睡眠を巡る攻防、そしてその先にあった絶景(6)
絶景
「お前ならできる」を何度も聞いて、家で見ている長男がこんなにも褒められる場所があったのかと、しばしぼーっとしてしまった。
塾も学校もそうだが親に連絡が来る時は大抵碌でもないことがあった時で、良い話はわざわざ親に連絡がこない。私も長男に質問する時は、今日怒られた?今日問題になるようなこと無かったよね?とよからぬ事があった前提で訊いてしまいがちだ。
A先生:ドラくんのことは、クラスの女子たちも本当に大切に思ってます。この間彼女たちが言ってたんですけど、ドラが辞めるなんてことを想像しただけで、もう無理無理無理無理って言ってました。
最近、引っ越しや諸事情で仲の良かったクラスメートが何人か退塾していた。
B先生:ほんと、ここぞって所で授業動かしますからね。
ここまで言われると、その場面を見てみたいし、何より、クラスメートから大切に思ってもらえていると知れたことが、この日塾を訪れて何より良かったと思えたことだった。他の生徒さんが授業に長男の存在が欠かせないと言ってくれているわけだ。今思い出しても嬉しさがこみ上げてくる。
A先生:発言も素晴らしいですよ。ただ他の子がそれに付いて来れないこともありますけどね。
塾でもそうなることがあるというのは意外だったけれど、塾の先生がわかってくださって、長男も伝わる相手に出会えて可愛がってもらえていることは何よりだった。
A先生:ドラくんは本当に面白い子ですよ。ドラ、お前さ、家でも塾のお前でいなさい。
長男:はい、わかりました。
長男は少しはにかんでいたと思う。先生も塾と家庭では少し大変さが違うことはこの日感じたようだった。
B先生:すごいやつって、やっぱりなんか大変な所もあるってことなんですかね?そういやお前、通知表真ん中って言ってたよな?
私:真ん中は盛りすぎです。どちらかというと右寄りです・・。
A先生&B先生:そりゃ〇〇中は無理だな~あそこ内申100点あるからな~。ペーパーテストなら勝負できたのに。
これを言いながらも先生達は笑顔だった。私もちょっとほっとした。通知表のことは既にご存知だったようだ。
B先生:しかしお前、学校で何やってんだ?
ギクっとした。しかし意外にも?見抜かれていたようだ。
A先生:お前「授業つまんねー」とか言ってんだろ?
長男少しニヤリとする。
A先生:お前それダメだよ。俺もそうだったけど、ずっと疑問にばっかり思って、なんで先生はここ突っ込まないんだろうとか思ってたけど、でも態度に出したりしたらあかんで。
B先生:俺ももっとこうしたらいいのにとか思うことばっかりだったけど、まぁお前の知的好奇心を満たそうと思ったら難しいだろうな・・。
私:授業に限らず、態度に出てしまって社会的制裁を受けたこともありました・・。知的好奇心のことも思うと、この子は受験したほうが良いだろうというのを親も思っています。
この日は時間も忘れるくらい沢山お話させていただいた。先生たちも直接親と会えたことで状況がよく分ったし、これからも時々こうやって話しましょうと言ってくださった。
帰り際、A先生から「ドラ、ほら、言うんだろ?」と促され、長男は「あっ」と思い出したように私の方を向いて頭を下げ、「今日は来てくれてありがとうございました」と言った。私も長男と先生に頭を下げて、この日は来て本当に良かったと思ったのだった。塾に来るとパワーが出てくる訳がわかったような気がした。
まだ家庭学習は集中力にムラがあるし、朝も楽ではないけれど、長男が今の塾に通い続けられるようにしてやりたいと思った。長男も、この日を境に、自転車で送り迎えをしてくれる父親に「ありがとうございます」と言ってみたり、食べ終わったお弁当を出すときに「ごちそうさまでした」と言うようになった。まだ恥ずかしそうではある。
長男の変化によって、家族の長男に対する口調も以前より柔らかくなった気がしている。塾の先生から、「あと1年、塾での授業を楽しめ!」と言われていた。親も同じように、まだまだボラティリティの高い生活は続きそうであるものの、できるだけ楽しんでいきたいと思っている。