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ティーンエイジ・スーパースターズ(2017🇬🇧)

原題: TEENAGE SUPERSTARS(2017、イギリス、107分)
⚫︎監督:グラント・マックフィー
⚫︎出演:キム・ディール、ダグラス・T・スチュアート、ノーマン・ブレイク、サーストン・ムーア、フランシス・マッキー、ユージン・ケリー、ジョウ・ヘッド、アラン・マッギー、ダグラス・ハート、スティーヴン・パステル、ジム・マカロック、ショーン・ディクソン

1980年代中盤〜90年代前半のスコットランド、グラスゴーのロックシーンについて描いたドキュメンタリーで、当時のライブ映像や現在の主要人物へのインタビューで構成されている。ナレーションはキム・ディール

アラン・マッギーを主役とした『クリエイション・ストーリーズ』と重なる部分もあるが(あちらはドラマ形式であったが)、時代がブリットポップに移るところで映画は終わる。

A Scene in Between』という80年代イギリスのインディーロックバンドたちの写真集と同じ空気感で、後追いではあるが、この時代良いな~と思ってしまう。ただしあくまで映画の舞台はグラスゴー。

最初に登場するのはパステルズのスティーヴン・パステル。実際、この人のドキュメンタリーとして作っても同じような完成形になるのではという気がする。

サーストン・ムーアがここで出てくれているのが嬉しい。当時のグラスゴーシーンをニューヨークからの視点で語ってくれている。

ソニック・ユースパステルズの7インチもこんな繋がりからだったんだなあ。

若い頃のスティーヴン・パステルボビー・ギレスピーのツーショットという激レア写真は思わず一時停止して見てしまった。

この映画で唯一の惜しいところはプライマル・スクリームの楽曲が使われていないところ。

元メンバーのインタビュー(初期ベーシストと初期ドラマー……誰??)や写真、映像は使われているが曲はなし。

ボビー本人が初期プライマルをそこまで肯定的に捉えてないからかもしれないし、単純な権利の問題なのかわからないが、ここは非常にもったいなかった。

パステルズがクリエイションから離脱した経緯も語られている。アラン・マッギーと性格的に合わなかったということだそうだ。

ジーザス&メリーチェインの結成時、父親が買ったスタジオで爆音を鳴らしていたという話がチラリと出ていて興味深かった。

クリエイション・ストーリーズ』でも出てきたジザメリのインタビュー。例の「セックス・ピストルズと同列に語らないで欲しい。好きじゃないし」とか「ジョイ・ディヴィジョンはクソだ」の発言だ。

そのVTRの後サーストン・ムーアが「ジョイ・ディヴィジョンはクソだなんて普通言わないだろ」と笑いながらコメントしてて「ですよね」と頷いてしまった。

中盤以降はベルシルの幼なじみだというノーマン・ブレイク(ティーンエイジ・ファンクラブ)、ダグラス・T・スチュアート(BMXバンディッツ)、ショーン・ディクソン(スープ・ドラゴンズ)らにフォーカスが当てられている。

BMXバンディッツやスープ・ドラゴンズはそれほど詳しくなかったけれど、プライマルより先にスープ・ドラゴンズがマッドチェスターをやっていたということは面白かった。

ヴァセリンズの2人もインタビューに答えていて、"モリーズ・リップス"の「パフパフ」クラクションはスティーヴンのアイデアらしい。

そんな初期パステルズも自然消滅する。友だち同士でやっててもうまくいかないバンドもある。

ニルヴァーナがレディングでライブをするというのでヴァセリンズが再結成するにあたり一生懸命練習するエピソードとか、飛び入りでユージーンが競演してカート・コバーン大喜びの場面は微笑ましかった。

有名スターにはなりたくない。ただ好きな音楽を続けたいだけというスタンスのグラスゴーの面々。

それに憧れ、それになれず、”スター”になってしまったカート・コバーン。

ロックが生んだ最大の悲劇がここにある。

ある程度成功もしながらコンスタントに作品を作り続けるティーンエイジ・ファンクラブが理想なのかなと思った。

ともすれば狭い箱庭的な世界で友達同士で楽しんでるだけという見方もできるこのグラスゴーインディーロックシーン。

タイトルが表す通り、十代の頃の感覚をミュージシャンもファンも維持・共有して成立している。

当初はその渦中にいながらも道を逸れ、スープ・ドラゴンズが力尽きたその先へ進み消失点へ向かって漂流しつづけるバンド、プライマル・スクリームの異色さが際立つ。

かつて「Can't go back to the place I was before」と歌ったボビー自身からしたらインディーロックも原点なんかではなく当時の流行の音楽スタイルにすぎない、くらいに思っているのだろうか。

当事者であると同時にアウトサイダーであるボビー・ギレスピー自身の証言があったら映画は全く異なるものとなっていただろう。

もう出ないと思っていたプライマルの新作が今年出る。

パステルズの新作もいつか出るのかなあ。

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