弓良サトル

これまで、過去は振り返らず、未来に進むことが大事だと信じていた。しかし、過去はタイムス…

弓良サトル

これまで、過去は振り返らず、未来に進むことが大事だと信じていた。しかし、過去はタイムススリップして楽しむ「箱」であることがわかった。 ただ、その「箱」を開けることできなかった。いや、開けようとしなかっただけなのかもしれない。 「今」この瞬間から、「箱」を開け、新たな物語を始める。

最近の記事

月夜の見えるバーを後にして【連載小説】

何年かぶりのタバコを吸った。 一口吸って、咳き込む。 吹かした息は白く、意識は深い瞑想の中に入った。 中山ノボルは、昨晩、みなと祭での疲れを残したまま、個展の準備をしていた。 澤登ユズルとラムネ販売をしたあと、マリ子と打ち上げで飲みに行き、月夜の見える海岸沿いのホテルで三次会とばかりに飲み直しをしていると、そのまま寝てしまった。何も覚えてない。 ユズルも、気を利かしてくれたのか、途中から「仕事があるから、抜けるわー。」と携帯電話がかかったふりをしてから、ノボルとマリ子を

    • 南の空にかかる虹のない町【連載小説】

       春の朝、ふと川面を見ると、群をなした白鳥が勢いよく南に向かっているのが見える。  これからの混沌とした未来を切り開く勇姿のように映る。真白なキャンバスの上に、色彩豊かな絵の具を重ねて、輪郭を描く。それだけでいい。 中山ノボルは、画家として、初めて個展を開くことになった。 スポンサーは、グレーチングのメーカーの会社だ。 場所はかつて軍港だった中核市でレンガ造りの商店街にある、古く誰かに忘れ去られたかのような展示場だ。  彼は、地元では、名を馳せた会社の御曹司として生誕

      • 2024春が来る

        ついに、卒業。人生は半ばだか、ここらで自分をもう一度見つめ直すことが、必要なのだろう。 社会人には、逆らうことはできない転勤である。 20年に渡り、海と海岸を走った。 9つの橋が、島と陸地を結んだ場所。 いろいろな出会いと別れがストーリーとなる。 そこには、想い出がつまりすぎるくらい凝縮した聖地となった。また、聖地巡礼をしにドライブに来るさ。   サザンオールスターズの「希望の轍」がカーステレオのBGMから流れてくる。 涙が、溢れて、いつものクールな表情が泣き顔に

        • 「騎士団長殺し」を拝読

          騎士団長殺しを一周目読了してしまった。 文庫本で一部イデア編、二部メタファー編の上下巻で4冊もあり、目にクマができるほどに、はまってしまった。 イデアとメタファーの世界は、五次元世界の存在を信じる上で、重要な認識すべきファクターだとある人は言う。  騎士団長殺しの構図をつくり、イデアにつながる穴から、祠の穴につながる意識の道は、イデアの道なのか、渡し船は、三途の川なのか、生まれてくる子はイデアの授かりものなのか、多義的な解釈は読者に委ねられている。  哲学者のプラトン

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          【長編小説】タイムスリップ・アナザーワールド

           最初は緩やかな上昇曲線だったのが、急に跳ね上がるように、受注量が増え、設備を増設する。  取引先の必要があるほど、生産量が増えた。そして、稼働率は100%を超え、従業員を増やした。残業も増えたが、売上は右肩上がりを、維持した。  三年目から売上は高止まりし、節税しても追い付かない。設備も一括償却したが、法人税は、1千万円を超える額を納税することになる。  商工リサーチ調べでは、全国トップ10に入るほどの成長率になった企業と取材を受けた。  経営方針をこれまでの人助け重視か

          【長編小説】タイムスリップ・アナザーワールド

          【長編小説】タイムスリップ・悪魔のシナリオ

          「ワシは、弱い立場の人の想いを救い上げるために仕事をしとるんじゃ。みんな喜んでくれとるのをお前も知っとるじゃろ。」 私は、遠慮がちに聞いたが、部長は、真っ赤な顔をして、目はむき出しそうなほど大きくなってる。 部長「今更、サンプル製作を断ることは、できないし、最初から一切を言ってほしかった。今後は、試作依頼は断ることも視野に入れるけど、でも、経営方針として、これまでは、困っている人を救うのが先代からの理念だったはずだぞ。 いまさら、方向転換するのは気にいらんな。」 私は、

          【長編小説】タイムスリップ・悪魔のシナリオ

          【長編小説】タイムスリップ・部長と対決ブギ

          私「税理士から、仕入れが多くて赤字の原因となっている。といわれたんだけど、元帳を見せてくれませんか?」 母親「おかしいね。原材料費は上がっているからそれが原因かね?」 私は、元帳をめくってみて、原材料が上がっているかどうか確認してみた。【確かに5%程度原材料が増加している。これは、販売価格を上げる必要があるな。】 私「ん?この支払は何?」 部長の飲み屋の領収の支払いを見つけた。 母親「これは、部長が接待に使ったお金だよ。まー、金額は少し多いとは思うけど。」 金額は、

          【長編小説】タイムスリップ・部長と対決ブギ

          【長編小説】タイムスリップ・債務超過ブギ

          「事業を成功させるためには、何が最も必要か?」 という答えのない命題があるとする。 この問いには、100%間違いのない解答は存在しないのかもしれない。 しかし、経営が行き詰まるとき、つまり赤字が続くとき、売上が伸びないときには、必ず原因がある。 原因があるということは、解決策があるということになるが、これを実現するには、相当の意思の強さだけでなく、人を理解し、時には、悪者となり、突破する力、そして、「最上位には人を動かす力」が必要不可欠である。 【赤字に至る出来事】

