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堕靡泥の星 美少女狩り(1979)

堕靡泥の星 美少女狩り(1979、にっかつ、100分)
●原作:佐藤まさあき
●監督:鈴木則文
●出演:波乃ひろみ、土門峻、朝霧友香、日向明子、八城夏子、名和宏、菅原文太

鈴木則文監督による日活ロマンポルノ作品。この作品の前後はトラック野郎シリーズを撮っているので日活に移籍したわけではない(菅原文太も星桃次郎として友情出演。)脚本は大和屋竺が担当している。

強い雨の夜、とある屋敷の中で起こった強姦事件から映画はスタート。ちなみにその屋敷の表札にはヤモリがペタリと張り付いている。

脱獄したレイプ犯・蜷川が大学教授の妻を強姦するその背後ではラジオが流れ、当時の皇太子様と美智子様の婚姻のニュースが聞こえている。

映画なので当たり前だがたまたま流れてたなんて訳はなく、意図を持ってこの音声を流している。

最も祝福される世紀の婚姻と、最も忌まわしきレイプという対極の事象を並べるという恐ろしいことをやってのけている。

思想的な主張とかではなく「たかがポルノだよ」を盾にしてどこまで過激なことができるかと面白がっているようにも見える。

また別の蜷川による強姦シーンでもバックに奇麗なピアノ曲が流れている。

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堕ちてゆく

という字幕がドンと出て、神納達也が東大に入るまでの年月をタイトルバックで映像的に説明していくテンポの良い始まり。

「裸さえ出しておけば内容はとやかく言われない」ことを逆手に取った、悪徳と不謹慎に染まった毒々しく淫靡な世界観。

達也が父親の不倫相手を刺し殺し、その返り血を浴びながらのファックシーンは悪びれもなく正面から堂々と撮影しているので壮絶でありつつも圧倒される。

生物学的には強姦魔の蜷川が父親であることに囚われている達也は、次々と女性を監禁、調教し奴隷にしてゆく。

テレビで放映された青年の主張大会で優勝した女子高の生徒を、わざわざ秋田まで行って拉致してくる。

そこら辺にいる可愛い女ではなく、最もセックスから遠そうな清廉潔白のような女に目をつけて堕落させるという文脈をわざわざ作る理屈くさそうなところがインテリっぽい。

地下の監禁部屋には夢二の美人画が飾ってある。

黄色いリボンと首輪をつけた女のアンビバレントな造形がよい。

その後も売れっ子清純アイドルへとターゲットを変えていく。

中盤、トラックを運転する星桃次郎(菅原文太)が唐突に出てくる。

ヒロインで達也の恋人・由美子を演じる波乃ひろみは美人でスタイルも良いが演技力はお世辞にも高いとは言えない。

こういうあたりにも、この映画のヒロインは美貌さえあれば演技力などどうでもいいという監督のセンスが窺える。

ラストも退廃的というか病的というか、意味わからなすぎて、イイ。


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