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誰に似たぁ?(6)

私の世間知らずの話をもう少し。

大学の卒業を控え、就職のためにボストンキャリアフォーラムというものに参加した。就職・採用を目的に日本企業と、主に米国に留学している日本人学生が面接をする場所だった。

前日に宿泊したホテルは米国全土から来た日本人の学生で溢れていた。一階のロビーのようなスペースに椅子と机が沢山あったのだが、夜に通りかかると大勢の日本人が集まって何やら一生懸命記入していた。

とても不安になったのを覚えている。自分が何かやり忘れたのではないかと落ち着かなかった。彼らが何をやっていたのかすぐには分からなかったのだが、みんな手書きで何か書いていた。机には日本語の就職ハウツー本のようなものも積まれていて、翌日の面接に向けて何かしているのだろうという事だけはわかった。

履歴書は手書き!?

それが何であったかは翌日のフォーラムで分かった。みんな履歴書や志望動機、エントリーシート的なものを、手書きで書いてきていた。これに私は相当ショックを受けた。なぜタイピングしない??何社も受けるのに全て手書き?途中で間違えたら黒ペンだし一から書き直すことを繰り返すのか?

しかし、A4の紙に写真も含めて印刷した状態の書類を手にしていたのは私だけだったのではないかと思う。結果から言うと、面接に際して手書きでないことを指摘されることはなかった。

アメリカにいたから署名以外はタイピングするのが普通だと思っていたが、他の日本人学生が手書きを選択する中では少し浮いていたのだろう。私もハウツー本を読んでいれば手書きにしていたのかもしれないが、そういった本を読むという発想がなかった。一般的にどういう手順を踏むかということに関心が向かない傾向があるのか、結婚であればゼクシーという雑誌が必読書であるように聞いたとしても、あまり関心がなかった。そのせいか我が家は夫がゼクシーを1冊購入した。

社会人になっても周囲との認識のずれは多少はあった。入社1年目の時にはゴールデンウィークはゴールデンな一週間なのだから丸々一週間会社は休暇になるのだと思っていた。そんなはずがない事はカレンダーを見たら分かるでしょうと言われて、そう言われても我が父の勤めていた会社ではカレンダーに関係なくGWは丸々1週間休みだったのだ。年末の休暇のスタート日も業種によって違うというのを社会人になって初めて知った。

今も夫や長男と一緒にいると、自分は知らないことだらけだなと思ったりする。私が驚くたび、夫からは「日々発見に溢れてていいね」と言われる。長男に、「お母さんがもっと色々知ってて一緒に知的な会話ができると本当は良いのだけど」とこぼすと、「今からだってお母さん勉強したらいいんじゃない?」と、不思議そうな顔で言われる。おっしゃる通りである。

私が本当にしっかり勉強したと思えるのは大学生になってからで、高校時代は付け焼刃でしかなかったと思う。日本は学校で英語を習っても使えるようにならないと指摘されることがあるが、私の場合は理科や社会だって生活にあまり応用できていない。

そう思うと、夫と長男はやっぱり日常への応用力が高いところは似ていて、私と長男は似ていないような気がしてしまうが、私の地味に浮きがちな所は長男の気持ちを理解するのには役立っているのかもしれないと思う。