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気になった本の、書評らしきものを書いてみた

「ババヤガの夜」「老虎残夢」「成瀬は天下を取りにいく」

「楊花の歌(ヤンファのうた)」


読書の秋っていう表現、今までその由来について詳しく調べたことが
なかったけれど、この記事を書くにあたって、ちょっと検索してみた。
それは、こういうことのようだ。

暑さから解放され、活動しやすい気候の秋はやる気も起こりやすく、集中力も持続する。
秋は夜が長く、一人静かに過ごせる時間も増える。
そうなれば、読書もはかどる。
夏の暑さが過ぎて、過ごしやすい季節が来た時に取り組みやすいものの代表格が読書である。

ということのようだが、元は中国の詩に由来するそうで、かの夏目漱石が「三四郎」の中で引用したことで、「読書の秋」というイメージが日本に広まったんだとか。

まあいずれにせよ、秋の夜長に一人読書に没頭するのは、動画配信を見続けるより、はるかに価値のあるものだとボクは思う。
乱読ではあるけれど、ちょっとばかり話題になった本を何冊か読んだので、ボクなりの紹介をさせていただく次第。
と言っても、ボクは川口市の川口さんのように本格的読書家ではないし、書評は足下にも及ばないので、オバケ評論家がおかしな記事の合間に本格的な変人と思われないように、まともな記事をアップした、くらいに思っていただければ幸い。
まずは、こちらから。

「ババヤガの夜」

王谷晶 河出書房新社

この作品は東京新聞でブルボン小林さんが紹介していて、強烈なインパクトの表紙に惹かれて読んでみた。

主人公の新藤依子は暴力を唯一の趣味とする暴れ者で、その手腕を見込まれある日関東有数規模の暴力団、内樹會に身を置くことになる。そこで彼女が任されたのは、会長の一人娘、尚子の護衛であった。

今までにない主人公の創造も魅力的で、題材が題材だけに、バイオレンスと血生臭さが全編を彩るが、尚子に隠された真相が明らかになり、読者を煙に巻く思わぬ伏線の張り方が見事。単なるバイオレンスに留まらず、時を超えて強く結ばれた女性同士の思いに感動する。
英訳も決定したというが、非常にコミックとか映像にもなり得る作品ではないかと思う。個人的には、読者に想像を与える、ラストの何とも言えない余韻を残した終わり方が秀逸で好きだ。

「老虎残夢」

桃野雑派 講談社

第67回江戸川乱歩賞受賞作。

武術の達人、梁泰隆、その弟子で心に癒えぬ傷を持つ女武術士の蒼紫苑、泰隆の養女、梁恋華。この三人を物語の中心に置き、ある雪の降る夜に湖上の楼閣で起こった泰隆の殺害事件をめぐり、三人の客人と紫苑の謎解きが展開される。

300ページを超える大作で、中国の宋時代を背景に、なんとこの作品、ミステリーと百合の要素を掛け合わせるという、離れ業をやってのけたのには驚いた。新しいミステリーの誕生は受賞にふさわしい。
とにかく中国を舞台にしていることを表現した探求心に満ちた文体には脱帽。

「成瀬は天下を取りに行く」

宮島未奈 新潮社

中二の夏休みの始まり。閉店を控える西武大津店に毎日通い、TV中継に映ることを実践し、お笑いコンテストに挑戦、高校生になると丸坊主になってしまう風変わりな少女、成瀬あかりを主人公にした青春群像劇。そのエピソードを、ある時は同級生の視点で、ある時は他校の男子高校生の視点で描いてゆく。

本の世界では結構話題になった作品である。
ボクはというと、イマイチ、ピンとこない作品だった。好き嫌いは主人公である成瀬に対しての、読者の好みによると思う。独特のキャラクターだが、会話がロボットのようで、成瀬に感情移入ができなかった。もう少し成瀬に生身の少女らしい視点がほしかった、というのは贅沢だろうか。

「楊花の歌(ヤンファのうた)」

青波杏 集英社

第35回小説すばる新人賞受賞作。

1941年、日本占領下の中国福建省が舞台。上海や香港などを渡り歩いてきた主人公のリリー。活動家の楊に従い、カフェで女給として働く一方諜報活動を行い、日本軍諜報員の暗殺指令を受ける。その実行役としてヤンファという一人の美しい女性を紹介されるが、暗殺が失敗に終わった時には、ヤンファを殺すことを命じられる。

そうあらすじを紹介すれば、固い物語のように感じるかもしれないが、作品はいたってライトであり、それがすばる新人賞にふさわしいと思えた。
確かに戦時下が舞台であるから、そうした社会的背景の中で物語は展開するのだが、この作品の主軸になっているのは、リリーとヤンファの百合的愛の交錯だ。後半、二人の秘密を紡ぎだしていく展開にも好感がもてた。
ただし、終盤は、もっとドラマチックでも良かったのにな、と個人的には思う。
偶然だが、今年、綾瀬はるか主演の「リリー・リボルバー」という映画が公開された。主人公が同じ名前で、舞台も戦時下だから、この小説と何か関係があるのかと思ったが、もちろんそうではなく、映画も同名の小説が原作であった。余談になるが、興味本位で映画館で鑑賞。採点は40点だった。

という訳で、今回は真面目な投稿(いや、いつでもマジメですよ)。
僭越ながら、個人的な書評らしきものを書かせていただいた。
参考にされるも良し、違った感想をもたれるのも、また良いではありませんか。

さて、最後に、今気になって、読み始めている本をご紹介。
それが、コレ。

「近畿地方のある場所について」


背筋 KADOKAWA

KADOKAWAが運営する、小説投稿サイト「カクヨム」で注目され書籍化されたホラー小説。
ボク自身が「カクヨム」に関心があったため、そこで注目されるのはどんなレベルなのかも確かめたかった、というのもあって購入した。
まだ、はじめの数ページだが、これが何だが期待せずにはいられない。
普通の小説の枠にとらわれない凝ったページ作りで、いきなり引きこまれた。読了後、また紹介の機会をもてたらいいと思っている。



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