見出し画像

月曜日のユカ(1964)

月曜日のユカ(1964、日活、94分)
●原作:安川実
●監督:中平康
●出演:加賀まりこ、加藤武、中尾彬、北林谷栄、波多野憲

加賀まりこ演じるユカという自由奔放な小悪魔的な少女が主人公の映画。

冒頭の、走る車の窓からのカットを連続的に素早く繋ぎ合わせ、道を歩いていたユカで一瞬止まるシーンは良かった。

そこからそのままユカが服を脱ぎ捨てて着替えるタイトルバックへ移る。

ヌーヴェルヴァーグが引き合いに出されることが多いようだが、奇抜な編集やら、ナレーション代わりの群衆の噂話とか、独特の間合いなんかを見てるとリチャード・レスターの『ナック』のあの雰囲気に似てるな~と感じた。

男を喜ばせるのが女の生きがい、というモットーが一応の彼女の行動原理となってはいるが、実際何を考えているかはまるでわからない。

というより何も考えてはいない。

何もない空虚さの中に「愛」のやりとりをすることで満たそうとしている、可愛いビッチである。

ゴダールの『ウイークエンド』の中で「君は最高のメス犬だ」という台詞があったが、あれを賛辞としてユカに与えてあげたい。

教会に行っているということでちょいちょい神父さんとの問答とかマリア像だとかそういった場面が挟まれるが、そういう要素などまるで影響してこないくらい、ユカはあっけらかんとしていて、背徳感など何も呼び起こさせない。

絶対キリスト教なんて信じてないだろっていうか、キスは絶対にしない!とかいう変なポリシーもどうでもいいわっていう。

「あんたのためならなんでもするわ」とか「世界中でパパを一番愛してる」とかっていう台詞も“そういう私がかわいい”が裏にあるんだろうなと思って空虚に聞こえる。

ただし本当にかわいいので嫌味はない。

加賀まりこという女優の資質か、本来的に天真爛漫な女の子全般に言えることかもしれないが、歯磨きしたり、運動したり、牛乳飲んだり、新聞読みながら煙草ふかしたり、誰かほかの人間と絡ませるより一人で何かをしているところを観察しているほうが断然かわいい。

決まり切った台詞を喋らせてふつうの演技をさせるより、終盤で恋人の修、パトロンのパパそれぞれと話をする2つの場面で、相手が一方的に喋っているシーンでも台詞をあまり与えずじっくりとユカの顔の表情、さらには耳をクローズアップで映すという演出をしているが、こっちのほうが何かを物語ってくるというか、魅力的。

普段とは違った様子で、聞いているのか聞いていないのか上の空でなんだかよくわからない表情をしていて、すごく引き込まれた。

それをわかった上でこういうカットを入れているってことだからここは中平康監督の面目躍如ってところでしょうか。できればもっと欲しかったな~というところですが。

パパが海に落ちて沈んでいくところをしゃがんで無表情に見つめているシーンも非常に良かった。

おしゃれでポップな映画として再評価されているようだが、正直ユカが可愛いからギリギリ許せているのであって、この女の理解不能な言動、台詞等、普通だったらイラついてしょうがないと思う。

仕事場に、しかも大事な商談の最中に「パパ!」とか言ってやって来るとか怒りを通り越して恐怖である。

これがサスペンスにならないのもユカのかわいい雰囲気のおかげだ。(周りの視線は恐ろしく冷たいが)

他にも逆ナンした5人の男たちを霊廟に連れていき全裸になる、喧嘩の仲直りのため花束を買ってきて家の前でまき散らす…といった行動を起こしております。

ユカによってイラつかされ、ユカによってかわいいなあと思わされ、とにかくまあそんな映画です。




この記事が参加している募集

映画感想文

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?