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ペンギンになりたい。

いや、本当に良かったと思ってるんだよ。
僕はペンギンが好きで好きでたまらなかったのだからね。

見てみたまえこのフォルム、完璧だと思わないか?
ああ、本当に感動しているよ。

しかし中々に難しいものだ。
歩行の様子も観察しなければな。

「何があったんですか…」

研究所の一室で僕が見たものはペンギンと化した所長の姿であった。
所長は施設でペンギンを何羽か飼育していたが、今はその飼育していたペンギンに紛れてよちよち歩こうとしている。しかし、その顔はうっとりとしていて何だかたまらないといった表情である。

さっき本物の天使が現れてな。
あなたは人間のままが良いですか?ペンギンになりたいですか?と問われたんだ。
答えたよ。ペンギンになりたいとね。即答だ。

「それ、天使じゃなくて悪魔ですよ」
僕は説明をする。
「所長は昔から悪魔が憑きやすいんです。だから僕が守ってたんじゃないですか、ほら」

ぽん、と元の姿に戻った所長は、
戻せ!元に戻せ!フォルムを返せ!とうるさい。

本当に、天使の仕事は大変だ。

戻せ。

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