第一次予備校時代3

和解

11月の寒い日に起きた事件は壮絶な日でした。私やT先生も巻き込んだ戦いもようやく落ち着きを見せてきました。

翌週の12月のある日です。その日は、国語のT先生の授業があります。丁度クラス分けテストが導入された月でした。基礎クラスと発展クラスを英語科と併合して運用し始めたのです。

私とYは、国語は相変わらず発展クラスでした。T先生が教室に入ってきた時です。

Y「ちょっと!ついてきて!。」

(あー、これは面倒やなあ。)

T先生「Yさん。こないだ大変だったね。あれから落ち着いたかな。」

Y「先生本当にすいませんでした。彼氏も短気なのでご迷惑かけました。」

T先生「いや、もういいよ。J君と会わせない方がいいと思うよ。気をつけて。」

「智聖くん。君もとんだとばっちりだったな。あのままだと胸ぐらは掴まれたぞ。」

(バイト先のYさんがカラオケでしてきた間合い(やみどうこく)よりかは、遅かったけど。)

これで、Yの名目も晴らしたようでした。ただ、彼氏の存在がいる以上、しばらくは一緒に帰られないほうがいいな。と判断していた所でした。案の定、空気の読めないYはその判断を変えさせてくれません。

私「あ、今日から俺一人で帰るから、彼氏と駅前で待ち合わせてもいいよ。」

Y「その事なんだけど、今日バイト終わったら、駅前に来るって。」

「智聖と話したいらしいよ。」

(おい、まだ話有るのかよ。俺はJじゃねえよ笑)

Y「とりあえず謝りたいそうよ。一度話してあげてよ。」

展開が相変わらず急過ぎるので、正直まっすぐ家に帰りたかったのですが、何度も説得してくるので、仕方なく会うことにしました。

授業終了後、確か20時前です。前回会ったバス停側のある出口までYと向かいました。すると、バイトの制服かよくわかりませんが、作業服姿でタバコを吸いながら待ち合わせしている彼氏さんがいました。

Y「お待たせ~。連れてきたよ。ちゃんと謝ってよね。」

彼氏は、Tさんと言う名前であると紹介を受けました。

Tさん「どうも。智聖君だね。こないだはごめんなさい。ご迷惑かけました。」

私「多分、Jと同じ学ランでしたけど、高校は違うんですよ。勘違いされたのはわかりましたので、大丈夫です。」

「今日は、詫びの代わりに飯を奢るから、うちの店でディナーはいかがかな。」

私「あー、大丈夫です。お構いなく。」

(面倒な予感がするから、適当な事言って帰ろう。)

Y「じゃ、行こうか!、彼の店美味しいんだよ。」

(おい、マジで勝手に決めんなよ笑)

寒い北風が吹く中、彼氏さんの軽自動車に乗せられてそのまま隣駅のイタリアンのお店まで連れて行かれました。

イタリアンの和睦

現在は、あちこちで創作料理が展開されてますが、90年代の後半は、まだまだ個人店が多く残っていました。チェーン店のようなレンジでチンして出すピザとかではなく、シェフがイタリアで修行したような美味しい店が数多く存在しています。

Tさん「ここなんだけど、今修行させてもらっててね。」

「バイトは終わったけど、今プライベートで来てるから好きなもの頼んでいいよ。」

オシャレな音楽が流れていて、内装もイタリアぽいところでした。馴染客も来ているようで、賑やかなお店でした。

Y「ねえ、このピザ美味しかったから頼んでみ。」

私「わかった。Tさんこちらでお願いします。」

数分後、Tさんがオーナーシェフと一緒に持ってきてくれました。某サイゼ○ヤ(ファンではありますが)と違って厚みのある本格的な生地を使っていました。

舌鼓を打つ楽しいディナーが始まりました。我々は、制服を着ているので本来は飲酒なんぞいけませんが、オーナーシェフがサービスで、シャンディガフを装ってくれたのは懐かしい思い出です。

Tさん「こないだは、ホントにすまない。」

私「いえ、もう大丈夫です。男子校ですので、喧嘩とか慣れてますから。」

Y「実は、智聖に彼ビビってたみたいだよ。」

(え、嘘だろ。ビビるわけないでしょう。)

話を聞くと、Yは、Jの外見をガリ勉+真面目そうな学ラン+小柄。と事前に情報をレクチャーしてたそうです。ただ、当時の私は、うちの高校だと割りと普通だったのですが、短髪の茶髪+少しガングロ+セミ短ラン+デカいディッキーズの黒チノパンで、迫力がある様子でした。今と違いガタイも良かったのです。