          【長編小説】タイムスリップ・債務超過ブギ

          【長編小説】タイムスリップ・ドリーム家具の転落

           株式会社ドリーム家具は、昭和31年に法人化した。広島県の山林地方で生まれた、創業者の槇島亀太郎は、製材工場で財をなした。そして、建具の技術を活かして、家具の製造メーカーとして創業した。  昭和51年には、二代目の槇島夢太郎が、事業を継承した。夢太郎は、職人として技術畑ではなく、営業と人脈を築くのが得意だった。みずから製造するのではなく、顧客のニーズをうまく活かして、家具の商品開発を行う。  学校入学の勉強机や婚礼家具や調度品の受注をとって、仕入れを行う、卸販売をはじめてか

          【長編小説】タイムスリップ・ドリーム家具の転落

          【長編小説】タイムスリップ・経営危機

           株式会社ドリーム家具が、経営危機のステージに陥ったのは2000年代あたりからのインターネットの普及による。  サトルは、大学を卒業して、大手家具メーカーに就職した。入ってから製造ラインの一員となる。 製造現場で行う1年目に与えられる仕事は下請けだ。  家具製造メーカーでの最初の仕事は、製造プロセス全体を理解し、製品の制作方法や工程を学ぶことだ。 一年目は、生産ラインでの作業や機械操作など、実際の製造活動に参加し、同僚や上司のサポートを行う、いわゆる下請けだ。  製造過程での

          【長編小説】タイムスリップ・経営危機

          旧年中はnoteの皆様には大変お世話になりました。 謹賀新年 2024年は何かとお仕事では動きのある春が予期されます。 本年もよろしくお願い申し上げます。

          旧年中はnoteの皆様には大変お世話になりました。 謹賀新年 2024年は何かとお仕事では動きのある春が予期されます。 本年もよろしくお願い申し上げます。

          【長編小説】タイムスリップ(クリスマス・ブギ)

          「メリークリスマス🔔」 「クリスマス・イヴ」の日は、クリスマスに含まれている。少なくとも、恋人たち、大事な仲間と過ごす意味においては。  クリスマスイブは、クリスマスを迎えるための聖夜の夜だ。  もともと、起源をたどるとクリスマスは、イエス・キリストの降誕を記念するお祝いの日である。  ただ、キリスト教でもなければ、会ったことのない、神様のためにお祝いをする筋合いはない。  そう思っていた。  サトルにとっては、ハロウィーンと同様のパリピーイベント行事だ。  そう思

          【長編小説】タイムスリップ(クリスマス・ブギ)

          【長編小説】タイムスリップ(オーロラブギ)

          「起きたの?」 目の前に、彼女、ソラがいた。 しかし、すぐにはここがどこかわからなかった。 「目が覚めた?よく眠ってたね。」 「あれ?ここは、どこだっけ?」 屋根を打つ雨の音が聞こえる。静まり返った暗い部屋にサトルは、寝転んでいて、あたりに、飲み干した缶ビールが散らばっている。 そうか、思い出した。 ここは、あの日の夜だ。 人生は変わってない。 初体験の夜に戻ってる。 ここは、あのファーストフード店で約束して、夜待ち合わせをした後、川沿いのAURORAというホテル

          【長編小説】タイムスリップ(オーロラブギ)

          【長編小説】タイムスリップ(深夜のブギ)

          「死んでもいいかなと思った瞬間がある?」 となりに座っている、ソラが聞いてきた。 「あるよ。俺は過去に死んだ経験がある。」 ソラは、まったく驚く表情でもなく、わるい冗談だと思っているらしい。 「そう。私も実は一回死んじゃったんだよね。彼氏と別れて、どうでもよくなっちゃったんだよね。だから、しばらく死んだようにひきこもり。」 「そうなんだ、でもそれってさ、彼氏に依存してたからじゃないかな。自分自身が強くなるために、自信の持てるなにかに目標向かって頑張って見返してやれば

          【長編小説】タイムスリップ(深夜のブギ)

          【長編小説】タイムスリップ(高校生ブギ)

           電車がトンネルの中に入った。 「BLUE BIRD」のパーカー青年は、フードを被ったまま、頬杖をつき、窓の外を眺めながら、サトルに話しかけた。 「人生を変えることができたかい?」 「あなたは、あの病室の青年?どうなってるんですか?僕は死んだと思ったら、高校生のある日の朝に戻ってたんです。人生を変えても良かったんですか?」 「それは、わからない。オイラは、ある方の指令により、きみがタイムスリップするようにタイムゾーンを作ったんだよ。君はそこをすり抜けることができたんだ。

          【長編小説】タイムスリップ(高校生ブギ)

          【長編小説】タイムスリップ(電車ブギ)

           ふと目が覚めると、見覚えのある天井に光る、白熱灯が見える。しばらくすると、電車が激しく音を立てて走り去る音が聞こえる。  電車が走り抜ける音が、聞きたくなくとも聞こえてくる。 夜明の青い光。 均整のとれていない木々と、険しくコンクリートに塗りかためられた、山の斜面。 誰も足をふみいれることのできない断崖絶壁のようなあの、高校のとき毎日見ていた斜面が見える。 懐かしき目覚めの映像。  電車の走る線路を作るのに、最短距離よりも、海岸線や山の際を選ぶ方が線路を建設しやすい

          【長編小説】タイムスリップ(電車ブギ)