A4小説「全国大会」

 「木曜日に始まりました今大会も本日が最終日となりました。解説は昨日に引き続きこの競技の初代チャンピオン・篠塚邦夫さんです。よろしくお願いいたします。」「よろしくお願いします。」
 「さあ篠塚さん、いよいよ最終日、個人決勝が行われます。一昨日までの団体戦では各チームそれぞれが素晴らしいパフォーマンスを披露してくれましたね。」「そうですね、音に合わせての息の合った動きはどのチームもお見事でした。」「優勝したチーム・フェイスオフからはパフォーマーの宮崎が個人戦でも決勝に進出していますね。」「そうですね。リーダーの立花もエントリーはしていたんですが、直前の足の痛みで出場辞退となってしまいました。」「優勝チームのリーダーとあって我々もどのようなパフォーマンスを観られるのかと楽しみにしていたんですが、こればかりは仕方がありませんね。」「そうですね。早期回復を願うばかりですね。」
 「さあ、そうこうしているうちに準決勝第二試合の開始時刻が迫ってまいりました。改めまして篠塚さん、この競技のポイント、パフォーマンスをするにあたって大事な点といったところなど、どのようにお考えでしょうか?」「やはり第一は表現力でしょうね。どのチーム・選手とも与えられたステージは同じですからね。選曲も大事になってきますね。」「そうですか、選手についてはいかがでしょう。」「そうですね、やはり運動量はかなりのものになりますから、持久力は大事でしょうね。」
 「さて、決勝に駒を進めたのはチーム・踏酔倶楽部の遠藤ですねー。」「そうですねー。非常にレベルの高い試合だったと思いますね。両者とも動きにキレがありました。」「なるほど、そして先程おっしゃっていた持久力、これも確かに必要ですね。」「そうですね、全身を使ってのパフォーマンスですからね。敗れはしましたがダンシングヘッズの坂本くんもかなりの素質を持っていると感じました。」「そうですか、悔し涙の坂本、次回大会に期待です。」
 「さあ、ついに決勝の時間がやってまいりました。篠塚さん、とうとう今大会のチャンピオンが決定しますね。」「そうですね、団体でも優勝した宮崎が個人でも優勝するのか、それとも遠藤が阻止し一冠を手にするのか、どちらが勝ってもおかしくはないですからね。」「そうですね。両者の緊張が我々にも伝わってくるようです。決勝を前に篠塚さん、両者のコンディションはどのように見えますか?」「そうですね、さすがは決勝戦というだけあって、両者ともにコンディションは完璧ではないでしょうか。」「具体的にはどういったところが?」「そうですね、やはり万全に調整された腹回りでしょうか。垂れるほどではないやや多めの皮下脂肪が調子の良さを物語っていますね。艶があります。」「そうですか、やはり決勝への意気込みも相当なものだと。」「そうですね、数週間前からビール、焼き鳥、もつ煮込みなどを摂取していたに違いありませんね。」「涙ながらに出場を辞退した立花はその過程で痛風を発症してしまったというわけですね。」「魚卵系は高確率ですからね。」「準備が整ったようです。それでは、全日本腹踊り選手権、決勝戦のスタートです!」

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?