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転機を作る力 【17】企業編-覚醒

 それでは、従業員の目覚めさせ方について言及していきましょう。

 日常の作業では従業員は一切のミスは許されません。一つのミスが会社の信用を大きく失墜させ、事業存続自体が危ぶまれるケースすらあります。このため企業は、ISOの規定によって基準作業が正しく行われているか文書化し、監視カメラで作業の遵守励行状況を確認しています。ISOの規定について誤解を恐れず個人的な意見を言うと、作業の習熟度が低い会社に作業委託する場合に有効な施策で、職場内で改善が行われる、試行されるような職場では適用がためらわれます。派遣社員、パート社員も彼らの創造性を生かして改善につなげている会社は存在しています。彼らも立派な将来へ備えるための人材なのです。

 まず、経営資源である社員の時間のムダ取りから始めましょう。

 職場のムダを省く活動をやろうとすると
  コピーのムダ
  電灯のムダ
  交通費のムダ
  残業時間のムダ・・・・・・・・・
 に注力する会社の多いこと これでは単なる経費削減です。

 無限の可能性のある時間のムダ取りに集中しましょう。

 従業員に問うてください。
「その作業は価値を生むのか、作業を通じて付加価値が生まれるのか」

 例えば、社内の世間話は人との交流を活性化する効果があるという価値を皆さんで認めることも重要です。就業時間ギリギリまで仕事をせずに、その日の仕事を振り返る時間を持つことは、次の日につながる貴重な時間であることを発見できるかも知れません。

 この過程で、従業員は知らず知らず企業価値を再認識しています。
そして、この会社で何が良いことなのか、見直すべき点は何なのかの判断基準を獲得していきます。価値観は、従業員が気づくことによって周知されていきます。決して、ポスターの宣言文ではありません。

 時間のムダ取りが会社で定着したら、何がムダで何が価値を生むのかを職場で手をあげて発言することを特に尊い行動として取り上げましょう。その繰り返しによって、何か質問はあるのかと問うて、半数以上の従業員が手をあげる職場作りにつながります。

 次の段階は自分たちの手で工夫することに慣れさせましょう。そのためには専門部隊の応援が必要です。IT技術者などの専門技能を持った人材を雇用してください。アスクルの関連企業は、社員の提案があった際は翌日には社内のIT人材がソフトを修正し、即時に現場投入します。作業の無駄や失敗がなくなり、社員は改善のネタ探し、それも顧客が喜ぶ改善を数多く提案してきます。お客様にも見せられるグラフィックな伝票などに現場の意見が組み込まれています。

 ある食品メーカーでは、パート社員が大活躍しています。新商品の開発のため、生産現場で日常の作業をしている社員の意見を尊重しています。製造方法をよく理解していているので、ちょっとしたラインの改修で他社にはない差別化を図っています。冷凍食品のお弁当おかずのラインナップにはパート社員の知恵が反映されたものもあります。このように企業に携わるすべてのひとが会社の将来の一翼を担う役割を果たしているのです。

 企業価値に基づいた意見が職場に目立ってくると企業にとっての転機は間近に迫っています。次は従業員の意見をどう活用し、それを転機につなげていくかについて言及します。



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