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妊娠には制限が多いのか?①

妊娠したらやってはいけないことが増える
日常診療でそんな印象をお持ちの方が多いという印象をうけます。
本日は妊娠にまつわる「制限」についてお話していこうと思います。


妊娠と薬

妊娠したら、やめないといけない薬は「少ない」

妊娠したから飲んでいる薬はやめないと。
こう思っている方は多いように思います。
確かに、明らかに胎児へ奇形をおこす可能性のある薬、胎児毒性のある薬という薬もあるのは事実です。
でも実はそんなに多くはありません。
むしろ、続けていていただかないと母体の体調が悪化し妊娠継続が困難になる、というような薬もあります。

注意したほうがいいお薬を飲んでいる比較的多い疾患

てんかんや甲状腺機能亢進症が挙げられます。
そのほかにも気をつけるべき薬はございますので、妊娠を考えている人で、合併症、常用薬のある方はあらかじめ主治医に確認していただくことをおすすめします。

妊娠を知らずにお薬を飲んじゃった

まず焦らずに産婦人科へ相談してみてください。
また、厚生労働省の事業として妊娠と医薬品に関するデータを集積している、国立成育医療研究センター「妊娠と薬情報センター」では妊娠後のみならず、妊娠前からの相談の受付もしています。
ぜひ利用してみてください。

妊娠と運動

妊娠中の運動(スポーツ)についてです。
かつて、妊娠中は安静に、無理せずに、大事に大事に…
といわれてきた背景が影響し、妊娠するとスポーツができないと思っている方もいるのかと思います。

妊娠中のスポーツは合併症のない女性にとっては「有益」

ガイドラインでもこう記されています。
ただすべての女性にとって、そしてすべてのスポーツが有益というわけではありません。

好ましくないスポーツ

サッカー、ホッケー、レスリング、サーフィン
などは接触は腹部外傷のリスクが高いとされています。

危険なスポーツ

体操競技、重量挙げ、乗馬、スキー、スケート、スキューバダイビング
などが挙げられています。
これらは転びやすく外傷を受けやすいというのが理由です。

好ましいスポーツ

ウォーキング、フィットネスバイク、ダンス、ストレッチ、水中エクササイズ、水泳、ウェイトやバンドを使った筋力トレーニング
と記されていました。

運動が好ましくない女性

しかしながら、妊娠中に運動してほしくない、という方もいます。
重篤な心疾患、呼吸器疾患、頸管無力症、性器出血、前置胎盤、低置胎盤、前期破水、切迫流・早産、妊娠高血圧症候群などが挙げられます。
難しい言葉が並んでおりますので、詳しくは主治医にご確認ください。

合併症のない女性は運動は推奨される!

適度な運動は、妊娠高血圧症候群や妊娠糖尿病、帝王切開分娩、難産などの予防効果があるとも報告されています。
ただ、過度にならないようにお気をつけください!
妊娠中は、非妊娠時よりも相対的に心臓や肺に負担がかかっている状態ですので、いつものように運動してしまうのは負荷が強すぎてしまいます。
また、何かしらの症状があるときは、すぐに運動を中止し、主治医に連絡をしましょう。

妊娠とレントゲン

健康診断で、妊娠に気づかず、レントゲンを撮ってしまいました
妊活中のため、レントゲンはやめておきます

などといったことを健診病院で働いていると時々耳にします。
健康診断で撮影することの多い胸部レントゲン写真での胎児被曝線量は
0.01mGy以下‼です

胎児に対する放射線の影響は時期と被曝占領に依存しています。

胎児へ影響する時期と線量

  • 受精後10日までの被曝では奇形発生率の上昇なし

  • 受精後11日~妊娠10週での胎児被曝は奇形を誘発する可能性があるが、50mGy未満では奇形発生率を上昇させない

  • 妊娠9週~26週では中枢神経障害を起こす可能性があるが100mGy未満では影響しない

と報告されています。

50mGyとは実際どのていどの検査で被曝するのでしょうか?
最大胎児被曝線量は、腹部CTを撮ったときでが49mGy、骨盤部CTで79mGyと報告されており、平均胎児被曝線量はそれぞれ8.0mGy、25mGyと記されています。

なので私は胸部のレントゲン1~2枚とっても、心配いらないですよ!
とお話ししています。以下にも記しましたが、もちろん不要なのに撮る必要もありませんので、原則妊娠中のレントゲン写真はお勧めしておりません。

放射性被曝による発がんリスク

また付記まとして、放射線被曝による発がんリスクですが、胎児で高いとの報告はあるため、不要な妊婦被曝を抑える努力は必要であるが、必要と判断された場合に控えるべきではないとされています。

まとめ

本日は妊娠にまつわる制限について、薬、運動、放射線
についてお話ししました。
意外と大丈夫だし、対処法を知っていれば怖くないことも多いはず。

この情報が、少しでも誰かの安心につながればいいなと願っています。

次回は、食事、飲酒・喫煙、etc(旅行、SEX、ワクチンなど考えています)
などからまた書いていきたいと思っていますので、よかったらご覧ください。

本日もお読みいただきありがとうございました。



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