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くたくたに疲れ果てようとも(3)

塾ではできて家ではできない

長男が宿題を大変そうにやっているのに矛盾する話ではあるが、塾の先生と長男は宿題の量については心からの問題とは思っていない。むしろ先生からすると長男が塾にいる時と同じ集中力でやったならやれるはずと思うらしく、逆になぜ家ではやれないのかと言われている。長男もやりたいという気持ちだけは強く持っている。それならそれでも良いだろう、長男がやりさえするのなら。

しかし長男は塾では褒められ、家庭学習では叱られている。先生も上げて下げてを繰り返していて、見ているだけで私は少々疲れるのだが、この状況でも長男は塾に行けばパワー炸裂、その勢いで先生と意気投合し、「次こそやれる!」という意気込みで大量の宿題と共に帰宅してくる。

長男も長男で「俺やれます!」と宣言し、必ずしも先生が一方的に宿題の量を決めている訳ではないと言うのだからどうにもならない。むしろ先生がそれは無理だと言って減らすことがあったり、それなのに実際の達成内容・ペースとしては、先輩の3割程度と言われている。


塾の先生より

実際、長男は塾からの帰宅直後はやる気満々だ。このままの勢いでやらせたら楽かもしれないと思う所、身体や睡眠を犠牲にしてはいけないと、寝る時間だけは削らないことにしている。それに、夜がよくても朝が起きられなくなる。

睡眠時間を確保した上で、朝すっきり起きて、宣言した通りやってくれるなら今頃平和な毎日が送れていたのだろうと思う。

しかしなぜこうも落差があって、塾でできて家でできないのかと考える時、それは先生の存在が長男にとって相当に大きいからなのだろうと思っている。

思えばわが家が現在の塾に長男を通わせている最たる理由は、長男が先生達を尊敬していて、塾が楽しくてたまらないからなのだ。

本当に驚いたことがあって、「試験本番はお父さんとお母さんのどっちに来てほしい?道に迷いたくなければお父さんだけど。」と訊くと、「あっちに来てほしい」と言う。「どっちだ?」と訊くと、「塾の先生達」と答えた。先生達が来てくれたら俄然やる気になるそうで、来てくれなかったらズンズン沈むと言っていた。これは大変なことである。

しかし、これがまさに塾でできて家でできない理由なのではないかと思う。プラスに捉えればこれは成長なのかもしれない。もう親ではなくて、尊敬する人を見つけたわけだ。しかしながら、毎年先生達は、その年に最も努力して頑張った子の受験に付き添うらしく、よって、努力が足りないと言われ続けている長男には、残念だけど先生が本番に来てくれる可能性は低いと思っておいたほうが良いよとは伝えておいた。

でもなと思うのは、塾でオンなのだから、家でオフにならなくていつ休むのだろう。大人でも週休2日なのに、長男は土日も勉強している。あまりにも多くを求めすぎているのではないかと思うこともあるのだった。

私 :休み無く勉強するってまず無理だよね?
夫 :じゃあ、おかーは、休み無く子育てしろって言われたら無理ですって言う?
私 :言うわ
夫 :あーっ!言ったな!(笑)

親がどんなに宿題が多くて大変だと思おうとも、長男ができると決めたことなら口出しをするつもりはないのだ。でも家庭学習になると、なんだかんだ言っておやつ休憩も取るし、本も読んでみたり、ちょっと実験してみたり、文房具を分解してみたりということが発生する。

こういったことも想定した上で長男には課題設定してほしいと伝えている。長男も時には抗いたくとも抗えない空気を感じてやります宣言することもあるらしいのだが、そうであったとしてもちゃんと調整しないと、先生は恐らく塾と同じペースでやる前提で宿題を出すような気がするのだ。終わったらすぐ次をやらないと終わらないような、息継ぎの仕方が本当にわからないことも多い。

私はこのわからな状態がストレスに感じてしまい、先生には本当はお見せする予定はなかったのだが、家庭で試した宿題の把握方法や時間管理のやり方をお見せして、アドバイスをと相談したこともあった。これも、それまで何度もダメだしを受ける中で、もがいてきたものの、夫も私も情けないほどに対応方法がわからなかったからなのだ。

親だって一応働いていて課題発見やら問題解決して仕事をしているわけだ。ここまでの”わからない状態”は仕事でもなかなか経験しない。

しかし、回答としては、長男はわかっているはずなので、あとは本人が本気でやるだけだと言われる期間が続いたように思っている。煙に巻かれたような状態ではあったが、塾としても親に手取り足取り面倒をみさせるようなことは想定していなくて、コミットメントや後押しがあれば十分と考えているようなのだ。

それならそれで任せておいても良かったのかもしれないが、ダメだしの報告も多かった中では私の方が気に病んでしまったのだと思う。対応したくとも毎回後手に回っている状況で、指摘が次に活かせたなら良かったのだが、それもできなかった。

親に何か出来ることがあるとすれば、想定された時間通りに長男が「終わった」と報告してくるよう促すことだった。そのためには予め課題にかかる時間を把握しなくてはいけない。もともと各課題の所要時間がわからないこともストレスだった。

想定時間についてもなかなかストレートな回答は無く、先生からは「塾でやればもっと早く終わるはず」と言われ、それに対し「いや、そんなことない」と長男が言う不毛なやりとりに挟まれて、どっちが正しいのかすらわからなかった。これを永遠に繰り返すストレスに耐えられず、また時間内にやり切る意識も必要と思い、私の方から時間で決着を付けたいと申し出たのだった。

晴れて先生からも合意が得られ、今時間である程度進捗を管理している。もしそれで未達となれば、それは長男のやり方が悪いか、宿題が多すぎたかのどちらかが原因になる。その話し合いは先生と長男で直接やってもらうのが1番スムーズに思えた。

(4)につづく