「育児の大変さ」は理解されない。親になって思うこと。

先週、子供が産まれました。自分にとって初めて授かった子供なので、とても可愛いです。寝顔を見ているだけで見飽きないし、気持ちが癒されます。仕事と異なる、出会ったことが無い喜びや興奮です。夜泣きをしたら一緒に起きて、嫁さんがミルクを作っている間に、自分が抱き抱えます。昨日は朝までに、夜の11時、午前2時、午前5時、と丁度3時間ごとでした。赤ちゃん用のお風呂では、自分が頭を持ってプカプカ浮かせながら、嫁さんが子供の身体に石鹸を付けて洗い流します。

育児は社会的な課題として認知されやすく、ニュースでもよく流れます。ワンオペ育児や夫が理解せず育児を手伝ってくれない、シングルマザーで大変、といった所が多いかもしれません。自分ごととして当てはまる方やこれから子供が産まれる方や結婚したカップルなど、そういった情報を身近と感じ、ニュースなどにも敏感な方が多数いらっしゃるかと思います。番組企画などでも育児は社会課題としてよく取り上げられます。実際にお子さんを育てられた育児経験者の方が出演していることもよくあります。

育児をされている方に対して、それをしていない方が批判をするのはとても困難です。というか不可能という方が正確に思えます。子育ては絶対的に良いこと、善であり、誰にも批判されることでは無い、という認識は社会的にも個人的にもコンセンサスが取れている状態です。そこに参画していない方がどんなに偉い仕事をしていても、どんなにお金を稼いでいても、育児をしている方に対して批判はできないはずです。

メディアでよく目にする育児に関する話は感情的な話が多く、中々議論をすることさえ困難なことが多いと感じます。育児現場は非常に変動性が高く、常に不安定な状態です。赤ちゃんの予測できない行動や言外の領域でオペレーションをしなければいけません。「夜泣き」という言葉一つに対して、実際に育児を経験された方と経験されていない方で想起される概念は全く異なると思います。経験が無いので想像でしか無いですが、恐らく介護も近いものだと想像します。「介護」という言葉に対し、壮絶な思考を想起される方もいらっしゃると思います。

リソースだけの話であれば、経済的・人的・組織的資本を中心に、企業や政府を始めとした社会的な支援の話や世帯収入の話に終始されますが、あくまで間接的な効果だと感じます。実の子供の世話となると、社会的なサポートを受けることに対し、心理的なハードルの高さもあります。

育児の不確定要素、ボラティリティの高さゆえに、ワンオペの限界を感じました。それを真の意味で「理解する」という状態になるには、メディアで情報を得たり、育児を経験した方の体験談を聞いても不可能です。実際の経営現場と同じように、育児現場を経験することでしか、「理解する」ことはできません。

家庭内で「仕事」と「育児」にピシャリと役割分担している夫婦では相互の共通認識を得ることは難しく、建設的な会話よりも感情論に発展します。むしろ状況の改善や解決よりも感情共有が目的となっているのでは無いかと推測します。同様に、メディアはその状況を煽り、視聴者の感情を扇動しているようにも思います。社会課題として捉え、本質的な解決へと導くのであれば、実際に経験をした方が育児ユーザー視点でソリューションを叩き出すのが精確です。

その一つは育児環境ですが、子供が産まれることを認識するのが最大でも十月十日前であり、1人目の子供であれば、わからない状態に向けて最適な環境を整えるということは困難です。そうなるとベビー用品などの物や実家の親との約束くらいであれば、事前に準備できますが、本当に最適な環境整備は出産後になります。何度も言いますが、変動性の高い育児現場でオペレーションをこなしながら、適切な環境を整備して行くしかありません。

最大の環境の違い、最大の効果としては、今後も子供と家族として暮らす方がサポートしてくれるかどうかです。育児を中心にされている方+家族として暮らす方が子育てのために自身の日常を変化させ、子育てメイン者に対して、支援をできるように自身を変化させられるかどうか、同時に子育てを担う中心者はその方に対して変化を建設的に促せるかどうか、が最大の焦点です。

今度は、子育てを頑張っていてもお金を稼いだことがほとんど無ければ、仕事をしている方である支援候補者に対して、批判をすることが難しくなります。育児をしたことがある人としたこと無い人で「夜泣き」という言葉の概念が全く異なるのと同じで、「仕事をする」という言葉の概念が全く異なって来ます。このケースの場合、子供が産まれた後に子育て環境を整備する(=最大の支援者である家族の行動を変化させる)のが上手な方は、その支援者と同じような仕事経験をこなして来た方、ということになります。

「理解してから理解される」。将来的には育児支援に向けた従来の政策や企業などの社会的な支援が「家族内の相互理解促進」といった、よりパーソナルな方向性に。そしてその前に、当事者である育児メイン者とその最も近いご家族1名が、お互いに異文化交流するつもりで接近し、お互いの未知(片方にとっては既知だけど)の領域に踏み込む体験が育児生産性を最大化させるはずです。

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