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色彩を持たない多崎つくると、その巡礼の年 村上春樹 【読書感想】

念願だったこの作品をやっとのことで読了した。

村上春樹さんの作品は私にとって少し『不思議な世界』なので、えっ?何?って感じで読み返すこともあったりして、ちびちび読んでいた。

感想は、静かな作品だったけれども、最後にじわぁっと感動していい終わり方をしていまも心がじわじわとしている感じがする。

ストーリー。主人公(多崎つくる)は地元名古屋で仲良し5人グループの一人だった。そして、卒業後つくるだけ東京の大学へ行き、あとの4人は名古屋に残った。

つくるは休みになると名古屋に帰ってきては皆と過ごしていた。ところがある日、皆に会おうと連絡をするが誰も取り合ってくれなくて、拒絶されてしまう。その後、数カ月生きた心地がしないまま死の淵を迷った。

そんな過去をもつつくるは中年へと差し掛かりそして…

というように話が進んでいく。

私は、この作品を読みながら、自分の高校や大学のことを思い浮かべたりして懐かしく思った。東京の大学も受けたことがあり、その時に東京へ赴いたころの話も思い出した。

私が、東京へ行っていたらどんな日々を過ごしていたんだろう?今とは大きく違って過ごしていたように思う。

この作品では、4人は名古屋に残ったとあるがそういうことは珍しくない(私は名古屋出身)。名古屋は東京ほど大きな都市ではないが、一応一通りそろっていてそこで完結してしまう。

そこで東京を選んだ主人公というのは、よっぽど東京に行きたい動機があったのだと思う。

基本的に私が村上春樹の作品を読むと感じるのが、すこし霧のベールに包まれた曖昧な世界にいるような感じである。

イリュージョンというのだろうか?もちろん本を読んでいて現実としてのイメージができるし、SFということではない。ただ、どこかここに在る見える世界とか、しっかりと感じる世界というよりも、言葉にならないような曖昧で捉えることが難しいようなそんな意識を描いているように感じる。

物語は、ゆったりと大河を流れるように進んでいき、そのまま静かに終わっていく。最後の方なんて、『えっ?』何が言いたいの?え?もう終わっちゃうの、よくわからないという感じに感じた。

ただ、村上春樹の世界に浸れたということ自体が、すごくいい感じに酔えたと思ってはいた。

がしかし、えっ?どうなるの?どうなるの?

と終わっていく感じに、私は少し焦りを感じた。何もこれとしたものをつかんでいないのに本を読了してしまうことに、すごく寂しさを覚えると思ったからだ。

そして、最後の数行で、そして最後の一行を読んで私はさとった。

あぁそうだったのか?と

そして、心がじわっとした熱い思いが湧いてきて。主人公が暗いトンネルを『抜けた!』瞬間に立ち会うことができた気がして嬉しかった。

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