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「ヒロポンと特攻」感想文

「ヒロポンと特攻」を読んだ。これは大阪在住の元教師が戦時下のヒロポンと特攻の話を取材の下、書いた自費出版が元である。主に梅田和子さんというヒロポンを作製した元女学生の聞き取りをベースに話は特攻・天皇の戦争責任・日本のファシズムなどといった風に話が大きく展開していく。

1章:女学生が包んだチョコレート
ここでは上記の女学生の幼少期の話が展開していく。リベラルな父親、ハイカラな母親というモダンでインテリな家庭に生まれた梅田は戦火を逃れるため実家から離れた大阪北部の茨木高校に疎開する。そこで先生から校内あるチョコレートを作るよう命じられる。上級生に呼び出された和子はそこでこのチョコを食べてみろ、と命じられる。体が急激に熱くなる感覚を持つ。これが「覚せい剤入りチョコ」だった。その後、高槻の軍事工場通称「タチソ」に勤務するよう命じられ管理棟の事務や戦後、資料の焼却などを命じられた。

2章:学校と生徒を根こそぎ利用した日本軍
この章では大阪・茨木がアヘン栽培のメッカだった事を伝えている。そして軍需工場や鹿児島の特攻基地で少年・少女がいかに動員されていたかを描いている。

3章:覚せい剤入りチョコレートはなぜ作られたのか?
ここではチョコレートの生みの親 岩垂荘二の回想やメーカーの森永が製作に加担していた事、戦後もあいも変わらずヒロポンが製作されていた事がわかる。

4章:ヒロポンと特攻
ここでは様々なヒロポン体験が証言としてつづられる。

5章以降は特攻やその実態(特攻を拒否した人の話も)、日本の戦争責任や日本人の責任に話が拡大していく。

感想


全編ヒロポンの話ではないのでそこに関しては少し肩透かしを食らうかもしれないと思った。全編にわたって著者の教師の目線かつ左派の目線が貫かれており、後半になるにつれてややありきたりな論調になっていくように感じた。ただ後半の日本の戦争責任や日本の侵略の歴史やよくまとめられており初心者にはとても分かりやすいものに感じた。
あと余談だが、この本に出てくる梅田和子の家族の経歴がすごく、和子はのちに京都大学工学部に進み同僚と結婚、長男の障害を機に障がい者運動に取り組む。父親は大阪弁護士会会長をつとめ、姉の佐々木静子は女性初の弁護士になる。とんでもないエリート家族だった。

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