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イノベーションが自分の原点!横浜関内の歴史や利点を活かし、EUと日本の架け橋に

G Innovation Hub YOKOHAMA に入居して4年。日課の抹茶を点てながら、他の入居者と楽しく会話を交わすことも多い合同会社げんてんのラージンガーマルセルさん。アドバンテージオーストリア(在日オーストリア大使館商務部)勤務時代に培ったEU諸国とのネットワークを生かし、日本とEUの企業をつなぐ架け橋として事業を展開しています。今年はGで知り合った会社との共同事業体として横浜市の事業も受託。市内での起業を目指す外国人の支援にも取り組んでいます。そんなマルセルさんの思いとは―。


商務部勤務時代に感じた歯がゆさ。「より自由に」を求めて起業

私はオーストリア生まれで母親が日本人です。以前は在日オーストリア大使館商務部でオーストリアの企業が日本市場に参入するための戦略企画や支援業務に従事していました。オーストリアと日本の双方にネットワークが増えていく中で、いろんな日本企業とも出会いました。そのなかで事業が興味深い日本の企業が2社あり「この両社がつながったらなにかできそう」と感じるものがありましたが、当時の業務上、オーストリアと直接関係性がないため実現が難しく、歯がゆさを感じていて。2年間計画を練って、より自由に日本と海外企業を結びつけるためには「起業しかないな」と、2019年5月に「合同会社げんてん」を設立しました。例えばオランダは農業、オーストリアはものづくりといったように各国それぞれ強みが違います。それらを考慮して、現在はオーストリアだけでなく、EU各国の企業の日本市場参入をサポートしています。
社名の「げんてん」は漢字で書くと始まりを意味する「原点」ですが、イントネーションが変わったり、ニュアンスを間違えたりしたら「減点」にもなりますよね。ビジネスも同じで、適切に仕事をしなければ相手にとってマイナスにはたらいてしまいます。それを忘れずに意識しようという思いも込めました。起業後はきついこともありますが、学びも多くて充実しています。

Gに来たら「まず一服」。抹茶を点てることから始まる一日


抹茶がうまく点てられた日はなんとなく調子がいい??そんなことも図るきっかけに。

Gに入居する前は別のシェアオフィスにいましたが、コロナ流行の終わりが見えない中、個人の経営者たちは事務所コスト削減のために続々と退去してしまって。かわりに大企業のエンジニアリングチームなどが入ってきたものの、その仲間同士で固まってしまい、私たちとは会話が生まれませんでした。そんな中で見学したGは「まさにこれだな」という感じでしたね。入居者を積極的につなげるスタッフもいますし、コーヒーを飲んでくつろげる場所もあって、会話が生まれるイメージができました。実際スタッフが考えて交流の場を作っていますし、入居している人のアクションによってはまだまだポテンシャルを感じます。
私はGに来たらまず抹茶を点てるのが日課です。商務部に勤める以前の勤務先が愛知県にある抹茶製造会社で、ヨーロッパにある支店で抹茶を新しいフレーバーとして食品業界に売り込む仕事していました。新しいものを、それを知らない国に提供する難しさや挑戦はとてもやりがいがありましたね。5年ほどその仕事をしていたので、「まず一服」とお茶を飲むことが一日の始まりの習慣になりました。あまりうまく点てられなかったらその日の調子にも影響する気がします。ちなみにその仕事を辞めてすぐに抹茶スイーツがブレイクしたんです。成果を味わえなかったのは残念でした。

G入居者とのつながりから横浜市の外国人起業活動促進事業を受託


オンライン会議をするマルセルさん、専用ブースで雑音なく会議に集中できる

今年からやりたいことの一つに「パートナーシップ」があります。以前Gにも入居していた株式会社An-Nahalの品川優さんと一緒に共同事業体「Global Entry Point Yokohama」名義で横浜市の外国人起業活動促進事業「スタートアップビザ」を受託しました。これまで起業を志す外国人が「経営・管理」のための在留資格認定を受けるには、予め拠点や雇用、資金などの要件を整えておく必要がありました。この事業では1年以内に横浜市内で起業したい外国人が審査を受けることで、最長1年間、起業準備活動のための在留資格が認められます。品川さんとは地域のコミュニティなどでも接点があり、話をするうちに「一緒にやってみよう」ということになりました。
品川さんが目指すのはさまざまな人材が協働する社会や組織づくり。日本での就職を希望する留学生と日本企業の間に入ってコンサルをしていたり、起業という道があることを伝える活動をしていたりと、大学に強いネットワークを持っています。一方、私は海外にいる外国人起業家を日本に連れてくる役割です。横浜は歴史ある港町で海外から新しいものが入ってきてイノベーションが起きた地なので、起業家に向けたストーリーとしては良いですよね。ほかにも横浜市がやっているIOTのプラットフォームやライフサイエンスへの取り組みなども魅力的です。日産や都筑区に拠点を構えたドイツのBoschをはじめ、オートモーティブやモビリティ系の企業も多い。そういったものを見える化して発信すれば、その分野の起業家には説得力があると思います。「スタートアップビザ」を通して案件を受けて伴走し、志の高い外国人の在留資格認定につなげていきたいです。

イノベーションには「若さと元気」。次の時代を担う若い起業家を生みたい


自身のブースで仕事をするマルセルさん、壁には大きな絵画が飾られている

講義などで大学に足を運ぶこともありますが、以前オーストリアの大学に行ったら20代の子が私に起業家としての思いを伝えてきたことがありました。「こんなに若い子がすごい情熱を持っているのに、30代後半で落ち着いている自分は何をやっているのだろう、もう一回チャレンジしないと」と刺激になりました。日本の大学で起業を体験するワークショップをしたこともあります。起業という道があることや自分たちにも起業する際に生かせるネットワークがあることに気付いてほしくて、「気付き」が起きるように意識して話をしています。そして次の時代を作る若い起業家を生みたいです。私のテーマは「イノベーション」ですが、それが起こるところには若さと元気があります。若い起業家が生まれないと日本も希望がもてないと思いますね。
仕事以外でもやりたいことがたくさんあって。7歳の娘がいるので今はなかなか行けませんが、すごく居酒屋に行きたいです(笑)いつか関内の居酒屋やパブに外国人起業家が集まる場を作ってみたいと思っています。きっかけがあって、「それいいね」と人が集まるのがまちづくりだと思うので、自分がそのきっかけを作りたいですね。
1人1人が必ず各世代に友達をもつ努力をするのも面白いと思っています。私は娘が7歳なのでその友達と関わりがあります。30代以降はスタートアップで関わることがありますが、10代20代の友達はいないし、友達になる機会もないんです。各世代に友達がいると互いの理解が深まるし、互いの視点も分かるので良いと思いますね。

関内でおすすめのお店…「セルテ」
大好きなラーメン店が軒を連ねる「ラーメン横丁」もあるし、自分のコンセプトと合致した「あおば整骨院」もある。ラーメンを食べに行く時に、「最近腰が…」と思ったら整骨院にも寄れるなんて!欲しいものが全て揃う、すごく不思議なエコシステム(笑)


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