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嵯峨野小倉山荘色紙和歌異聞~三十二の歌~

天命記 Ⅲ 原作:春道列樹
ーーもう、どこまて行ったんやろか? すぐお昼やいうのに……。
「やっほー、帰ったで。待ったか?」
ーー当たり前やん!ーー
「そないに怒りぃなや。お昼食べさせて。春ちゃんのこさえた弁当ほんまに美味しい」 
この時に谷川から風がサーッと舞い上がって青い空に抜けました。
ーーいっつもこれやから、もうーー
「お昼食べたら、この先にいってみよ。紅葉がな、いっぱいで綾織の海の底にいるみたいや。そのために竹と柴使ってこれ作ってたんや」
彼は竹の指輪と柴のティアラを取り出すと、いきなり……。
「なっ、結婚しよう」

定家「竹の指輪と柴のティアラやて。考えたな、ええ感じや。山川に 風のかけたる しがらみは 流れもあへぬ 紅葉なりけり」
蓮生「秋の紅葉の葉陰でプロポーズか。これはええ」
定家「幸せに背を向けるもんやない。真っ正直に向かい合ってそれを手にすればええんやな」
蓮生「せやせや」
 

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