※セミ短ランとは、標準基準の学生服の着丈を少し詰めたバランスの良い長さを言う。当時の流行り。
※ディッキーズのチノパン。現在、リバイバル中している西海岸ファッション御用達のズボン。学生服の下で履くのが流行り。

Tさんは、160㌢の普通体型。J君は、163の細身。私は、177のスポーツ体型。ですので、どうみても赤の他人なんですが、わざと彼女であるYがカモフラージュするためにニセの設定をしたかもしれないと勘ぐられたようでした。

Tさん「正直、智聖君みて驚いたよ。凄い悪そうなやつだし、聞いてた情報と全然違うじゃないか(ドラゴンボールに出てくる17号の有名なセリフと重なりました。)ってね。」

※人造人間17号が人造人間18号と戦う超ベジータを見て言ったセリフが「ドクター・ゲロから聞いてたデータと全然違うじゃないか。」「ベジータか。面白いやつだ。」を引用です。

少し占いのお話をしますが、九星気学で言う九紫火星の私とYは、お喋りの星でもあります。Tさんは、3つ上ですので三碧木星。そそっかしくせっかち。うっかり八兵衛です。
つまりは、無駄にお喋りのYがそそっかしいTさんをそそのかしたってことですね。

けど、自分と違って身長も高いし、何よりもYと一緒に歩いているのを見て嫉妬してしまったそうでした。まぁ、学ランとセーラー服っていう組み合わせなので、カップルに見られやすいのでしょう。

私「いやぁ、私はヤンキーとかではなくて、うちの高校だとこれは普通なんですよねぇ。」

「ただ、予備校で仲良くなった人と比べると、着こなしや振る舞いも違うかもしれません。」

Tさん「そう。聞いたよ。生徒会副会長なんだってね。」

当時は、生徒会も引退して1生徒に戻っていました。振り返ると、アルバイト始める高1の春から茶髪にしたり、学ランの着こなしをクラスメイトと合わせたり、腰パンしたり。外から見るとはっちゃけてかもしれません。ガングロも、ギャル男とかではなく、色白コンプレックスを克服したいからでした。日焼けサロンも今では懐かしいところです。

私「いやぁ、見た目はJの方が生徒会ぽいですよ笑」

YとTさんも笑い出しました。

Y「それでね、Jについては彼英語の授業で被らなくなったし、暫く会うことないんだよ。」

「もうデートとかしないし、Tとずっと一緒にいるから!」

(人違い事件の裏で、俺は喧嘩別れしそうなカップルのキューピットってことか・・・。)

Tさん「けど、Jってやつは、かなりのワルなんだろ。それで○○大学付属通ってて、家も金持ち。凄いよな。」

場の空気を読んだオーナーシェフが、スパゲッティを追加してきてくれました。シャンディガフのお代わりも。お肉とトマトのいい匂いが漂っています。

私「私は、殆ど口聞いたことが無いのでよく知りませんが、色々と悪い噂は聞きませんね。」

「秋頃にも、同じクラスのB君を格闘技で締め上げたようなので、あんまり関わりたくありませんね。」

「彼の地元は、うちから少し離れてますが、有名なワルとか聞いたことあります。ただ、彼はどちらかというとイベサーで遊んでるタイプらしいですよ。」

Tさんは、窓を見つつ遠い目をしていました。

Tさん「今の高校生は、凄いな。大学生みたいな遊び方してるから羨ましいよ。」

以前書きましたが、Tさんも他県のある大学付属を卒業していました。家が歯医者さんのようですが、上2人のご兄弟が歯科大に入り後を継ぐ予定。彼は自由に進路を決めて良い立場でした。特に大学に未練が有るわけではないですが、何となくフリーターしている自分からするとやっぱり輝いているそうです。

Tさん「今日は、ありがとう。楽しかったよ。」

私「いえいえ。こちらこそ。素敵なお店ありがとうございました。」

後日談ですが、Tさんとは3年生の夏頃まで交流がありました。GWの時や梅雨時に一緒に買物行ったり、Yと囲んだ食事など誘われました。夏休み頃になると、Yと再び喧嘩をして秋には別れたようです。

外を見るともうクリスマスの飾りやイルミネーションなど商店街に着飾っていました。満足気な顔をして帰路に立ちました。何はともあれ、一件落着。これで年内は落ち着きました。年内は・・・笑

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