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挫折からの脱出 (4) メカニズム

 それでは挫折のメカニズムについて理解を深めていきましょう。

 前回触れたように無為な生活を続け、気がついたら人生後戻りできないところまで追い込まれた状態を挫折と定義します。本書では、目標を達成できなかった、自分の能力の限界を感じた、夢が砕け散ってしまった、愛の告白が届かなかったなど自分が主体的に行動したが、思うような結果ではなかったことを表して挫折とは言いません。このような結果は、心身ともに成長期には必ず直面する出来事に起因するからです。

 何の目標もない、感動を覚えない、動機をもったことがないひとが長年その生活を続けて陥る精神状況を挫折であると考えています

 一方、若い頃に受験やスポーツの目標、将来設計などを自分で考えることなく、他者から押しつけられ、精神的な自立が妨げられてしまう。それが挫折を生む理由であると言われています。これは、引きこもりに代表されるニートを生む原因としては正しいのでが、引きこもりという目に見える歪な生活スタイルで、社会に助けを働きかけています。ニートは、決して自分の生活そのものは肯定してはいないのです。ニートとは、見果てぬ夢を描いている人達です。

 実は、挫折状況にあるひとの多くが普通の生活を送っているように見えます。病根は深く、相談相手もなく、今日の生活をそのまま明日繰り替えすだけの生活が続くひとは案外多いのかも知れません。そして、自分自身が挫折状況にあることに気がつかず、歳を経てから愕然とすることになってしまうことになります。

 それでは、本書を定義した挫折状況になってしまった人達はどのようなプロセスで生まれるのか探っていきます。

 すべての挫折の始まりは、現実逃避です

 成長とは、失敗から学び、試行錯誤を繰り返しながらそれを自分のものにしていくプロセスです。成長を止めること、成長を諦めること、そして成長しないことは、現実逃避と同義語になります。失敗を直視しない、失敗は他人が原因である、失敗を極端に恐れる、トライしないという生活リズムが、家庭環境などの影響を受けて増大していきます。子供が恐怖心のために逃げ回っているようにも見えるので、親は子供をさらにかばうようになります。そして、最終的にはその子供は現実を直視できない性格となっていきます。

 このような子供に特徴的なのは、飽きっぽい、怒りっぽい、ふてくされる、泣くフリをする、大声でごねるといった幼児期から脱することができない状況が続くことです。その後、親や先生もさじを投げて、このような態度をとっても反応しなくなるため、幼児期の精神状況のまま自分の殻のなかに閉じこもるようになります。一見、大人しい子供に見えますが、美味しい、楽しい、悲しい、悔しいといった感情を示さないので判別することができます。

 このような子供は一体いるのか、そもそも見たことがないと言われますが小学校の優等生と言われる子供の中にも潜んでいます。親は手のかからない子供なので自慢の種でしょうが、その実態は親に心の胸襟を決して開かない子供なのです。義務教育課程での勉学は、基本は繰り返しで覚えていくのでそのような子供でも一定の学力があれば、優秀な成績を収めていきます。しかし、それはあくまで塾に通ったりなどした他動的な学習効果によるものなので、その子供が特段優秀であることの証拠にはなりません。

 そのような子供の心に深い病根が宿っていることは、高校進学頃から発覚してきます。それは思春期は、自立への一歩を促すからです。病根を持つ彼らには自立を促しても精神的な成長ができません。高校生活のなかでさらに孤立し、時にはふてくされ、不登校に陥るものもでてきます。それは、彼らの心をつかさどる現実逃避からきている行動をとるからです。

 最終的に年齢が成人に達したとしてもその思考回路は幼児のままで、現実逃避を軸として行動をとり続けます。アルバイト先を無断で欠勤する、約束を守ろうともしない、些細なことで感情的になる、自分勝手な主張ばかりするなど成人としてあるまじき行動をとるひとが皆さんの身の周りにいないでしょうか?

 結局、そのような人の行動は社会の時間軸、人間成長の時間軸と連動していなかったので、社会的にも人間的にも取り残されてしまう存在になってしまいました。さらにその思考回路は人生の喜びの道から外れたことさえ気がつかず、深い闇への入り口にたたずんでいます。

 このようなプロセスを経て、挫折状況のひとが育っていきます。

 皆さんがここまで読んで、自分には自立した気持ちがあると確信できればあなたの将来は拓かれています。あなたの努力は必ず実を結ぶに違いありません。自信を持って目線を上にして日々活動していきましょう。一方、思い当たるひと、人生の目標を明確に説明できないひと、心の奥底から叫びたくなるような出来事に遭遇していないひとは挫折の入り口にいるかも知れません。

 次は、挫折から脱出する方策について言及していきます。


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