錦と方向性は違う。
岡山の方が神戸づくりより色が濃く、
ピルスナーらしい黄金色。
舌の感覚としてはスッとキレていくが
長めの余韻が心地よい。
ピルスナーとしての飲みやすさを維持した上で
雄町のインパクトをうまく乗せていると思った。
神戸づくりもそうだが
酒米を活かすために
麦の風味と喧嘩しない
設計にしているのだろう。
軽いのにふくよか、という不思議な感じ。
これは・・・、
ビールだけでいただきとうございます。
いや、骨せんべいやたたみいわしなんかどうだろう。
骨格のしっかりした細身のスポーツ青年のイメージ。

・福岡づくり

一言で言えば淡麗な飲み口。
色合いも明るめ。
雑味なく後味まできれいに味わえる。
取手はボディのしっかりした
男性的な味わい、
滋賀は穏やかな名脇役という
イメージに対し、
こちらは
澄みきった繊細な味で女性的。
香るホップのアロマもやさしく
後味の麦らしい余韻が控えめに続く。
しみじみ飲みたい時に
手元にこれがあればなあ、と思わせる。
辛子明太子や豚骨ラーメンとの相性を
予想していたからか
よりやさしい味に感じる。
小ぶりの天ぷらと合わせるのはいかがでしょう。
思い浮かべるのは
なで肩で細おもての美人さん。


*   *   *


とても楽しんで飲めました。
こういう、真剣に遊ぶ、という感じの商品化は、わくわくする。
また出るといいね。


そうそう、缶について。
8工場がアルミ缶であるのに、福岡づくりだけが「スチール缶」であったのは、地元の製鉄業との関係があるとかないとか。福岡づくりだけ「あ、まだ残ってる」と缶を傾けると、もう涸れているのだ。スチール缶の方がちょっと重かったのだった。


おしまい。


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