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「北越雪譜」を読む

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江戸時代後期の雪国の生活誌、鈴木牧之「北越雪譜」を、ゆっくり読んでいきます
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2023年6月の記事一覧

「北越雪譜」を読む:13

「北越雪譜」を読む:13

 世間に越後の七不思議と言われるうちの一つ、蒲原郡妙法寺村の農家の炉の中の隅にある石臼の穴から出る火は、人がみんな不思議だと口伝えにし、様々な文献に見られる。…

 一般的に七不思議といえば、ピラミッドなど世界各地の、機械もない時代にどうやって建てたんだろうと思わずにはいられないような、大きな建造物をイメージする人が多いだろう。今で言えば、世界遺産に登録されるような名所といったところか。

 子ど

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「北越雪譜」を読む:12

「北越雪譜」を読む:12

 吹雪は樹などに積もった雪が風で散乱するのを言う。その姿が優美なので、花が散るのをこれと比べて、花吹雪と言って古い歌にもたくさん見られる。…

 吹雪の漢字は、雪吹と書くよりもこの並びの方が現代人にとっては自然だろうか。

 鈴木牧之は「北越雪譜」の中で何度も、暖かい地方に暮らす人々が、雪や雪国の暮らしにロマンを持ちすぎていることを口酸っぱく諌めているが、吹雪の怖さに関しては、牧之の布教が功を奏し

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「北越雪譜」を読む:11

「北越雪譜」を読む:11

 江戸時代の書物といっても、今の感覚とそう変わらないなあと読めるのが「北越雪譜」の良いところなのだが、それに慣れてしまうと、時々現れる、いかにも昔風な考えや知識に驚くことがある。
 「雪中の虫」の項は特にそんな印象が強い。

 中国・蜀の国の峨眉山には、夏も雪が積もっているところがある。その雪の中に雪蛆という虫がいることは、山海経にも書かれている。この説は空想ではない。越後の国の雪の中にも雪蛆はい

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