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野獣の青春(1963)

野獣の青春(1963、日活、92分)
●原作:大藪春彦
●監督:鈴木清順
●出演:宍戸錠、渡辺美佐子、川地民夫、香月美奈子、星ナオミ、郷鍈治、平田大三郎、山田禅二、信欣三、金子信雄、清水将夫

10年くらい前に一度観たことはあったけど、先日発売されたブルーレイで再鑑賞してみた。

まずはオープニングのタイトルバック。

白黒映像で、ある刑事の心中事件の現場捜査シーンを映し、キャストクレジットは明るいグリーンでドドーンと出す。

そこへパートカラーで赤い椿の花が一輪。

そうしてここで本編が始まる。

タイトルバック直後、宍戸錠が街でチンピラを殴り倒したりパチンコ屋にいるシーンのあたり。一目瞭然で発色がきれいに出てるのがわかる。

主人公のジョー(宍戸錠)が野本組と三光組という対立する二つの暴力団の間で用心棒として派手に立ち振る舞いながら、元同僚を心中事件に見せかけて殺した真犯人を見つけ出すというストーリー。

展開はスピーディーで息もつかせぬまま、ドンドン駆け抜けていく。

使っている色はシンプルでほとんど原色。

それをヤクザとか刑事とかの黒い世界の中に配置すると物凄く鮮烈に映る。

冒頭のクラブでのダンスシーンの赤、テレクラシーンの水色、白と赤半々に塗られた電話機、真っ黄色の砂埃、紫のカーテン等々。

竹下編物教室の玄関の壁の色がなぜかきれいなブルー。まるで北欧映画みたいな淡く鮮やかな、ブルー。

昭和の内装の流行としてアリなことだったのか、当時の感覚としても異質なものなのかはわからない。

エンディングも白黒映像に落ちた赤い椿の花びら、緑の文字で“終”。

そして特に語り草になっているのが、野本組と三光組の事務所セットのデザイン。

野本組はキャバレーの鏡の裏(つまりマジックミラー)でガラスの床、三光組は映画館のスクリーンの裏。ほんとにどういう感性なんだろうか。

それから、野本組の現金受け渡し現場を三光組が襲撃するスリリングな場面が、なぜか矢切の渡しの堤防の桜の下というのどかで平和な場所で繰り広げられている。

このブルーレイボックスについていたリーフレットの解説と書き直された台本の跡を見ると、この現場は夜の街路であったことがわかる。

わざわざ夜の街路を桜の堤防に変えたのだ。

もう、はなっからそういった「暗黒街もの」をカラフルな背景の中で展開させるという確信犯的な意図があったのだろう。

小道具としてはとにかく電話をかけるシーンが多い。

映画内で初めて電話をかける場面が出てくるのが竹下編物教室のシーンだが、編物教室に電話機が二つというのが奇妙というかちょっとした違和感を観客に残すようなシーンとなっている。

出てくる女優陣の中では脇役の星ナオミがかわいかった。

ブルーレイボックスの特典DVDに収録のインタビューでは「心理描写がない」ことについて尋ねられた清順監督は以下のように答えていた。

同じ感情は3分以上は続かない

感情移入で映画を見させるのが好きじゃない

う~ん。さすがですね。

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