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ツーリングの断片 その10 寒空の下


鉛色の空とひんやりとした空気。
フェリーから苫小牧に降りたあの感じ。

横手に向かう日暮れの高速道路。
月夜でも星空でもなく、あれも曇天だった。

そう、
糸魚川に抜ける姫川沿いでの土砂降り。

天気予報の通じなかった富士五湖。


雲から見えた晴れ間。
どこを目指して走っていこう。

まだまだ。

一人で暗いうちから走り続けて。
明日も、明後日も。


うつむいて。
アスファルトを見つめて。
ため息をつくと、ヘルメットの内側が曇ってくる。
空を見上げると、首筋から冷気が。


一日走り続けて
一言もしゃべらないこともある。
コンビニでの買い物も宿のチェックインも
無言で済ませることができる。


日が暮れてから
縁石に腰掛けて
温かいコーヒーの缶を両手で包む。


バイクとしゃべるようになるのは
自然な流れのような気もする。