【長編小説】タイムスリップ(オーロラブギ)
「起きたの?」
目の前に、彼女、ソラがいた。
しかし、すぐにはここがどこかわからなかった。
「目が覚めた?よく眠ってたね。」
「あれ?ここは、どこだっけ?」
屋根を打つ雨の音が聞こえる。静まり返った暗い部屋にサトルは、寝転んでいて、あたりに、飲み干した缶ビールが散らばっている。
そうか、思い出した。
ここは、あの日の夜だ。
人生は変わってない。
初体験の夜に戻ってる。
ここは、あのファーストフード店で約束して、夜待ち合わせをした後、川沿いのAURORAというホテルの一室にシーンは移っていた。
「クマとケイはどこにいったんだっけ?」
「覚えてないの?さっき、それぞれ別の部屋に別れたじゃん。」
二人は、あまり話すこともなく、緊張した面持ちを、見せないようにして、お互い、「じゃあ。」と結ばれるはずの夜だった。そして、お互い大人の階段を、一歩登る、はずだった。
「はずだった過去」は正解か不正解かはわからない。
サトルは、そのあと、愛もない若く真似事をしたかわからないようなセックスをした。
何も残らないことを知っていた。高校生の時に、セックスを経験すると、そこで、何かしらの大きな勘違いをしてしまう。それで、勉強したり努力したり何か大事な目標を見失ってしまうのだ。
そして、いったん足を踏み外すと、見えない闇の中に堕ちていく。そして、仲間からの声も、親からの声も、耳に届かなくなる。
まさに、沼の底から、息もしてるかどうかわからないような現実逃避をした現実がつづく。
当時、彼の世界は、虚無感と無秩序という名の「独りよがりの自由」に満ちていた。
親に与えられた、モラトリアムのある間は、経験値の高い、保守的な大人に監視され、はみ出さないように、軌道修正される。
⏩⏩⏩⏩⏩⏩⏩5日前⏩⏩⏩⏩⏩⏩⏩
事前に、ケイとクマが、念入りに当日の打ち合わせをした。
ケイは、駅から北側の川上線にある女子高に通っていた。彼女は、学校では、出会いがなく、中学生時代の友達はあてにならない。
同じクラスで、ソラと出会い、通学が同じ方向だから、よく一緒に行動をするようになった。
「私たちは、処女のままで、高校時代を終わっちゃうのかな。絶対それは、ないよねー。」
「でも、わたし、面食いなんだよねー、いい男いないかなー。」
高校生の興味といえば、初体験だ。
友人の中でも早くに経験した者もいれば、彼は、冒険者のようにどのように、経験したことを武勇伝のように話す。そして、未経験の者からすると、一歩先に大人になったかのような錯覚をおこす。
しかし、彼の回りで早くに、経験した友人は、想像妊娠により、学校を去り、社会人になる者もいる。
ファーストフード店で、体験を一緒に共有することを約束した。
人間は、歴史的にパンドラの箱を開け続けてきた。そこに、好奇心という欲には勝てないからだろうか。
人間の本質は欲なのか?
目的は、「セックスを初めて経験すること。」このためだけに、四人は、家族には友達と勉強合宿する
と嘘をつき、一泊する計画を実行した。
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繁華街から少し離れた閑静な場所に、AURORAホテルは立地している。
AURORAとは「啓示の光」という意味があるらしい。
北極か南極で見えるオーロラだ。夜空には、虹色のアコーディオンカーテンのように、光の反射と空気の低い温度が調和し、微粒子が混ざり合い、奇跡の瞬間を、告げるように突然に訪れる。
太古の時代より、遥か宇宙の果てにある未来まで続き、流線型のなめらかな曲線で建築物としてデザインされてある。そこでは、誰かが誰かを想い涙を流し続けているのだ。
木々に滴る雫のように、涙が溢れ、地表に流れ出ている。AURORAホテルとはそんな場所だ。
「こっちに来なよ。」
「うん。」彼女は、うなずいて、少し間をおいて、隣にベッドの上をスルスルと音を立ててすり寄ってきた。
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